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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

初心者テイマーと蟷螂のキリコ

作者: カムネラ


テイマーの話で虫が相棒なのあんまないなと思ったので書いた。反省はしている。



俺の名前はジャック、この度に魔物使いになった初心者テイマーである。


昔から魔物が好きだった俺は、将来は絶対に魔物使いになると決めていたので、冒険者になった後すぐさま森へ直行した。

俺が求めているのは、テイマーが使役する魔物ナンバーワンのホワイトウルフである。

ホワイトウルフは最初から人間に友好的であるし、見た目も格好いいと評判の魔物である。

機動性も充分あり、人を乗せて走ることも出来る。

食料も比較的単価が安いラビット肉が主流である為、テイマーのお財布にも優しい。


正に初心者テイマーにぴったしの子なのである。


ホワイトウルフは森の近辺に生息している事が多い為、なんなく見つけた俺は片っ端からホワイトウルフと仲良くしようとしてみたが、どのホワイトウルフを選んでも全くなびかない。

ちゃんとラビット肉を置き、おいでおいでとやってみたが来ない。何でだ。


いくら待てどもホワイトウルフ達は全く近づこうとしないので、此方が焦り始める。

俺の予定としては会ってから長くても一時間程で仲間に出来ると思っていたし、本にもホワイトウルフは仲良くするならラビット肉を置いておいでおいでとやるのがいいと書いてあったのでこれで合っている筈なのだけれども。

…まさか俺魔物使いの才能ない?


空を見るともう既に茜色に染まっており、このままではラビット肉につられて他の魔物もやって来る。

帰るしかないのか…

そう思っていたら森の奥の方から風の切る音が聞こえたかと思うと、一瞬にして中距離から俺の様子を見ていたホワイトウルフの何匹かが真っ二つになっていた。


え?と思ったのもつかの間、ホワイトウルフ達は何故か一斉に俺に向かって牙を向き始めた。

どうやら俺が攻撃したと思っているらしい。

いやいや俺何もしてないからね!攻撃魔法とか覚えてないからね!


友好的なホワイトウルフだし、直ぐに仲間になるだろうからと、武器は短剣一つしか持ち合わせていない。

一匹だったら俺でも何とかなるかもしれないが複数が一斉に俺に襲ってくるのだ、剣の使い方も初心者の俺なんざ勝ち目はない。

逃げるにしても人間の俺は直ぐに追い付かれてしまうだろう。なにこれ。


俺の冒険始まる前に終わるとか情けなすぎだろ。


出来れば何でもいいからテイマーとして活躍したかった…と自生の言葉を言おうとしたらまた風の切る音が聞こえたかと思うと、此方に向かっていたホワイトウルフが全て真っ二つにされた。真正面から見た俺にとってはとんだグロテスクである。


目の前に広がるグロテスクな光景に呆気にとられていると、後ろからカサカサと草を掻き分けるような音が聞こえ、慌てて奥の森に目を凝らすと、そこにいたのは俺の握り拳程の小ささのサムラカマキリがいた。

サムラカマキリは人間に全く無害な魔物である。主な食べ物はサムラカマキリより小さい魔物であるが、たまに自分より数倍大きい魔物を補食することがある。

といっても、ホワイトウルフぐらいの大きさを補食なんて聞いたことないし、勿論人間を襲ったという報告もない。


そう、サムラカマキリは魔物のヒエラルキーの底辺らへんに位置する存在な筈なのだ。


しかし目の前にいるサムラカマキリは、サカサカと時間をかけて俺の横を通りすぎ、ホワイトウルフの亡骸に向かって先程生きていたホワイトウルフにやった時と同じように、その人差し指ぐらいの大きさの鎌のような手でスパンとなんなく切ったのである。


「え?…マジで?嘘っ…え!?」


思わずそう声が出たのはしょうがないと思う。

誰だってあり得ないものを見たら声だしちゃうと思うんだ。


サムラカマキリは、俺の声に反応したのか此方に振り向き、あろうことか俺の隣にあったラビット肉を切ったのである。

サムラカマキリからしてみれば結構距離がある筈なのだが、ホワイトウルフの時と同じように一瞬風の切る音が聞こえたかと思うとラビット肉は綺麗に真っ二つに割れた。

その瞬間を見た俺は確信する。

コイツがホワイトウルフを倒したんだ!こんな小さいサムラカマキリが!マジかよ!


驚いてる俺を他所に、サムラカマキリはサカサカと此方にやって来る。


「お、俺食べても美味しくないから!!!ほんと!!」


そう言いつつ二つに切れたラビット肉の一つを放り投げる。

あわよくばそのラビット肉を補食している間に逃げようという算段だったが、サムラカマキリは目にも止まらぬ早さで放り投げたラビット肉を綺麗に薄切りにしてくれた。


「…わー、すごいやー。」


完全に現実逃避の言葉であったが、サムラカマキリはその言葉に反応したのか、もう片方も綺麗に薄切りにして盛り付けてくれた。

いや、食べませんけど!?


そのままいつ補食されるのかと、ビクビクしながらサムラカマキリを見ていたが、サムラカマキリはラビット肉に目を向けたまま動かない。

というより、俺のラビット肉に刻まれていた使役魔法の印を見ている。


使役魔法はその名のとおり、ある程度の魔物を自由に操る事が出来る魔法だ。

といっても、魔物使いは魔物が何か混乱状態に陥った時、人に危害を加えないようにという保険としてこの魔法を使う。

それに、この使役魔法は使うとなると、人間と魔物に一定の信頼関係が必要なのである。

なので本当の魔物使いは幼少の頃からその使役する魔物と過ごして信頼関係を築くのが普通であった。


しかし俺の場合、そういう信頼関係のある魔物は居なかった。

昔から親には体が弱い俺に魔物は危険だからと、近付く事さえ叶わなかったからだ。

でも、俺は何としても魔物使いになりたかった為、多少の危険を承知で、ラビット肉に使役魔法をかけたのである。

本によると、魔物ではなく魔物が食べる物に使役魔法をかけると、その魔法に寄ってきた魔物と簡単に信頼関係を築くことができるらしく、これで俺のような人でも使役できると書いてあったのだが。

目の前にいるサムラカマキリを見る。


…いや、まさか、俺の使役できる魔物って、コイツ?


恐る恐るサムラカマキリに近付いてみる。

サムラカマキリはラビット肉に刻まれている使役魔法の印を見るのを止め、ちょんちょんその鋭い鎌で薄切り肉をつついている。


「あの…俺の相棒になってくれるんですか…?」


サムラカマキリは知能はあまり無いので俺の言葉を理解できる筈はないのだが、一応言葉を言ってみると、このサムラカマキリは俺の言葉を分かっているのか二つの腕の鎌を使って器用に丸を作って見せた後、俺の肩に飛び乗ったのである。

その肩にいるサムラカマキリは二本の鎌を研いでいるのか、シャキンシャキンと普通のサムラカマキリが出さないであろう音を出している。

一瞬殺されるのかと思ったが、何もしてこないので俺を相棒として認知してくれたみたいである。

…怖かった…マジで…。


「えっと…」


サムラカマキリとはいえ、コイツは俺の使い魔といっても過言ではない。

となると、俺はこのサムラカマキリに名前をつけることができるようになる。

本当はホワイトウルフにしようと思っていたのでハクやらポチとか考えていたのだがどうしようか、というかこの相棒が雌なのか雄なのか全く分かんないんたけど。


「ポチでい駄目ですかそうですかすいません。」


名前の才能は全く無いと自負しているので、とりあえずホワイトウルフにつけようとした名前にしてみたが、相棒はお気に召さなかったらしく、亡骸のホワイトウルフを細切れにしてくれた。

それから何回も名前をあげては相棒がホワイトウルフを細切れにしていくという事が続き、俺の名前をつける才能が無いのを分かった相棒が、キリコという名前に妥協する頃には回りは何が倒されたのか全く分からない程の酷い惨状になっていた。

ホワイトウルフ…ほんと…ごめん…。


「もう帰ろうキリコさん。」


既に日は落ちてしまっており、名前を決めている間に他の魔物が襲って来ないか心配していたのたが、魔物を見かける事もなかったのでほっとする。

ホワイトウルフをなんなく倒したキリコなら、そこら辺の魔物ならなんなく倒してしまいそうな雰囲気だったが、俺が倒してくれと言っても倒してくれるかと言われたらかなり不安が残る。

うん。まずはサムラカマキリの生態を調べて、キリコと信頼関係を築く事から初めよう。


「これからよろしくね。キリコさん。」


そうキリコに声をかけると、キリコは鎌のような腕を差し出してくれた。

…まさかとは思うけど握手ですか?

そう思いつつキリコを見ると握手しないの?とばかりに首を傾げている。

俺の指がサヨナラするんで勘弁して下さい。



次の日、森にやって来た冒険者が大量の謎の魔物の血と肉片を発見し、慌てて強い魔物が現れたとギルドに報告、段々と大事になっていって遂には討伐隊が結成されるのだが、この時のジャックは知らない。




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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして 面白かったです! 魔物使いとか魔物と仲良くなるのは好きなのでぜひ連載してください‼
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