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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
53/104

サル

 一滴、二滴。サルの手に持った妖刀ヒザマルから黒い雫が地面に落ちた。それはやがて円を作り、波を打ち、波紋を作る。

 新たな影が作られている。再び防戦一方となるわけにもいかない。トヨはそう思うが、今攻撃をしても、それが通じるかは分からない。むしろ、反撃をされてしまいそうだと、トヨは判断した。

「なぁ、トヨ」

 そんなトヨへ、アーニィが声をかける。なんだ、とトヨは隣に立つ彼へと顔を向けた。

「前に、妖刀を壊したときのこと、思い出せるか?」

「前に? ああ、覚えているとも。お前の持った妖刀に私のエンシェントで触れた時に、ぼろぼろに崩れ落ちた」

「ああ、そうだ」

「それがどうかしたのか?」

「あれも、妖刀なんだろ? だったら、この前と同じように妖刀にその大剣を当てれば、一発で破壊することができるんじゃないか」

 原理は、アーニィにもトヨにもさっぱり分からない。しかし、その現実を彼らは目の当たりにしていた。十分に考え得ることだ。

「……かもしれんな。なら」

「早急に決着をつけてやろう」

 アーニィの提案に、トヨは素直に頷いた。

 それと同時に、影が姿を現した。黒い円からまるで木が一気に成長しているようにりったきたしたその人型の影は、実に身長が二メートルをも超える巨大な影となった。

「な……デカいぞこいつら!」

「あわてるな、アーニィ。デカいだけなら、良い的になる。こちらに来たら迎え撃つぞ」

「くくく、タダの影だと思うなよぉ……数を犠牲にした濃度の濃い影だ。俺の力と、同等かそれ以上は持っている」

 サルがそう言うと、影たちが真っ黒いカタナを抜いた。影の大きさと比例するように、カタナも一メートル近くはある、太刀となっていた。

「さぁ、行け!!」

 掛け声とともに、二体の影が二人へと襲いかかる。

「速いっ!!」

 が、二人が対応できない速さでもなかった。

 二人へと振り下ろされる黒い太刀の一撃を、それぞれに同時に受け止める。

 びりびりと、剣を持つ腕が痺れる。影たちの攻撃は二人が思っていた以上に重たかった。トヨはエンシェントがそこまで重くはないために、正面から受け止め、その重量を体全体で受け止めた。

「足が、地面にめり込んでしまいそうだ」

「ぐ、こっちは剣が折れそう……」

 アーニィは大影の攻撃を二本の剣を使って受け止めていた。一本だけで受けていれば間違いなく折れていただろう。こちらへ突進してくる勢いが付随された一撃は、想像をはるかに超えた破壊力を持っていたのだ。

「アーニィ、受け流せるか?」

「難しいな、これは受け止めるだけで精いっぱいだ」

 そう言うと、アーニィはトヨへと目配せをする。それに、トヨは頷いて見せた。

 瞬間、トヨはエンシェントを軽く傾け、大影の太刀を受け流した。

 トヨの体が軽くなる。重量を感じなくなった足で、トヨは地面を強く蹴った。

 駆け、飛び上がる。標的は、アーニィへと太刀を振り下ろしている大影だ。

「うおおおおおおおおっ!!」

 大影は、アーニィへ攻撃をしており、防ぐ手だては持っていない。

 ―――確実に討ち取る!

 トヨは横から影の胸部を目がけて、大剣エンシェントを横から斬りつける。それを、影は首を動かして見た。その時にやっと、トヨの存在と攻撃に気付いたようであった。

「もう遅いぞっ!!」

 トヨの攻撃は完璧に入った。そう思った。そのはずであった。

 しかし、大影はアーニィから太刀を上げると、ぐにゃりと体を反る。背骨など無いように、直角かさらにそれ以上も背を曲げた。

 それで、トヨの攻撃を避けた。

「なにっ!?」

 トヨは驚きの声を上げる。トヨは空中で攻撃を空振りしている。つまりは、無防備だ。

 そこへ、トヨへと攻撃していた大影が、再び太刀を振り下ろそうとしている。

 それを見たアーニィはすぐに動いた。

 両腕を伸ばし、大影の攻撃をアーニィは二本の剣で受け止める。今度は受け止めるばかりではない。短剣で黒いカタナ押し、カタナの狙い目をずらした。地面に、カタナが突き刺さる。それと同時に、トヨも着地をした。

「伏せろ、アーニィ!!」

 トヨのその声に従い、アーニィは膝をついてしゃがんだ。トヨが勢いよく、前と後ろに同時に攻撃が届くように回転斬りを放つ。

 が、トヨのその攻撃は素早くはあるが大ぶりであった。一方のトヨの正面にいる大影は避け、後方にてアーニィへ攻撃をしていた大影は、カタナを縦にしてトヨの攻撃を防いだ。

 大剣エンシェントと大影の黒い太刀がぶつかり合う。トヨは、攻撃を防いだ影に視線、一機共に釘付けとなる。当然、避けた大影は完全にフリーだ。

 その大影が次の行動を取ろうとする。腕を引き、トヨへと黒い太刀で刺突する構えだ。

 そうはさせまい。とアーニィが走り、攻撃をしようとしている大影へと、剣を向ける。

 隙はあった。守りは必要ない。アーニィは大影へと剣を振るう。右手の長剣を左から右へと振り抜いた。

 大影がその攻撃を避けようとする。影たちに体勢などという概念は無く、ぐにゃりと体を折り曲げて避けた。

 だが、忘れてはならない。アーニィの左手にはもう一本の剣があるということを。短剣ではあったが、踏み込み、左の短剣を大影の腹部へとねじ込む。

 手ごたえはあった。刺さる感触とともに、目でもその様子を確認した。

「やった!」

 そうアーニィが口にする。影は一撃でも入れれば消失する、はずだった。

 それなのに、大影は消えてはいなかった。それどころか、ぐにゃりと曲げていた上半身を元に戻すと、手に持っていた太刀の柄頭で、アーニィの後頭部を殴打した。

「がっ……」

 後頭部への鈍い痛み。そのせいで、視界がぐらりと揺らいでしまう。意識を失いそうになる。

「アーニィ!!」

 着地をしていたトヨが、叫んだ。すぐにでも助けに行かなくては。アーニィに剣を突き立てられた大影は、太刀を持ち変え、影へともたれかかっているアーニィへと突き立てようとしている。

 トヨが駆けた。大影が太刀を振り上げ、そして、振り下ろす。

 それに合わせるように、トヨは太刀へ目がけて、横に大振りに大剣エンシェントを振り抜いた。

 ガキン、と太刀とエンシェントがぶつかり合う。トヨは出せる力を全て出しつくし、太刀を弾き返した。

 瞬間、トヨはアーニィへと駆け寄り、彼を抱えて影たちから距離を取った。重たく、思うような速さで動くことはできなかったが、ある程度は離れることができた。

「おい、アーニィ! しっかりしろっ!」

 地面にアーニィをおろし、トヨは彼へと声をかける。

「……うぅん、悪い、トヨ」

 まだ、頭はくらくらとしていたが、意識を完全に失いはしなかった。現に両手の剣は常に握り続けていた。

 ふらふらとしながらも、アーニィは立ち上がる。

「まだ、戦えるか?」

「もちろんだ。でも、このまま戦っていてもどうやっても勝ち目が見えそうもないぞ」

 アーニィは答えながら、厳しい顔で二体の大影を見る。その先にいるサルも。

「かなり強いな、アイツらは。だが、あの男を倒せば、妖刀を破壊すればいいのだろう?」

 トヨも、サルと影へと目を向ける。

 大影たちはこちらへのそり、のそりと向かってきている。サルは、妖刀ヒザマルを両手で持ち、祈るかのように目を閉じている。集中しているのだ。それほどにあの影たちは高い集中力を持って動かされている。だからこその数を犠牲にした強さであった。

「問題はどうやってあの影たちの合間をすり抜けるかだ」

「正面突破は厳しかろうな……」

 これまで通り、守りと攻めを分担していたとしても、突破は難しい。各個撃破も厳しい。二人が一体の大影に集中することもなおさら、できないだろう。そうすれば片方の大影にどちらかがやられてしまうかもしれない。

 しかし、何としてでも突破しなくてはならないのだ。そう思うのはトヨだけではなく、アーニィもであった。

「なぁ、トヨ」

 だから、彼は一つ思い至った。

「なんだ、アーニィ?」

「俺に一つ、良い案があるんだ。それに従ってくれれば、多分、お前だけでもサルのところまで行くことができる」

「む、本当か? アーニィ……だが、その案とやらを聞いている暇はなさそうだぞ」

 影たちはもう、すぐそこにまで迫っている。アーニィも一からその案を説明している暇がないことは、重々承知だった。

「お前はとにかく、あの二体の間を全力で突っ走ってくれ。後は俺に任せてくれればいい」

「……それで、本当に突破できるのか?」

 トヨが訝しげに尋ねる。

「もちろんだ。俺を信じてくれ、トヨ」

 アーニィは言う。自信満々に胸を張り、頼り甲斐があるようにトヨに見せつける。だが、内心では少々不安があった。トヨにも隠していることがある。

 その後ろめたさもあるが、それ以上にこうやって、自分の言うことを聞かせようとして、二人の間に亀裂が入ってしまったのだ。それを思い出すだけでも、心細くなる。

 トヨも、同じようなことを思い出していた。彼の言うことを聞いて、いろいろとイラついてしまったものだ。ただ、彼の言うことに一理あったことを思い出す。自分の考えも間違っていたとは思わないほどの強情さは相変わらずだったが……。

 トヨはアーニィの目を見据える。彼の言っていることに、今は間違いはなさそうだ。彼の自信は虚栄ではない。彼自身の案とやらに裏付けられている。よっぽど、成功するものだと思っているだろう。そして、それを何の根拠もなく思い込むほど、アーニィもバカではない。

「……分かった。言う通りにしよう」

 だから、トヨは承諾した。この作戦はきっと、いや、間違いなく失敗しないだろう。トヨはそう確信した。

 ただ、彼の目を見た時に、一つだけ気にかかることがあった。目は口ほどにものを言う。どれだけ表情を、立ち振る舞いに気を付けていたとしても、心の奥底にあるものは隠し通せない。

 アーニィは何かを隠している。

 不快ではなかった。けれど、不安には思った。

「無茶はしてくれるなよ、アーニィ」

「大丈夫、無茶はしないさ」

 そう答えたアーニィへ、トヨはこのうそつきめ、と毒づきそうだった。喉に出かかったそれをすんでで呑みこむ。彼の覚悟をむげにはできなかった。私がこれまで、わがままを通してきたそのお返しだ。たった一回だけの。

 トヨがそう思う間に、時間切れとなった。

 影たちが間近に迫っていた。トヨは体験を手にしただけで全速力で駆け抜ける。

 二体の影が同時に攻勢に出た。一体は太刀を振りかぶり、一体は刺突しようと腕を引いた。

 少し遅れ、アーニィがトヨの背後に着く。大影が同時に攻撃をした。トヨは目もくれずに走る。

 彼女の意識が大影へと向けられぬよう、アーニィは太刀を振り下ろしている攻撃を受け止めた。

 突き出された太刀は、全力で駆けるトヨには到達しなかった。トヨの走った後の地面に、突き刺さる。

 アーニィは受け止めた太刀を流し、振り向いた。

 空振りをした方の大影は、顔をトヨの方へと向けている。

―――今が、絶好のチャンスだ!

 アーニィは地面を強く蹴り、突き刺された太刀を抜いた大影の首へと狙いを付けて、長剣を振るった。

 意識は完全にトヨへと向けられていたのだろう。大きな隙ができていた。大影の首が、アーニィの長剣によって跳ねとんだ。

 さすがに、首が飛んでしまえば、影も機能を停止して、ぐらりとよろけた後に背中から倒れ込む。

―――やった!

 と喜ぶ暇はアーニィにはなかった。

 なぜなら、その直後に彼を鈍い痛みが襲ったからだ。

 見下ろせば、右のわき腹の辺りから、血の付いた黒いカタナの先が飛び出ていた。背中から刺されている。痛みに意識を失いそうになりながらも、それを理解した。

「へっ……こりゃあ、ラッキーだったかもなぁ」

 アーニィの言葉は強がりではなかった。

 アーニィは初めから、一方の影を倒し、もう一方の影に自分を攻撃させるつもりであった。初めからすてみのつもりだった。死ぬことも覚悟していた。

 首をはねられなかったのが、不幸中の幸い。即死するような攻撃をされていれば、足止めはできなかっただろう。

 アーニィは両手から剣を落とし、腹部から飛び出ている太刀の先を握りしめる。

―――逃すものか。トヨが、トヨが妖刀を破壊するまで、話してなるものか。血と共に力が抜けてはいくが、気力だけで刀身を握りしめる。

 大影も太刀が抜けずに、狼狽しているようだった。

 トヨは、気配から一つの大影が倒されたことを知った。

 見つめるのは、近づきつつあるサルの姿のみ。後ろは一切振り向かなかった。何が起きているのか、気にはなった。何かしらの無茶をしているであろうことも、察しがついている。しかし、振り向く訳にはいかない。何が起きていようとも、自分のために活路を見出してくれたアーニィへの、自分なりの一つの覚悟の表し方であった。

 サルの真正面へむけてトヨは直進した。

 かっ、とサルが目を見開く。

「あの影たちを通り抜けて来た……だと……」

 サルにしてみれば、今まさに自分へと向かって来てるトヨは予想外も甚だしかった。またも、自分の心配の当てが外れてしまった。

 ああ、何ということか。……だが、落ち込んむ必要はない。

「ミコよ……ならば、俺がこの手で貴様を討つ」

 サルがカタナを構えた。

 サルの頭の中に、油断は無い。こちらに突進してくるトヨを見て即座に判断する。怪我、体力、これまでの戦い方。それらを全て含めても、遅れを取るようなことはあり得ない。妖刀と大剣エンシェントのぶつかり合いは唖避けなければならない。勝敗は、一撃を持って決する。

 ならば、攻撃に特化したトヨの裏をかくことが、何よりも先決である。構え、待つ。

 二人の距離が短くなる。十メートル、五メートル、三メートル。大剣エンシェントでならば、優に攻撃の届く、二メートルの間合い。

「でええええええいっ!!!」

 トヨが、雄叫びを上げて剣を横に振るう。

 その様子を、黒い太刀に貫かれながら、霞む視界でアーニィも見ていた。トヨのことが心配だった。だが、彼の目はサルへと向けられていた。

 ここからでも、何か彼女に対してできることがある。そう信じ、彼は遠目でサルの行動を伺っていた。

 だから、彼は見逃さなかった。サルの足、足先が斜めに向けられている。じり、と動くが、それが一体何を意味しているのか。

 剣を扱う型。立ち居振る舞い。アーニィは持っている知識から類推し、一つの結論に至った。

 サルは動く。トヨの攻撃に合わせて、同時に動きを見せるはずだ。

 移動。ならば、どこに移動するのか。トヨに攻撃を加えられる死角。そうだ……。

「トヨ!! 後ろだああああああ!!!」

 アーニィは、痛みに耐え、体中の力を全て集中させ、喉を声を震わせ、大声で叫んだ。トヨに伝わるように。トヨが生き残れるように。彼女の無事の、勝利のために。

 その声が届いた瞬間、それはトヨが大剣を振り抜き、サルが避けた直後であった。サルはまるで消えたかのような速さで、トヨの後ろに回ろうとしていた。

―――後ろ!!

 とっさに、トヨはアーニィの言葉を信じ、振り切った大剣の即座に持ち変え、逆手で振り返りもせずに、後方へ振り回した。

 その行動はサルにも予期することができなかった。彼もアーニィの声を聞いた。が、すぐには動けなかった。

 大剣が自身へと向けられる。赤い錆の付いた白刃が風を切って迫る。狙いは定められてはいない。

 だが、その大剣の軌道は、妖刀ヒザマルへとまっすぐ弧を描いていた。

―――まずい。

そう思った刹那、白刃と黒刃がぶつかり合う。

火花を散らす間もなく、ガキィン、と音を鳴らした直後に、サルの手が軽くなる。

大剣エンシェントの鱗のような赤い錆が、妖刀へと移っていく。すると、ぼろ、ばら、と妖刀の刀身が錆がはがれるように崩れ落ちていく。

エンシェントは白刃をあらわにし、一方の妖刀はカタナであったことが嘘だったように、刃は完全に崩れ落ち、柄だけが残っていた。

「なぁ……ば……馬鹿なぁ……そんな、嘘だ……」

 サルの表情が絶望一色に染まる。妖刀ヒザマルはここに、大剣エンシェントによって破壊された。同じように妖刀の力で生み出されていた影たちも消えていく。

 アーニィは腹部を突き刺され、半ば支えられていたために、がくり、と膝から崩れ落ち、そのまま倒れ伏す。

 トヨは、大剣を持ち変えて振り向く。サルはがっくりと膝をついて、頭を抱えていた。

「俺の、俺の妖刀が破壊された……嘘だぁ……」

 がくがくと震えだす。トヨもそのサルの姿には、言葉を禁じ得なかった。何かに恐れ、震えているようだ。

「妖刀を失った……俺はとんでもないことをしちまったぁ……エンブにどう説明すればいい? いや、どう説明してものがれられない。アイツを怒らせちまう……あぁ、心配だぁ、心配だぁぁぁぁ。でも……どれだけ心配しても、もう後の祭りだぁ。使命を果たせなくなった責任、取らなくっちゃあなぁ……」

 サルがそう言った後、ざりっ、と嫌な音が彼の口元から聞こえた。トヨは目を丸くする。もとより白い悪人顔が、みるみる内に青白くなっていく。

 さらに、口からたらり、と血が零れた。

「おい、お前!」

 トヨは思わずサルに声をかけた。が、その時にはもう遅かった。ばたり、とサルは倒れ、口を開け放す。大量の血とともに、噛みきられた舌の先が、ぼとっ、と口外へと飛び出た。

 自害。開け放された目が、だんだん濁っていく。

「貴様、なぜ……」

 トヨは彼が口走っていた言葉の中に気になることがあった。「使命」それは、彼女がよく口にする言葉である。意味や意図は当然違うが、そこに妖刀が関わっていることは同じだ。

 こいつの、こいつらの目的は一体何なのだ。その疑問を明らかにするまもなく、サルの命は消えかかっている。

「あぁ、もう……いんあい、いなうおもいいんら……」

 呂律の回らない言葉が、サルの最後の言葉となった。

 サルの死を見届けたあと、トヨはすぐに視線をアーニィへと向けた。彼に何が起こっていたのか、彼女は今の今まで知らなかった。

 が、案の定彼は血まみれになりながら、地面に横たえている。とっさに、走り出した。彼の元へと駆け寄る。

「おい! アーニィ、しっかりしろっ!!!」

 トヨはアーニィを抱き起す。呼吸はまだあった。体温もまだ温かい。しかし、腹部から流れ出る血は止めどなくあふれ出る。

 このままでは、時間の問題だ。アーニィまで、先程のサルのように死なせるわけにはいかない。

 いや、死んでほしくない。

「アーニィ! おい、しっかりしろっ!!!」

 トヨは絶えず呼びかける。その声はもう、意識を失った彼には届いてはいなかった。


ども、作者です。


これでバトルが一旦一区切りですね。このお話以降がっつりとバトルシーンを書いた記憶が無いですね、もうすこし先まで書いているはずなんですが。

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