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第一話

 ドラグノア。海に大地に空に、竜が住まうという土地。星は竜により巡り、支えられると言い伝えられる世界。


[ドラグノア最果て、東部火竜山脈;山頂]で、物語は始まる。


 エアドラド皇国騎士団団長ガアプ、団員オルセ、キリアの三人は、山脈ふもとの村アレの長きの要請により火竜退治すべく、登山していた。


 霧が深く、錆びた色をした大地。人の住めぬ過酷な山を、もう三日以上登っている。重装備に騎士団の強固な体を武器にしても、辛いものがある。体力も気力も、もう長くは続かないだろう。


 ガアプは、もしや自分達は殺される為に派遣されたのでは無いのか、と考えていた。聖女であり竜皇国エアドラド皇女王レマの直々の命。

 いくら相手が皇国のシンボル、竜であっても、直々の命とは珍しい。その上、派遣人数はたったの三人。


 たとえ王族護衛騎士団金獅子に属す皇国一の腕のガアプ、天才騎士オルセ、天才魔法騎士キリアの三人でも、低竜相手では少なすぎる人数だ。


 時期皇王候補のジオ皇子の皇王としての資質を、ガアプ、オルセ、キリアの三人が危ぶんでいるのを、感付かれたか。可能性はある。


 ガアプは背後のオルセとキリアを見た。ガアプの考えを気付いているのだろう、二人の表情は暗い。

 ガアプは、一週間前に見た、皇座に座るレマの知的な瞳の冷たさがまだ残るようで、寒感を覚える。


「アレ村を襲う火竜山脈の竜の退治を命じます。騎士団団長が皇都にいない状況を知られてはならないので、至極隠密に。」


 ガアプは、レマの言葉を思いだし苦笑する。

 今死んだら、まるで亡命か暗殺でもされたような扱いになるのだろう。あの言葉が、本当にレマから発せられたのか。

 ガアプは、時の流れによる人の変化を、苦痛にも似た感覚で思った。


 ガアプとレマは、元々同じ村に住む、幼馴染みの間柄であった。

 二人は、仲が良い、友人であった。


 変化が訪れたのは、二人が共に十四の時であった。突然、レマに聖女の力が現れたのだ。

 予知夢、治癒力、占星術、魔法力、聖なる力。加えて、その美貌が皇都までの噂になるまでに、さほど時間はかからなかった。


 レマは皇帝に呼ばれ、村を去った。その後、レマが皇帝の正妃となると聞いて、ガアプは騎士団の入団試験を受けるのを理由に、皇都に会いに行った。


 しかし、既に正妃となっていたレマは、後宮に住む、一般人の目に触れることの許されない存在となっていた。

 二人がようやく出会ったのは、ガアプが騎士団長にまで登り積めた頃。皇帝が死に、なんとレマが女帝となったのだ。その知性までも、誰もが認めるものであったからだろう。

 戴冠の式。ガアプは、レマに剣を捧げるという役を頂き、二人の視線は、ようやく重なった。


 レマは、村の少女そのままであった。目尻に皺が目立つものの、明朗な微笑みは変わらず、ガアプの目の前にあった。

 ガアプは、もう四十を過ぎていたが、その時初めてレマに恋心を抱いていたのだと気付き、戸惑ったほどに。

 懐かしい、笑みだった。


 だが、女帝としての時を送り、レマは変わった。

 英俊だが、冷徹な帝王となったのだ。ガアプが反乱を起こすかも知れないという僅かな可能性を百とするほどに。

 危険な老兵は、切り落とす女帝に。


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