彼女を探す夜
先に言っておきます。
めっちゃくちゃ下手くそです!
でも、そんな話でも読んで頂ける方は本当にありがたいです。
生温かい目で見てやってください!w
夢を見た。
その女性はとても高い所に居た。
ネオンライトに包まれた町が端から端まで一望出来る。
見覚えのある景色。
これは僕の住んでいる町だ。
よくよく見ると"高い所"とはどこかの屋上らしい。
彼女は脱いだ靴をきちんと並べると柵を乗り越えた。
柵の外側にある段差に立ち、光輝く町を見つめる。
すると、彼女の目から同じく光る雫が落ちた。
…彼女は泣いていた。
それが悲しみからか、恐怖からかを知る術は今の僕には無い。
彼女は深く深呼吸をして決意を決めると、
夜の闇に足を踏み入れた…
夢を見た。
彼女が死ぬ夢を…
僕はそこで目を覚ました。
ベッドの上にある時計が午前0時を教えてくれた。
寝汗でびっしょりだ。
とりあえず台所に行き、コップ一杯の水を飲み干した。
…嫌な予感がした。
さっきの夢が忘れられない。
彼女が死ぬ夢が…
家の鍵が見つからない。
鍵入れの中にも、ポケットの中にも無い。
こうしてる間にも彼女に何かあるかも知れない。
僕は鍵もかけずに、
夜の闇へと駆け出した。
家を出て1つ目の角を曲がる。
そのまままっすぐ走って大通りに出る。
目指すはこの町で一番高いあのマンションだ。
この時間だ。
さすがに人はほとんどいない。
人目も無いので、大通りを全力で走った。
車を使えば良かったような気がしたが、やはり止めておいた。
…そもそも僕は車を持っていただろうか?
何分走っただろうか。
流石に息が切れてきた頃、ようやくマンションに到着した。
エレベーターが修理中だったので、階段を走って上る。
何故か今は体が軽い。
30階に上った時には息は切れ切れだったが、スピードは落ちていなかった。
そのまま屋上に出る。
すると、そこに彼女は居た。
彼女はまた泣いていた。
そして、飛び降りようとする。
夢と全く同じ風景。
夢とほとんど同じ状況。
1つだけ違うのは、今の僕には言葉があるということだ。
「待て!飛ぶんじゃないっ…!」
乾いた喉が痛かったが、そんなことはもう気にならなかった。
落ちる直前…
彼女は僕を見ると、その潤んだ目を見開いてこう呟いた。
「ともくん…?」
…そこで、また目を覚ました。
夢を見た。
彼女が死ぬのを止められない夢を…
どうなってる?
自分に問いかける。
また夢…?
何かがおかしい。
そう思いながらも、僕はまた闇へと駆け出した。
「ともくん…?」
彼女の声が脳内で再生される。
ともくん…
僕の名前なのか…?
おかしい。何かがおかしい。
そもそも…
僕は誰だ?
そこではじめて、自分の名前を思い出せないことに気づく。
そしてもう1つ…
さっきまで僕が寝ていたのは一体どこなんだ…?
これは確証だった。
あそこは僕の家ではない。
色々なことに困惑しながらも、僕はさっきと寸分違わぬ道通りを走る。
もちろんさっきより急いで、だ。
マンションに着くとやはりエレベーター修理中だった。
何故か疲労だけは感じていなかったので、僕は休むことなく階段を上り始めた。
階段を上っている途中…
あることを思い出した。
あるはずの無いこと。
しかし、不思議と納得がいった。
記憶が無い理由…
知らない部屋…
疲労の感じない体…
何となく、1つに繋がった気がした。
「先に飛び降りたのは…僕だ」
そう。
僕は先日、確かに死んだはずなのだ。
このマンションで、この時間に確かに飛び降りたはずなのだ。
何故生きているかは分からない。
しかし、彼女が死のうとする理由は察しが付いた。
これもさっき思い出したのだが、彼女は僕の恋人だったのだ。
僕が死んだということは、彼女にとって恋人が死んだということになる。
つまり、彼女が死のうとしてるのは
「僕のせいか…」
ようやく涙の理由が分かった。
彼女を泣かせたのは…
僕だったのだ。
屋上への扉を開ける。
外に出ると、彼女はやはりそこに居た。
そして、泣いていた…
こちらに気づいた彼女が、目を見開けて驚く。
そして柵の内側に戻ってくると、まじまじと僕を見つめる。
「本当に…本当にともくんなの…?」
僕は出来るだけはっきりと言う。
「うん」
「何で…
だって!死んだはずじゃ…!」
「うん…、死んだよ…」
「じゃあ、何でここに…!」
そう言って、彼女は僕にしがみつく。
僕は…
出来るだけ優しくその頭をなでた。
「ごめんな…
独りにさせて…本当にごめん…」
また、彼女を泣かせてしまった。
その時、僕はやっと自分の罪を自覚した。
すると、ふわっという感覚と共に体が消えていくのを感じた。
これで、終わるのか…
もうすぐ夜は明ける。
その前に彼女に伝えておきたいことがあった。
消えかけた体で必死に声を絞り出した。
「…今までありがとう」
そこからの記憶は無い。
僕はもう目を覚まさなかったのだ。
こうして僕の…
"彼女を探す夜"は明けた。