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異端者達は活躍したい!  作者: 椿


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異端者No.2 人造人間

 「はて? 私の知っているお話と少し違いますね。地域によって差異があるのでしょうか?」


 「うん。お供がイヌ、サル、キジって弱すぎ。普通、ヘルドッグにイービルモンキー、イモータルコンドルでしょ」


 「そもそも、主人公は鬼に家族を惨殺された復讐者ではなかったか? 鬼を滅するため、魔の力に手を染めた東の国出身の武士という設定だったはず」


 「名前が物騒! ていうか、また東の国かよ!」


 あれから俺は、桃太郎の話を補足をしつつ話した。そして、物語が進むと同時に、三人は首を傾げるのだった。その度に明かされる、おおよそ子供向けとは思えないダークな桃太郎。この世界の東の国は一体どうなっているのだ。


 「イモータルコンドルが鬼に催眠を掛け、同士討ちをさせる作戦は見事だ! 混沌とする戦場の中、百の子分を巧みに操るイービルモンキーも流石と言うべきだろう!」


 「私はやっぱり、個の力で鬼を抹殺するヘルドッグが一番好き。黒い毛並みに紅い瞳って、すっごくカッコいいよね」


 「皆さん、分かっていませんね。その3匹をまとめ上げ、見事復讐を成し遂げる主人公こそ、この作品の肝でしょうに。彼が居るからこそ、この作品は復讐という行為の虚しさが伝わってくるのですから」


 三人は困惑する俺を他所に、異世界桃太郎の談義を始めてしまった。というか、桃太郎の話をしながら感じたが、この世界は少々異世界らしくない。


 イヌなどにきび団子を与える話をすれば、やれ動物愛護がどうのとヤジが飛んできた。


 鬼ヶ島から財宝を持ち帰ったと言えば、窃盗罪がどうの脱税がなんのと指摘が入る。


 今の状況だってそうだ。俺たちは難民としてこの場所に拘留されている。俺の知っているファンタジー物と全然違うのだ。テンプレは一体何処へ行った。そもそも──


 「は、はーい……皆さん、お待たせしましたー……こちらの対応が決まりましたので、ご説明させて頂きます」


 そこへ、右頬を赤く腫らした先ほどの男がやってきた。彼は俺と眼を合わせないようにしながら、怯えたように説明を始めた。


 「ま、まず、この場に居る四人を一旦仮入国者と認めます。パスポート無しでの入国は基本認められませんが、今回は特例として認可が下りました」


 ……十中八九、俺の東の国出身発言のおかげか。この短期間でも、東の国というものが恐れられているのは嫌でも分かった。そんな東の国の人間を追い返して、何かしら逆鱗に触れることを避けたのだろう。


 そうすると、条件の同じ彼女らを弾く訳にはいかなかった。だからこその、四人まとめての入国許可か。


 「ですが、あくまで仮入国です。一ヶ月後にもう一度審査を行います。その際に問題有りと判断されれば、追加の滞在は許可されません」


 「……嫌らしいやり方」


 「全くです。はっきりと長期滞在は認めないと言えば良いのに」


 「……ん? つまり、どういうことだ?」


 疑問を顔に浮かべているのはルフトだけだ。俺は彼女の肩を叩き、現在の状況を整理した。


 「俺たちは全員、不法入国しようとした難民って扱いだろ? この国としては、何か理由でも無い限りは入国は認めたくないはずだ。けど、俺を追い返して東の国を怒らせると、色々と不都合があるんだと思う」


 「なるほど……東の国の人間は礼節を重んじていると聞いたことがある。それを無下にした者に対しては、子々孫々までその非礼の報いを受けさせるらしいからな」


 相変わらず物騒だが、今回はそれが功を奏した。義理は通したし、検討もしたが今回は残念だったと、そう終わらせるのが目的なのだろう。だから、この一ヶ月後の審査はまず間違いなく、通らない。


 「僕としてはこのまま終わらせたい、のですが……上司は懸念点は潰したいそうです。こちらをどうぞ」


 男はそういうと、1枚の紙を俺たちへ手渡した。日本語ではないが何故か読めるそこには、王国民税、統一金貨五枚と書かれていた。


 「この街、リーンにおいて住民が一年間で支払う税です。これを納めて頂ければ、王国民として認められます。審査は当然、不要となるでしょう。犯罪などをすれば、それは無効となりますが」


 「……なぁ、統一金貨5枚ってどれくらいの価値だ? お前、持ってる?」


 「そんなことも知らんのか? 統一金貨5枚は、王国民の2~3ヶ月分の収入に相当する。そんな金、私が持っているわけないだろう」


 となると、金貨1枚辺りで大体10万円くらいか? 50万円相当を一ヶ月で稼ぐ。中々、厳しい条件が出てきたな。


 これで、審査の不当も訴えづらくなった。俺たちがそんな大金、払えないと考えてのことだろう。


 「もちろん、各種サポートはさせて頂きます。一時宿泊所の使用やお仕事の斡旋など、色々と支援は受けられますので、ご活用ください」


 話は以上だと言わんばかりに、男は俺たちを房から出した。俺がその場を立ち去るまで、ずっとそうしていた。違うのに、今更東の国出身じゃないですなんて言えない。俺の心はもうボロボロだった。


 「やっと出られたか! 私はこれで失礼する!」


 「あ、おい! どこ行くんだ!」


 「ふん! 人間は嫌いだと言っただろう! これ以上お前が吐いた空気など吸っていたくないのだ!」


 「……その理屈で言うと、お前この街で息出来ないじゃん」


 「だだだ、黙れぇ! 屁理屈ばかり並べたておって!」


 多分、ルフトは頭の弱い子なのだろう。早口で俺を捲し立てると、如何にも機嫌が悪いですといった様子でその場を去って行った。


 「私はこの街の教会に伝手がありますので、そこを頼ろうと思います」


 「そっか。じゃあ、お互い頑張ろう」


 「えぇ、アキラさんも時間があれば祈りに来てください。私はいつでも、入信をお待ちしておりますので」


 「き、機会があればね……」


 そうして残ったのは、レイだけだった。彼女は何故か、俺の袖を掴んだままだった。


 「私は、アキラと一緒に行く。私一人じゃ、お金稼げないから」


 「そりゃあ良いけど、俺だって何も出来ないぞ? あと、この国の一般常識も無い」


 「東の出身者に常識があるわけ無いから大丈夫。私だって同じようなものだし」


 「……? どういうことだ?」


 レイはこちらを見上げながら、何かを決心したようにその口を開いた。


 「私、人造人間なの。実験ナンバー0。それが、私の正体」


 少女は変わらぬ無表情のまま、そんな爆弾を投げつけてきた。

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