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異端者達は活躍したい!  作者: 椿


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1/6

異端者No.1 異世界出身

 拝啓、お父さん、お母さん。いかがお過ごしでしょうか? そちらの方は、何かと対応に追われて大変かと思います。誠に申し訳ありません。


 今、私は……異世界で難民として、拘留されています。理由は、私にも分かりません。気がついたらこの場所に飛ばされ、あれよあれよという間に不法入国者として逮捕されました。誰か助けてください。


 「クソ人間共め! このっ! 離せぇ!」


 「はいはい、暴れないでね~。呼ばれるまで、ここで大人しくしてなー」


 無情な世界に嘆いていると、同じ房に一人の女が運ばれてきた。その耳は少し尖っており、髪は艶やかな金色、藍色の瞳をしている。少々露出の激しいコスプレ衣装を着ているが、それを着こなせるほどの美貌を誇っている。だが、それ以上に……


 「チッ……! 人間と同じ部屋に閉じ込められるなど、一生の恥だ……!」


 「いや待て。それは人種差別過ぎるだろ」


 「黙れゴミ虫め! 視姦するな気持ち悪い!」


 思想と言葉使いが終わっていた。現代の女子高生だって、こんなに口は悪くないだろう。あまりにもドン引きし過ぎて、思わず声を出してしまった。


 「私は人間が嫌いだ。だから、こっちを見るな。私の声を聞くな。息をするな。それが出来たらこの場所に居ても我慢してやる」


 「無茶言うな! ちょっと面が良いからって調子に乗るなよ!」


 「なんだと貴様……! 私の顔が何だって!? 馬鹿にするのも大概にしろ!」


 「はぁ!? いや、面が良いは褒め言葉だろ?」


 「そうかそうか……! そんなに死にたいのだな! 望み通りそうしてやる!」


 「待て待て待て! ぬぉぉぉ……! 力つっよ……!」


 女は何故か激高すると、俺を押し倒して首を絞めようとしてきた。必死に抵抗するが、この女、馬鹿みてぇに力がありやがる。こ、こんな最期は嫌だ! まだ彼女だって出来たことないのに!


 「へ、ヘルプーーーー!!! 痴女に襲われそうで──ぶほぉ!?」


 「だ、誰が痴女だ!? どこまでも馬鹿にして……! 絶対ぶっ殺してやる!!!」


 「や、やめっ……! ごほっ……! わ、悪かったから──!」


 ……その後、駆けつけた職員が女を取り押さえるまで、俺はひとしきり殴られた。異性に跨がられたのも、ボコボコにされたのも、殺されそうになったのも、これが初めてだった。多分、一生忘れないと思う。俺の異世界生活、初日の出来事である。


            1


 「はい、じゃあ一人ずつ名前と出身地を言ってね~。嘘吐いても良いけど、その場合は入国が難しくなると思うから、正直によろしくー」


 一夜明け、俺を含めた四人は一室に集められた。一人は俺を殴ったあの女で、後は白いワンピースを着た黒髪の少女と白髪の修道女らしき女だった。まず初めに、黒髪の少女が口を開いた。


 「……レイ。北方の方から来た」


 「北側って言うと……シリウスとか?」


 「…………」


 「う~ん……ま、シリウスで良いか。はいじゃあ次!」


 気怠げな男はそう言うと、紙に何か書いて次に回した。今のは俺でも分かる。絶対良くないだろ。ていうか、今後ろに居る女の人があからさまに舌打ちした。やっぱり駄目なんだ。


 「リースから参りました、ステリンと申します」


 「えっと……なんでパスポート持ってないの? 王国民って事だよね?」


 「あぁ、それはですね。除籍されたからです。元は戸籍もあったのですが、死亡扱いにされました」


 「ア、ハイ……つ、次! 次の人!」


 続いて修道服姿の女性。なんてこと無いことのように、恐ろしいことを口にした。今も微笑みを浮かべているが、明らかにヤバい人だろう。


 「ふん! 人間に名乗る名など無い!」


 「あ、そう。じゃあ入国審査は無しということで」


 「フィフスフォード・ルフトだ! 誇り高き神聖領から来た!」


 「ルフトさんね。神聖領ってことは、エルフってことで間違いないかな?」


 「そうだ。これ以上は何も言わんぞ」


 ほう、これがエルフというものか。確かに美人だし、耳も尖っている。しかし……あまりに粗暴すぎやしないか? プライドが高そうというのは解釈一致だが、あまりにも知性が感じられない。オークですと言われた方がまだ納得出来るというものだ。


 あ、やべ。めっちゃこっち睨んでる。なんで分かるんだよ。声に出してないだろ。


 「顔が全て物語っている! 誰がオークの生まれ変わりだ!」


 「そ、そこまで言ってねぇ! っておい! 掴みかかろうとするな! まだお前に殴られた痕が痛ぇんだぞ!?」


 「このぉ! ぶっころ──あばばばば!!!」


 「はいはい、落ち着いてね~。仲が良いのは結構だけど、今は審査中だからさ。ちょっと落ち着こうか」


 男の指先から光が走ったと思うと、それがエルフの女……ルフトに直撃して爆ぜた。凄ぇ、これが魔法ってやつか?


 「はい、最後は君ね。名前と出身地をお願い」


 「え、え~っと……名前は向田彰です。出身は……えと、ひ、東の方です」


 日本から来ましたと言って、伝わらないのも誤解されるのも面倒だと考えての、少しぼかした東の方という言い方だった。そこに深い意味は無く、黒髪の少女のように多くを語らない方が得策だと思ったのだ。


 しかし、東の方と口に出した瞬間、目の前の二人が明らかにビックリしたような顔をした。え? なに、その反応は? もしかして、なんかヤバい国なのか?


 「……初めて見た。ていうか、人の形してるんだ」


 「うふふ……わざわざ東の出身と仰るなんて、豪胆な人ですね」


 「エト、ち、調子のってすみませんでしたぁ……!」


 黒髪の少女は好奇の視線を、修道女の女はずっと笑っていて、ルフトは借りてきた猫のように自らの身体を抱きしめ、ブルブルと震えて命乞いを始めた。待て待て! そんなヤバい国なのかよ、東の国!


 「……え、マジ? 嘘吐いてないの? 本物の東出身? うっそぉ~!?」


 「いや、私も驚いてますよ。つまり彼は、本当にあの国の出身か、心の底から東の国で産まれたと思い込んでいる狂人のどちらかです」


 「どうすんのこれ……入れても追い返しても問題になりそうじゃん。アインちゃん、何とかしてよ~!」


 「私に言ったってどうしようも出来ないですよ! というか、東の国の人に見られたら婚期逃すって噂が……! ただでさえいい人居ないのに、そんな呪いまでかけられたら──」


 「あ、あの~?」


 「「ヒッ!? な、なんでしょうか!?」」


 二人は俺を化け物でも見るかのように身体を強ばらせた。いや、誤解なんですって。俺は平和な島国の日本生まれなんですって。この四人の中じゃ、一番マトモな自信がありますよ? だから、そんな顔しないでください。心が痛いです。


 「と、とりあえず一旦保留で! 一度上司と相談してきますから! ほら、ムンクさん! 一時待機所に送ってください!」


 「なぁ!? アインちゃん、そういうの良くないよ!? 僕はか弱い事務員なんだからさ! もっと労ってくれないと!!!」


 「うっさいですよ! いっつも仕事サボってるんだから、今日くらい良いでしょ!? それとも、ムンクさんはこのまま婚期を逃せって言うんですか!?」


 「それを言うなら、僕だって2年後は30年勤続で純潔を守り続ける悲しきモンスターになっちゃうんだよ! 条件は一緒でしょお!?」


 「一緒な訳ねぇでしょう!? 頭沸いてんすか!?」


 ……その後、ごっつい顔をした2メートルはありそうな強面が二人を引き摺っていき、俺たちは元の房へと戻されることとなった。何故か、四人まとめて。


 房の中はそれほど広くなく、お互いの距離は手を伸ばせば届くような近さだった。18の健全な男子である俺にとって、それは地獄の誘惑に等しかった。


 「ねぇねぇ。東の国ってどんなとこ?」


 「なんでくっつくの? 知らない男の人にそんな距離感じゃ駄目でしょーよ」


 「いいから。退屈だし、お話して」


 「私も聞きたいです。ステリン教の教祖として、異文化も学ばなければなりませんので」


 黒髪の少女、リンは眼をキラキラと輝かせて腕に抱き着いてくるし、修道女の女、ステリンもニコニコと笑みを浮かべて顔を近づけてくる。というか待て、この女、何教と言った?


 「……ステリン教って何? え、ステリンさんを崇める宗教なの?」


 「ご存じないのですか? こう見えて私、ご神体なんですよ。ふふ、貴方達もどうですか? 一緒に入信しては」


 「へぇー、有名な宗教なのか?」


 「聞いたことも無いけど」


 俺とレイが首を傾げると、ステリンはやれやれと言い、とても良いドヤ顔で自らを指さした。


 「今のところ、信徒はご神体兼教祖の私のみです! 今なら、次席である枢機卿の地位をプレゼントです! さぁ、入会したくなったでしょう!?」


 「いえ結構です」


 「私も良い。ねね、そんなことより、東の国の話をしてよ」


 「そんなこと!? 今そんなことって言いましたか!?」


 「……お前達、よくそいつと話せるな。私は恐ろしくて仕方ないぞ」


 きゃいきゃいと騒ぐ俺たちを見て、ルフトは呆れたように言い放った。俺にしてみれば、初対面でいきなり癇癪を起こして人をボコせる、お前の方が怖いわ。


 「私より弱そうだし、実力を隠してるならそれはそれでアリかなって」


 「如何なる人にも差異無く接するのが、教祖としての務めですので」


 「……言われてみれば、私はこいつをボコしていたな。そう思うと、ビビるのも馬鹿らしくなってきた」


 ルフトはそう言うと、にまりと笑った。あまりに典型的な三下ムーブに、俺は少々憐れみを感じてしまった。


 「おい待て。何故そんな眼で私を見る? 貴様、馬鹿にしているのか?」


 「いや何でも無い。それより、その格好じゃ寒いだろう。俺の毛布、使うか?」


 この房は寝具の類いが無く、昨日も藁の上で寒さに震えながら寝たのだ。彼女のようなへそ出しファッションをしている女性には、少々厳しいものがあるだろう。


 「その可哀想なものを見るような眼を辞めろ! 貴様の施しなど不要だ!」


 「ねぇねぇ、早くお話して」


 「仕方ないな。それじゃあ、東の国に伝わるお伽噺でも──」


 「おい! 無視するなー!!!」


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