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引退魔術師のセカンドライフ  作者: DEED
一章 学園生活
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8話 蹂躙する

 さて――どう遊ぼうかしら。

 私は相手の子たちをどう相手にするかを思考する。


 少なくとも手加減というか制限がかかる以上その範囲内で倒さないといけないのが教官の難しいところである。


 ――教官はいかなる時でも生徒の命を奪ってはいけない。

 教官に与えられた数少ないルールのうちの一つ。

 実戦形式で行う訓練等がある関係上、どうしても命の危険はあるのだが、

 それでも、命の保護が優先される。


 破ったものがどうなるか。今のところ違反者がいないので判断のしようがないのだが。

 少なくとも第一人者にはなりたくはない。



「うぉぉぉ~!」と奇声を上げつつソルジャーの子が突っ込んでくる。

 大斧を持って突っ込んでくるところはさすがに怖い。

 最初に後衛がアシストしてくるかと思ったが、ここは任せるようだ。

 本来の対ウィザード戦闘であればそれは正しい。


 だからこそ、裏をかく。


 私は真正面から突っ込む。

 これにはソルジャーの子も驚きを隠せないようだ。

 ついでに、レンジャーの子に撃たせないようソルジャーの子が邪魔になる角度にしておく。


「くっ」と歯ぎしりしながら彼は斧を振り落とす。

 着弾点がずれた攻撃など恐れることはない。彼が降る大斧を躱しながら、前に出る。


 意表のつかれた攻撃に対応できたのはモンク。

 わたしの顔面に躊躇なく拳を叩き込みに来る。


 ――だが遅い。

 感覚が強化された私にとってはスローに見える。

 少なくともカルロッタさんと比較すれば数段劣る。

 彼女の拳を屈みつつ、回避しなおも突っ込む。

 狙うはレンジャーだ。


「――弾け」

 モンクの攻撃に合わせて飛んでくるクロスボウ。

 なかなかに良い連携だが、幸い躱した瞬間にわたしの動きは止まる。

 それだけで十分だ。


 風の障壁が、矢を、モンクを弾く。

 壁は排除できた。


 次の瞬間、わたしはレンジャーの前に立つ。


「――沈め」

 短い詠唱だが、それでいい。

 レンジャーの体が地面にめり込む。

 不可視の重力球が彼に伸し掛かる。


 戦闘不能になったかどうかは確認しない。

 そのまえにやることがある。


「しぇあぁ!!」

 モンクの回し蹴り。当たれば悶絶できる。当たればだが。

 掻い潜るには少々低いので、横にそれる。


「―ー凍てつき――噛み付け! フリーズバイト!!」

 そこにウィザードの少女の詠唱が響く。


 ――弐節詠唱

 魔法の制御節になる言葉を増やすことにより、より複雑な魔法を成立させる。

 つまり、制御の節を増やせば増やすほど、魔法はより複雑化、高火力化していくことになる。

 壱節がウィザードの基礎・基本だとすれば、弐節はいわば応用となるわけだが、これが実に難しい。

 2つのイメージを同時に想像し、融合させ、律し、発動する。

 口で言えばこの程度のことになるのだが、消耗が壱節と比べると数倍以上に膨れ上がる。

 弐節詠唱が安定して使える者であれば、諸国の宮廷魔道士にすら余裕でなれるほどである。

 それほどの難度がある。



 氷の世界が私を包む。

 その後、氷は砕け破壊する。

 本来ならば。


「――戯言なれ」

 わたしの言葉で、オークなどですら即死させる氷の魔法はちゃんと発動せず、

 氷は砕けず融解する。

 なんてことはない彼女の魔法を逆に制御してあげただけだ。


 ウィザードの少女は理解できないようだが。

 そもそも、発動した魔法の制御を奪い無力化するなど普通はやらないからね。

 と私は心のなかで同情してあげる。


 それよりもモンクの子の動きが実にいい。

 感覚強化してなければ少しは苦労しただろう。

 カルロッタさんのお気に入りかしらね?などと思いつつ、

 私は未だ札を切っていない故、動けていないプリーストの子に近づく。

 プリーストはその神への言葉を用い奇跡を願い、効果を生む。

 故にどうしても後手に回るのだ。


 だからこそ、先に倒す。


「しっかり防ぎなさい!!」

 わたしの声にレンジャーを回復しようとしていたプリーストは意識を乱す。

「――彼方へ――弾けよ!」

 突風が彼を吹き飛ばす。


 防御の奇跡が間に合わなかったようだ。

 彼はこの訓練場の端まで吹き飛ばされてそのまま動かない。


 死んでないといいんだけれど……。

 まぁ威力は加減した。頭から落ちた感じはないので大丈夫だろう。


 モンクは私にしっかり張り付きつつ攻撃を当てようとしているのだが、わたしの動きが速いために相当無理をしているのだろう、動きにムラがある。

 故に隙間を狙いやすいのだ。だが、彼を倒すのは後だ。


「――蠢き――喰らえ」

 わたしの影が蠢く。

 そしてそのままウィザードの娘の影を喰らう。


 ウィザードの目の光が消え、そのまましゃがみ込む。

 今のは精神に攻撃する魔法だ。

 弐節で消耗していたところに、これは効くだろう。


 私レベルになると弐節ですら、連発しても問題はないが。


 ようやく、ソルジャーの子が戻ってくる。

 連続攻撃を仕掛けるモンクから身を離し、ソルジャーの子へ密着する。

 胸が当たってる気もするが、そんなのはどうでもいい。


「――偽れ」

 ソルジャーの子の耳元で囁き魔法を発動させる。

 ソルジャーが一度ガクンと身を崩すが、すぐに立て直し周囲をキョロキョロとする。


 わたしは、モンクに指を指す。

 ソルジャーの彼には私が仲間のモンクに見えているはずだ。


 ――視界を偽る魔法。

 少々卑怯だが、【幻想の魔女】と言われる所以の一つでもある。


 前にひょんなことで、ある国の兵士10人ほどにこの魔法より少し質の悪いものをかけ大混乱に陥れたことがあるのだが、

 この手の幻覚魔法は、感覚の鋭い獣や魔族レベルになると意味が無いため、人間相手ぐらいにしか使えない分習得者が非常に少ない。

 そもそも、相手の視覚をおかしくさせるイメージなどなかなか生み出せない。

 故に人間相手には非常に強力なのだ。


 彼は私の姿に見えているモンクへ斧を振り落とす。

 モンクは蹴りで斧の側面を蹴り方向を変え躱す。


 ――同士討ちって見てて楽しいわよね。

 まるで悪魔の気分だが、実戦である以上使える範囲内での札は切る。


「――凍えて――爆ぜよ!」

 わたしの氷の魔法が彼らを吹き飛ばす。


 わたしの勝利だ。




 ――ものの1~2分といったところか。

 もう少し時間を短縮できた気もしないではない。

 一番命の危険を感じたプリーストの子も無事だったようだ。

 ぎりぎり障壁が身を守ったらしい。まぁ意識を失っていては一緒だが。


 まずは一組。


「さてと、お昼ごはんまでには終わらせるわよ」

 私は満面の笑みを浮かべてやる。挑戦者にはきっと恐怖に見えることだろう。



もう少し書くつもりだったのですが。

キリの良い所まで書こうとすると文字数が。

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