表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

変身少女(仮)

作者: 明夢 優深

ある晴れた日。公園のベンチでうつらうつらしていると、散歩をしていた犬に吠えられた。

驚いて肩を震わせると、更に大きく吠えられた。飼い主の女性はペコペコしながらリードを引っ張って去って行ってしまった。完全に眠気が覚めた。不快感を覚えつつ眼を擦っていると、急に影が差した。

「相変わらず、動物に嫌われますね」

声の主を見る。声でわかってたけど、今一番会いたくなかった人間だった。

「…まあ、そうだね」

自嘲気味に笑うと、断りもなく隣に座られた。長い脚を組んで、つまらなさそうに遊具で遊ぶ子供たちを眺めていた。

「何か用かな」

「いえ、」特に用事はありません。と淡々とした口調で言われた。

「あ、そう。」

「はい。…あ、でも」

「ん?」

「先輩の顔が見えたから、立ち入っただけです」

彼の横顔を見た。自分で言うのも何だけど、だいぶ間抜けた顔だったと思う。彼はこちらの方を見て、薄く笑った。

「先輩、顔真っ赤ですよ」

「…違う」

顔を逸らす。右隣の彼はクスクスと口を押えながら笑う。

……くそ、格好良いな。腹立つ。

「…ていうか、休日に散歩なんて暇人だね、君」

「先輩には言われたくないです。…散歩と言うより、買い物ですよ」

「買い物?」

彼は自分の右隣に置いたトートバッグを物色し始め、そして、『買った』物を見せてきた。

「………テディベア?」

「はい。可愛いでしょ」

手のひらサイズの小さくて可愛らしい茶色い熊。首元の水色のリボンが一層愛らしさを引き立たせている。

……でも、何故彼がこんな物を。

「テディベア収集でもしてるの?」

「テディベアと言うよりは、ぬいぐるみ全般ですね。ほら」

彼はスマホを取り出し何やらぽちぽちし、画面を見せてきた。そこには、シンプルな部屋に敷き詰められたぬいぐるみ達。これが女子の部屋なら『可愛らしい』で済むのだが、生憎この部屋の持ち主は男だ。

「すごいな…」

ただ、圧巻。それに尽きる。彼は冷静にスマホを戻すと、

「誰にも言わないでくださいね」

「はあ」

「…これで、半々フィフティ・フィフティですよ」

「………」

黙止。自分から踏み込めば、返り討ちに遭うに決まっている。

「先輩」

「何?」

「髪に、葉っぱがついてますよ」

そう言って、髪に触ってきた。本当に葉っぱがついていたらしい。一つまみすると、ポイと投げ捨てた。そしてまた髪に触れ、梳くように触ってきた。

「綺麗な髪ですね」

「それはどうも」

歯の浮くような台詞だ。しかも無駄に決め顔。イケメンめ。

「黒髪美人なんて、羨ましい限りです」

「馬鹿にしてるの?」

「してないですよ。凄いと思います。手入れとか、大変なんですか?」

「…別に、普通」

肩まである黒髪。先端を弄られる。やめて欲しい。というか近い。

「あのさぁ…」

「はい?」

「そんなことして楽しい?」

「まあ、はい。」

「ふうん」

つまらない事この上ない。もう帰ってしまおうか、とうららかな日差しにぽかぽかされながら思っていると、

「先輩、」

「ん?」

「これからデートしませんか?」

「はあっ!?」

思わずベンチから立ち上がってしまった。彼は涼しげに微笑んだ。

「いいじゃないですか。」

「良くない。帰る」

踵を返しずんずん進む。お構いなしだ。

「ちょっと、先輩」

腕を掴まれた。振りほどこうとするが、力が足りない。

「………やめて、放して。」

「嫌です」

腕に込めた力が強くなる。少し痛いけど、言ってやるものか。

「帰りたい」

「じゃあ、待ってます。それから、デートしましょ」

「嫌だ」

頑として拒否していると、彼は困ったように笑った後、耳に寄せて囁いた。

「…先輩のその綺麗な黒髪を、思いっきり引っ張ってもいいですか?」

「……っ!!」

「そうしたら、取れちゃいますかね、カツラ」

「…やめろって!!」

思わず大声を出してしまった。一瞬の視線の集中。でもすぐ興味なさげに逸らされ、元の日常に戻る。

しかし、彼はなおも続けて言う。



「バレちゃいますね。先輩が、女装をしてる変態だって」



『女装をしている変態』を物凄く強調してきた。腹立たしい事この上ない。

こんな奴に自分の性癖を知られてるのが本当に腹立たしい。物凄く嫌だ。顔面でそれを表現すると、彼はまた笑って言った。

「ほら、早く家に帰ってくださいよ、先輩。『男の姿』でデートしましょ?」

睨みつける。驚いた顔をされたけど、また笑われた。イケメンなんて、クソくらえだ。

解放され、進む。彼は少し後ろでついてくる。なんとなく、雰囲気だけど、笑ってる気がする。いつものニッコリ営業スマイルではなく、ニヤニヤした厭らしい笑みだと思う。

ああ、もう!!




家に帰り、速攻でメイクを落とし、服を着替える。流石の彼も、家に立ち入ることはしなかった。適当にパーカーとジーンズとT シャツを引っ張り出して着る。

姿見を見ると、先刻とはうって変わった姿だ。パッとしない童顔の男子。それに限る。

「やっぱり化粧は偉大だな……」

そんな事を呟きつつ、荷物をリュックに詰め玄関を出る。

あのクソ生意気な後輩とデートだなんて、屈辱以外の何物でもない。

「おまたせ」

でも、どうしても。

「大丈夫ですよ。行きましょうか」


彼には、勝てないのである。


息抜きです。完璧に。

前回に引き続き女装少年が……www

気付いたらこんなんばっかですね。ハイ。男の娘好きですけど。

今度はちゃんとした(?)BL書きたいです!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ