アーニィの歩み
街の中心地に近づいていくにつれ、アーニィは次第に待ちの状況を理解し始めてきた。
パニック。今の待ちの状況を表すのに、これに適した言葉はない。大きな通りは人がごった返していて、港や西に荷物を抱えて走る人々を目撃した。逃げ出そうとしている人達。そのほとんどが士官学校の方、東側から来ている。船着き場は特にパニックになっているだろう。この街に来ている海外の人達は、今すぐにでも逃げ出そうと船に乗り込んでいるに違いない。開催されているだろうバザーも、もう終わっただろう。
しかし、なぜこうにもパニックと言える状況に?
「まさか、もう町の中まで……」
ただ鐘が鳴っていた程度ではここまでパニックにはならないはず。何百年も街を守ってきた鉄壁の城壁と、王都に劣らない軍事力がウェスタンブールにはある。鐘の意味も街の人々を守る存在は、この街の誰しもが知っている。何かがあったとしても、そう簡単にはパニックなどにはならないはずだ。
街の中まで怪物の、妖刀使いのノウの攻撃が届いているのか。
そうとしか考えられないし、それに……。
ごおん、と地響きが鳴った。街の中央を見れば、砂埃が上がっているのも見える。
やつの攻撃が街中にまで到達している、間違いない!
アーニィが急いで歩こうとすると、背中がじくりと痛んだ。早くいかないとと思いながらも、それができずに手を付けながら歩くことしかできないのがもどかしい。
壁に手を付きながらゆっくりとしっかりと、しかし急いで歩く。
ども、作者です。
超絶短いです。