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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
68/104

船内での発見

 トンの部屋は出入口がロビーに面している、あの学者の男の隣の部屋だった。

「アイアイ、ささ、こちらだよ~」

 通された部屋はアーニィ達のものと比べると随分と小さい。ベッドと荷物を置くスペースがある程度の一人部屋だった。

「全員は入れないな」

 アーニィ、トヨ、ジュリア、リオ、武器商人のトンに船員のビッグ。さすがに五人が入るにはいささか狭い。

「アタシとこのチビは役に立たないでしょ。入り口の辺りで待ってるわ」

「む、私は邪魔はせんぞ?」

「それはアタシが邪魔をするとでも言いたいのかしら? っていうか、そんなバカデカい得物背負ってたら満足に部屋にも入れないでしょ!」

 トヨはいつの間にやら取ってきた大剣エンシェントを背負っていた。

 全長で三メートルはあるエンシェントの柄の尻は屋根すれすれで、入り口を潜り抜けるにはいくら背の低いトヨとは言え、屈まなければならない。

 かがめば前の誰かに柄の先が振り下ろされるかもしれないし、そもそも客室の中はロビーよりも屋根が低いのだ。

 はっきり言って、エンシェントを背負ったままのトヨは邪魔だった。

「……見てる」

 船員のビッグは何やら意味の分からないことを告げる。

「こいつがずっと監視してなくちゃいけないんだから、こいつの前で、部屋の中を見ながらアタシたちは待ってるわ。さっさと調査を進めなさいよ」

 宣言通り、ジュリアは部屋に入ろうとするトヨを引きとめながら、部屋を覗く大柄のビッグの前で待機していた。

「じゃあ、自分達で荷物検査をしてしまいましょうか」

 リオに続いて、アーニィも部屋に入った。

 荷物検査とは言え、そこまで大量の荷物があるわけではなかった。

 トンが持っていたのは、籠に放り込まれた複数の武器、それから革の手鞄だ。

「その鞄の中身をまずは検めさせていただいてもよろしいです?」

「アイアイ、お願いだよ、お嬢さん」

 トンの許可を得て、リオが鞄を開く。

 中に入っていたのは、バーバラの胸に突き刺さっていたものと同様のピロー・ソードや年季の入った、おおよそ実用品とは思えない奇怪なブレードを持った剣ばかり。

「なるほど、高級品の剣はこうやって鞄に保管していたんですね」

 アーニィは珍しい剣に目を奪われながらも、鞄の中身の様子を調べた。

 さすがは高級品と言ったところだ。本数もそこなであるわけでもなく、一つ一つがベルトで鞄に固定されていて、万が一にも触れ合わないように、一定の間隔を開いて収納されている。

 検査している内に、一番目を引いたのは鞄の裏地が大きく見えている開けたスペースだ。

 ベルトがだらんと垂れて、ぽっかりと穴が開いているようなスペース。

「間違いないな。犯人はここに入っていたピロー・ソードを盗み出したんだ」

「でしょうね。トンさん、お伺いしてもいいですか?」

「アイアイ、何でも聞いてよ~」

 がさごそと、籠の中身を調べていたトンがリオの言葉に耳を傾ける。

「この鞄って船に乗ってから開いたことってありましたか?」

「アイアイ、そうねそうね、船に乗ってからは一回も開いてないね~」

「船に乗ってからってことは、船に乗る前には?」

 アーニィが言った。

「船に乗る前にはいっぱい見せたよ~。アイアイ、船がなかなか出航しなくて、陸で待たされている間にたくさんたっくさん商品を見てもらったね」

 トンは言い終えると、はぁ、とため息をついた。

 鞄の中身を見れば、盗まれたであろう一つ分のスペースしか空きがないのだから、出航前の商売は大失敗だったことが推測できる。

「にーさん、出航ってすぐじゃありませんでしたか?」

 と、おっしゃるリオ。

 出航が遅れたのはお前のせいだ! ……とは、アーニィは言わないでおいた。

 言ったところで暖簾に腕押し。黙っていても損はない。

「アイアイ、そう言えばあなたたちはいなかったね~」

 何やら思い出す様な口調で、トンがしゃべりだした。

「いなかったって?」

「アイアイ、ワタシたち乗船客は出航までに港で待たされてたんだよ~。その間はもう商談のし放題! 折角のチャンスだったんだけどね~」

 結果は上がらなかったと。

 トンにとっては大層残念な話だ。

 その話を耳にして、リオの目がきらりと光った。

「他の乗船客もみんな待たされていたんですか?」

「そうだよ~」

「……では、ここの乗船客にも、武器を売ろうとしましたか?」

「アイアイ、当然やったね~。商人のおじさんに貴族様、士官学生にイキのいいお兄ちゃん。ナイフの人にも話しかけたね~」

「その時には、この鞄の中身も見せました?」

 もちろん、とトンは間をおかずに答える。

「リオ、お前なんでそんなことを訊いてるんだ?」

「ピロー・ソードは鞄の中に入ってましたよね。だったら、鞄を開かない限りは盗むことはできません。つまり……」

「鞄を開いていたときにいた人達の中に、盗んだ犯人がいるってわけか」

 リオの説明に、アーニィはやっと納得した。

 そうすると、鞄を開いていたときの状況と、それ以降に確認をしなかったかどうかが気になってくる。

 それらをトンに尋ねてみると、

「港には結構たくさんの人がいたからね~。アイアイ、高級品も実用品もどんどんアピールしてたから、ついつい監視の目をゆるめてしまってたね~。アイアイ、多分、その間に盗まれちゃったんだろうね~。確認もこまめにしなかったせいで、ぜーんぜん気が付かなかったよ~」

 そんな返答が返ってきた。

「犯人らしい奴を絞ることはできなかったか……」

「でも、犯行がここで起きた以上は、乗船客の誰かが犯人って考えられますから、十分な収獲は会ったと思いますよ。船員は除外できますからね」

「アイアイ、それは良かったね~。でも、ワタシやあなたたちの容疑は……」

 依然、まだ晴れるようなことはないだろう。

 調査はしていても、それだけではあの不信の塊のようなポンドは納得させられないだろう。

 なんとかして、犯人に繋がる証拠を揚げなくてはならない。

 荷物の検査はまだまだ続けなければならないだろう。

「……で、トンさんはさっきから何をしてるんですか?」

 アーニィがやっと尋ねた。トンはさっきからずうっと籠に入っていた実用品の武器を漁っていたのだ。

「アイアイ、ピロー・ソードを盗まれてしまったのはワタシの確認不足ね~。ひいては、犯行もワタシがもっとしっかりしていれば防げたかもしれないんだよ~。そう思ったら、今できる内にやれるだけの確認はしておかないととおも……」

 不自然に、言葉が途切れた。

 直後。

「アイアイア~!!! な、なんてことだよ~~!!!」

 トンが頭を抱えて叫び声を上げた。

「ど、どうしたんですか!?」

 アーニィは鞄を閉じて、トンの元に駆け寄る。リオも続いた。

「た、たた、大変だよ~。剣が一本無くなってるね~!! ま、また盗まれてしまったね~!!」

 アーニィとリオは顔を見合わせた。

「トンさん、どの剣が無くなっているか、分かりますか?」

 リオが尋ねる。無くなっていると気付いたほどだから、トンにはどの剣が無くなっているのか、すかさず答えることができた。

「ピーショウだよ……」

 ピーショウ。暗殺向きの短剣だ。

「……にーさん、これはまずいかもですね」

「ああ。俺も嫌な予感がする」

 リオもアーニィも、同じ予感を感じていた。

 船での殺しは、あの一件だけじゃすまないかもしれない、と。

 そんな不吉な予感だった。


ども、作者です。


短っ。

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