MPが足りない!
「……は? 人造、人間……?」
「うん。それも、かなり欠陥だらけのぽんこつ。誇れるものと言えば、この美少女フェイスとインプットされた知識くらい」
「自分で言うな。確かに可愛いけど」
レイは変わらぬ表情のまま、決めポーズをしていた。不思議と、ドヤ顔をしているように見えた。
「私は千を超える魔術、魔法を知っている」
「おぉ! 凄ぇじゃん!」
「でも、私には魔術を扱うための魔力がほとんど無い」
「……じゃあ、駄目じゃん」
「そうなの。外部からの魔力供給があれば使えるんだけど、その供給源もこの国に来るまでに全部使い切っちゃった。だから、今の私はか弱い美少女に過ぎない」
要するに、MPが足りない! ってやつか? それじゃあ、いくら魔法を覚えていても無意味だろ。
「そこで、アキラの出番」
「俺は魔法なんて使えないぞ」
「分かってる。私が欲しいのは、貴方の魔力」
「へぇ、俺に魔力って有るのか?」
「ちょっと待って、検査してあげる」
レイは俺をしゃがませると、おでこをくっ付けてきた。不思議と、身体の中を何かが走るような感覚がした。
「っ……! これ、は……!」
「も、もしかして結構凄かったりするか!?」
「魔力係数、75……!」
知らない単語だが、割と良さそうだぞ! ワイシャツに黒のズボンだけで異世界召喚とか、そんなハードな展開は無かっ――
「アキラ、貴方の数値は私の15倍も有る。とても凄い」
「……ん? レイって、ほとんど魔力が無いんだよな? それってどうなんだ?」
「平均は100らしいけど、私の魔力係数5と比べたら凄いでしょ」
……じゃあ、駄目じゃね? それどころか、平均以下じゃん。そりゃあ、5と比べたら高いけど、賞賛されるような数値じゃ無いだろう。
「……ちなみに、魔法ってどれくらい魔力を使うんだ?」
「実用的なものは魔力係数で言うと、効率化しても10~20ってとこかな。詳しく説明するとね……」
レイの解説曰く、誰でも同じ効力を発揮するよう定型化されたものを魔術、術者によってその威力、性能が変化する術を魔法と定義するらしい。そしてそれらには、1~5の等級に割り振られている。
「1等級が一番凄い。5等級は30分勉強すれば誰でも使えるレベルって感じ。3等級の魔法、魔術が扱えて一人前って扱いが一般的、らしい。ちなみに私は、1等級の魔法や魔術を使える」
V字を作りながら、レイは誇らしげにそう言った。理論上は使えるだけで、実際は使えないも同然だろうに。
「しかしまぁ……現状はそこに頼るしかないか」
俺は納税の紙以外の、ついでに貰ってきた求人の紙を眺める。俺たちは一ヶ月限りの仮入国者のため、長期的な契約は結べない。
なので、必然的に日雇いか短期の仕事ばかりが並んでいる。しかし、それらの仕事を一ヶ月間フルでこなしたとしても、統一金貨5枚には届かない。
「レイは統一金貨5枚をどうやって稼ぐ気だった?」
「決まってる。魔物を討伐してその素材を売り払う。効率的な倒し方も、金になる部位も私にはインプットされているからね」
「なるほど。話が見えてきたぞ」
俺やレイ単体では、どちらも魔物を討伐することは出来ない。しかし、俺の魔力とレイの魔法があれば、どうにかなるかもしれないのだ。そのための協力ということか。何も考えてないように見えて、案外しっかりしている子だ。
「よし、それでいこう。よろしく頼む、レイ」
「うん。よろしくね、アキラ」
まずは、作戦会議といこうか。




