先へ進む者達
少女はサバンナを歩いていた。夜、何もないような静かな場所に成り果てているようなサバンナであるが、実際はそんなことはない。
少女は次から次へと増えていく気配を感じ取っていた。
幼いころから影に紛れて仕事をしてきた彼女には分かる。自分の命を狙って集まって来た猛獣たちの気配だ。
ぽと、と一滴の血が地面に落ちる。奴らを集めているのは、二の腕から下の無い右腕から流れる血の匂いだ。
肉食の猛獣にとって、血の匂いを漂わせる彼女は、腹を空かせた人間の前を通る、焼き立てのパンのようなもの。
このまま、無事に逃げ切ることができるだろうか。
少女の胸を不安が包み込む。だが、ここで死んではいけない。家の字にはここで立ち止まってはならない理由があった。
叶えなくてはならない。復讐をしなければならない。
こんなところに自分を追いやった両親への復讐を!
しかし、もはや気力だけではどうすることもできなかった。
全身から力が抜け、気付けば地面に突っ伏していた。
進まないと、でも、体が言うことを聞かない。
動けなくなったことに気が付いたのか、猛獣たちの気配がぞろぞろと近づいてきた。
これでは、食い殺されてしまう。それはダメだ。自分にはやらなくてはならないことがある。
そのためにも死んではいけない。少女はそう言い聞かせるが、体が動いてくれない。
猛獣は近づいてくる。切羽詰まった状況の中で、彼女の嘘偽りのない思いが口をついて出てきた。
「死にたく……ない!」
その時だった。
一瞬、巨大で恐ろしい気が、この辺り一面を包み込んだ。
ぞわり、と少女の背筋が凍りつくようだった。
そして、次の瞬間には猛獣たちの気配が消え去っていた。
何が、何が起きたのか。まるで死がすぐそばにでも迫って来たかのような気配に晒されながらも、辛うじて意識を保っていた少女は、尻目に後方を見た。
そこに、二人の人間が立っている。両方とも茶色いローブを着て、フードで顔を隠しているため、顔は分からない、しかし、一つだけ彼女にも分かったことがあった。
それは、彼女をもってしても、二人は気配を一切悟らせないほどの強者である、ということだ。
きっと、この二人が一瞬で猛獣たちを蹴散らしたのだろう。
彼女はもう動けなかった。闇に飲まれる前の彼女の目に映った最後のものは、ローブの一人が手に持った、カタナだった。
どうも、作者です。こちらも次のお話の更新のめどが立ちましたので、更新再開いたします。




