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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
62/104

西へ……

話を終えたエースとキングが、客室へと戻ってきた。

「なんの話をしてたんだ?」

 アーニィがエースに尋ねた。

「お前達の探し物についてだ」

「妖刀か! おいお前、妖刀を知っているのか!?」

 妖刀と聞いて、居ても立っても居られないトヨが食いつく。キングの前まで歩き、白髪と白髭に囲われた老兵の顔を見上げる。

 返答は彼女の望むようなものではなかった。

「うむ、残念である。吾輩もこの国に仕えて五十余年に相成るが、生憎そのようなものの名を耳にしたのも、初めてである」

「なんだ。知らんのか、偉そうなのに、役に立たないんだな」

「おい、トヨ。口が悪いぞ」

「うむ。気にせずとも良い。エースに詳細を聞いたが、いやはや……。奇怪なカタナがこの国にあろうとは思いもせんかったの」

 キングがあごひげを撫でながら、ふむ、と唸る。

「む、だが、妖刀の在り処は分からぬのだろう。ならば、他の奴らを探すしか……」

「あの男に、仲間がいるのか?」

 あの男。エースが口にしたのは、妖刀使いの男、サルのことだろう。

 事情を知るアーニィが答える。

「ああ、あと二人、同じようなローブを着た奴らがいる。そいつらがどこに行ったのかは分かんないんだけどさ」

「なるほどの。しかし、ならばなおさら西へ行ってみると良いであろう」

「西か、まだ探していないな。気配もこの近くでは全く感じない」

 気配を感じないのならば、この近くに妖刀はない。

 遠く離れた西の大都市「ウェスタンブール」になら、もしかしたら妖刀があるかもしれない。西に赴く価値は十分にあるだろう。

「西は大都市だ。この近くで探し続けるよりも見つけやすいと教えてやる。あそこなら軍事施設も、古い剣術道場もいくつもある」

 つまりは、ウェスタンブールには珍しい武器やそうでない武器であっても集中し易い場所であり、妖刀を探すにはもってこいの場所だ。

「な、なぁ、トヨ他に探してない場所ってないのか?」

 と、何やら取り乱した様子のアーニィが、わざとらしく話しに水を差した。

「いくつもあるぞ」

「そこを先に潰していかないか? 西なら後回しにしちゃってさ」

「どうしてだ?」

「別にいいじゃない。探してない場所って言ったって、ここと西以外に大きな都市も無いわ。小粒を漁るのだって面倒じゃない」

 アーニィへの反対意見をジュリアが述べる。

「お前は早く西に行きたいだけだろ」

「ええ、そうよ。願ったりかなったりじゃない。アタシの目的も果たせる。アンタ達にとっても妖刀が見つけられるかもしれない。悪い話じゃないわ」

 ジュリアの言い分ももっともだ。アーニィはぐうの音も出ない。

 しかし、どうにかして二人が意見を変えるような主張を、頭を目いっぱいに働かせて考え始めた。

 アーニィは故郷に帰りたくはないのだ。故郷を出てからまだ一カ月ほどしか経過してはおらず、夢をかなえると息巻いて旅立った手前、そんな短期間で帰京するのはばつが悪いのだ。

 それ以外にも、帰りたくはない理由もあるのだが……。

 思い出しかけて、アーニィは首を振った。

 そんなことよりも、今は何とかして西に行くという意見を変えられる主張を見つけなければ。

「で、でも……ほら、西に行くには船に乗らなくちゃいけないだろ?」

 やっとのことで思いついたのはこれだった。

 西に行くのに、陸路でははるかに遠い。定期船を使って海路から向うのが最も早い。

 そこで問題になるのが、定期船に乗れるかどうかだ。

 アーニィは我ながら、的確な指摘をしたと自分をほめた。

「船の手配はしてやる」

 しかし、アーニィの指摘はエースにあっさりと解決されてしまった。

「……あ、次の船がいつくるかだって」

 定期船はそう数はない。一度定期船が出航すれば最低でも十日は待たなくてはならない。

 また、定期船もすぐに来るとは限らない。それなら、別の場所を陸路で辿りながら、西に向かったとしても、遅くはないはずだ。

 急きょ思いついたことではあったが、我ながら的確な指摘ができたと、アーニィは再度自分をほめた。

「うむ。今日の夕刻に出発する船であれば、三人を乗せても良かろう。兵に話しを付けに向かわせようぞ」

 今度はキングによってあっさりと解決されてしまった。

 船も来ている。しかも、今日中に出向する。これでは、西へ向けて出発するのは避けられないだろう。アーニィ、八方ふさがりである。

「決まりね。不都合な点は無いわよ。アンタ、故郷でしょう?」

「そ、そりゃあ、そうだけど。いや、そうだからこそ、その……」

 しどろもどろになるアーニィ。

「行きたくないって? だったら、ここに残る?」

「アーニィ、来てくれないのか?」

 トヨがアーニィを見上げた。見上げる彼女の目は、寂しげな少女の目だった。

 トヨのそんな目を見てしまうと、いくら乗り気がしないアーニィであっても……、

「わ、分った……行くよ……はぁ」

 断ることなどできようもなかった。

「では、決定である。吾輩たちは話を付けておく。おぬしたちはしばし街で休息と準備をしておくと良いの」

「エース……」

 もう決まってしまったことだ。それを憂いても仕方がない。

 ならば、今の問題は町に繰り出しても大丈夫なようにしてもらうことだけだった。

 というわけで、アーニィがエースに頼み込むような目を向けた。

「分かってやる。お前達二人の罪状は取り消しておく。その代わり、監視を絶対にしておけ。二人以上で必ず行動することを約束させてやる」

 

ども、作者です。


続きかけない症候群がやってきました。ストックはまだあるんですけどね。

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