神秘の森
「よし、じゃあ作戦を整理するぞ」
「おー。やっちゃえやっちゃえー」
「……ところで、なんで俺は君をおんぶしてるの?」
「歩きたくないから。そんなことより、作戦をどーぞ」
俺たちはその後、支度を整えてからリーン近郊の森へ向かっていた。そこは神秘の森と呼ばれ、魔力が溜まりやすくなっているため、魔物が定期的に出現するらしい。日帰りで迎える場所であり、生息する魔物も比較的弱めとのことだ。
しかし、弱いといってもそれは魔物の中では、だ。俺たちはレイの魔法以外に特筆すべき攻撃手段を持っていない。そんな状態では、魔物を1匹2匹仕留めるのが精々だろう。それではあまりに効率が悪い。そこで、だ。
「まず、レイの隠密魔術で気配を消す。それで、魔物からは何とか隠れてやり過ごして奥深くへ行く」
「うん。次は?」
「森の奥には精霊……だっけか? が居るから、それを魔術で捕縛すると。精霊の力が詰まった石は魔力の代替にも出来るし、売ればそれなりの価値になる……で良いんだよな?」
「おーるぐれいと。石を複数作れれば、より強い魔物とも戦えるし、最悪売ればお金になる。我ながらナイスなアイディア」
本来、精霊を縛る術は2級に相当するらしいが、そこはお手の物だ。消費魔力も3~4発程度は使用出来るので、効率も悪くない。物によっては今回の税金程度、軽々払えるレベルの金になる可能性もあるため、一攫千金の夢もある。
問題があるとすれば、精霊が居る森の奥まで、隠密魔術一本で何とかしなければならないこと。もし魔物に発見された場合、成果が無くとも引き返えざるをえない点か。
「魔物に見つかった時は、対処を頼むぞ。俺はただの一般人だからな」
「まぁ任せてよ。それじゃあ、着いたら起こしてねー」
そう言って、レイは電源を落としたように眠りに落ちた。全く、この少女は危機感というものが希薄すぎる。そもそも、俺は東の国の人間ということになっているのだ。輪を掛けて信用出来ないというのに、無警戒が過ぎるだろう。
「……けど、悪い気はしないか」
彼女を疑ってしまう気持ちは多少有る。何か騙すつもりなのではという考えは当然浮かぶ。それでも、俺はレイを信じたかった。この世界で初めて、彼女は俺を頼ってくれたから。
「そんじゃあ、気ぃ引き締めるか」
その背に感じる、確かな温もりを受け止めながら、少年は決意した。薄く眼を開けた少女はそれを聞いて、ほんの少しだけ口角を上げる。彼女の両手の力が少し強まったことには、結局どちらも気付くことは無かった。




