護送馬車にて
がらがらぐらぐらと馬車は音を立てて揺れる。それに合わせて、体が上下に跳ねる。
お尻がいたいわねぇ。なんて思うのは、護送の対象となってるジュリアであった。ジュリアは、あの、サルを探している最中に、運悪く前日に盗みを働いた服屋の店主に見つかっており、兵を呼ばれてしまっていたらしい。
そのせいで捕まり、抵抗も無駄と判断してあっさりと自分のことを話したところ、こうして拘束具に身を包まれて、身動きを取れないようにされた上で王都へと護送されることになった。
目にもアイマスクを取り付けられており、視界も真っ暗だ。おかげで、耳が嫌に冴える。馬車の車輪が地面にめり込み、ずずずと引き摺られるのを耳にしたり、風に舞い上げられた砂粒が当たる音を聞くに、どうやらこの護送馬車は鉄板で周りを覆っているらしい。
尻や足、背に当たるのは木製の温かみのあるものだが、外部をそうやって固くコーティングしているのは、容易に逃げられないようにするためだ。
ジュリアは何人かこの馬車で輸送されている罪人のことを知っていた。そいつらは殺人鬼やら違法商人やらで、随分な極悪人だった。
自分もそれらと同じ扱いを受けている。常人ならショックを受けるところだが、ジュリアはへへ、と鼻で笑い誇らしく思っていた。
ま、山賊女王のアタシに対する扱いとしては、上出来ね。できれば、もっと柔らかい座席を用意してほしかったけど。
と、護送されながらジュリアはそんなことを思っていた。実に楽天的である。
もっとも、こうやって護送された後には、寒くて暗い牢獄が待っており、やっと出られたかと思えば首をすぱん、と野菜か何かみたいにあっさりと切り取られることもよおく知っていた。
しかし、それを思っても、悲観的な気持ちにはならなかった。
「この山賊女王ジュリア様を舐めてもらっちゃ困るわねぇ。牢獄だろうが処刑場だろうが、難なく逃げ切って見せるわ」
当然、むざむざと殺されるのなんてクソ喰らえ。それに脱走に関しても、ある程度の心得はある。内乱も外乱もご無沙汰な平和ボケしているこの国であれば、逃げ出すのなんてちっとも苦労しない。ジュリアはそう考えていたのだった。
ただ、一つだけ心配なことがあった。自分が気を失ってから丸一日が経っていた。その間、外の情報は何一つとして入って来なかった。意識を戻したときには拘束具でぐるぐるに巻きつけられており、すぐに取り調べが始まって、一夜明けた途端に護送という運びだった。
だから、トヨとアーニィのことは一切彼女の耳には届いてこなかったのだ。
「あの二人、大丈夫なのかしらね……」
自分のことではなく、他人のことを気にする女を運んで、馬車は一足早く王都に到着しようとしていたのだった。
ども、作者です。
非常に短い回ですね。




