迫る影
「もっと早く進めんのか!!」
馬車の上で怒鳴りつけるトヨは、かなり焦っていた。
「これでも全速力で走ってやってる!!」
そう答えるのは、御者ではなくエースだった。あまりにも朝が早かったせいか、御者を含めた使用人たちは全員寝ており、急かすトヨのせいで、起こしている暇もなかった。馬車を操ることぐらいはエースも余裕にできたので、あくまでも仕方なく、ではあったが。
ただ、とにかくトヨに急かされるのには参っていた。ヒステリックでも起こしたみたいに、早く、早くと怒鳴られ続ける。昨晩何もできなかったこともあってか、異様に苛立ちが募って行ってしまう。
トヨは、妖刀の気配を確実に察知していた。遠くに離れてはいたが、馬車を使って近寄って見れば、かなり容易に、すぐに妖刀のある場所に到達できる。初めはそう思っていた。
なのに、近づいて行くにつれて、妖刀の気配が遠ざかっている。むしろ、トヨと一定の距離を離そうとしているかのようだった。
それが、トヨを焦らせていたのだ。どれだけ近づこうとも近づけない。まさか、妖刀の持ち主に、あのローブの男達の誰かに、気付かれているのか。
「くそっ……」
しかも、それだけではなかった。先ほどまでは感じていなかったのに、向かう方向に大量の弱い気配も感じるのだ。それは、北の町でいくつも感じていた、影の気配。
まさか、待ち伏せもされているのか? しかし、だからと言ってこのチャンスを逃すわけにはいかない。影たちはかなり強いと言う訳ではないが、数が多いと苦戦を強いられる。それを加味すると、非常に苦しい状況になりそうではあるが、怖気づく訳にはいかないのだ。
自身の使命のため、成し遂げるためには、これぐらいの障害は越えなくてはならない。
そう言い聞かせているその時。また新たな気配を感じた。
いや、元から感じてはいた。しかし、それらが唐突に動き出したのだ。
後方から、北の町にいたはずの影たちの気配が、どんどんトヨの方へと向けて近づいてきている。
「……挟み撃ちか……」
これは、あのローブの男達の狙いなのだろうか。気配の動きは、明らかにトヨへと狙いを付けているようで、自身の使命の達成を邪魔しようとしているとしか思えない。
トヨは迫りくる気配、前方で待ち構えている気配、そして、中でも最も大きな気配、妖刀の存在を意識しながら、ぐっ、と歯噛みし、背に背負ったエンシェントの柄を握る。
それは、もう間近に迫っている戦いへの準備であった。
ども、作者です。
宣言通り、今日の内に更新。これで第六話部分は終わりですね。章分けもそろそろしておかないといけませんね。多分やりませんが。やるかもしれませんが、やらないと思います。
さて、なかなか微妙なところで終わりましたが、続きも十六部ぶんありますので、
定期的に更新は続けられるんじゃないかな、と思います。また、よろしくお願いします。




