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新しき顕現者⑦

突如として桜色の都を襲うモンスターの群れ。

マヤリィは都を救う為、配下達に命令を下す…。

その日、久しぶりに桜色の都から使者がやって来た。

『国境線の黒魔術師』と呼ばれるマンスである。

そういえば、桜色の都の精鋭黒魔術師部隊『クロス』を率いるダークが当時恋人だったシャドーレに宛てて書いた手紙を預かってきたのもマンスだった。結局、ダークはフラれたのだが。→『流転の國』vol.1 〜突如として世界を統べる(以下略)〜参照。

「流転の國の主様、ご無沙汰致しております。お目通り叶いまして大変光栄にございます」

何やら緊急事態だと言うので、直接マヤリィが話を聞くことになった。

「顔を上げなさい。マンス、桜色の都で一体何が起きていると言うの?」

調べようと思えばネクロが調べてくれるだろうし、マヤリィも『魔力探知』は使えるが、最近はクラヴィスが顕現したこともあって、桜色の都のことを忘れていた。それに、何か問題が起きれば、今回のように使者が助けを求めに来ると思っていた。

「はっ。畏れながら申し上げます。数日前より、都の北方に位置するエアネ離宮周辺にて大量のモンスターが発生しておりまして、黒魔術師部隊は駆除に追われております。何しろ数が多く、付近の住民を避難させる事態になりましてございます」

エアネ離宮は桜色の都の元国王であるツキヨが居住している場所である。

「貴女様もご存知の通り、都には攻撃魔法を使役出来る者が多くありません。そこで、流転の國の力をお借りしたく、本日参上致しました。…こちらがヒカル王直筆の書状にございます」

ツキヨの跡を継いで即位したヒカル王はまだ10代の若者と聞く。その書状には、拙いながらも必死の思いで『守護者』である流転の國に助けを求める、桜色の都の国王の言葉が書かれていた。

「…状況は理解しました。急ぎ、我が國の者をエアネ離宮に派遣しましょう」

マヤリィはそう言うと、

「ミノリとクラヴィスをここへ」

傍に控えているジェイに命じる。

「はっ。畏まりました」

ジェイはすぐに二人に念話を送る。

ミノリはともかく、クラヴィスには『転移』の宝玉を十分に持たせていないから来るまで時間がかかるかもしれない。

(それにしても、なぜクラヴィスを…?)

ジェイは不思議だったが、マヤリィはマンスとの会話を続ける。

「聞かせて頂戴。そのモンスターとは、どういったものなのかしら」

「はっ。都の西に位置する砂漠に生息しているドラゴンにございます」

桜色の都の西には広大な砂漠が広がっているという。

砂漠に住むドラゴンとは…?

マヤリィは不思議に思う。

それは、自分の想像するドラゴンと同じだろうか?

「ご主人様、ミノリにございます」

考えている間にミノリが『転移』してきた。

「マンス殿、お久しぶりです」

「ミノリ殿…!ご無沙汰しております」

流転の國と桜色の都の橋渡しとなったマンスと、彼の案内で初めて桜色の都を訪れたミノリ。顔を合わせるのは久しぶりである。

そこへ、

「遅くなりまして申し訳ございません、ご主人様。クラヴィス、只今参上致しました」

クラヴィスが現れる。

ジェイの念話で今から下される命令に関して、ミノリもクラヴィスもある程度は心得ている。

「話は聞いているわね?桜色の都のエアネ離宮周辺に多数のドラゴンが発生している。それらを駆除しつつ、怪我人がいた場合は『全回復』の宝玉を使いなさい。我が國の友好国である桜色の都をなんとしてでも守るのよ」

「はっ!畏まりました、ご主人様」

「桜色の都を救うお役目、必ずや完遂して参ります」

二人の返事にマヤリィは頷くと、

「貴方は王宮に戻って、モンスター駆除の増援を直接エアネ離宮周辺に送るとヒカル殿に伝えて頂戴」

「はっ。有り難きお言葉にございます。早急に都に戻り、陛下にお伝え致します」

マンスは深く頭を下げる。

「それと、ミノリ」

「はっ」

「もしエアネ離宮が危険な状態に陥っていたら、ツキヨ殿をこの城に『転移』させなさい。王位を退いたとはいえ、雪色の白魔術師は桜色の都にとってなくてはならない存在よ」

「はっ。畏まりました、ご主人様」

(ツキヨ殿を、この城に……?)

傍で話を聞いているジェイは、マヤリィがツキヨを『転移』させるようにと言ったことに驚いていた。基本的にマヤリィは流転の城に外部の者を入れたがらないからだ。

「ミノリ。クラヴィス。相手の力は未知数よ。くれぐれも無理はしないように。万が一、自分達だけではどうにもならないと判断したら、すぐに念話を寄越しなさい。その時は、私が直接出向きましょう」

「か、畏まりました、ご主人様」

ミノリはマヤリィの言葉に驚きつつ、頭を下げる。自分達だけで対処出来なければ、ご主人様の手を煩わせることになってしまう。

マヤリィはそんなミノリの心の内を読んだのか、

「私のことは気にせず、危険だと思ったら早めに連絡すること。分かったわね?」

「はっ!決してご主人様の意に反するようなことは致しません。お約束致します」

ご主人様の意=無事に戻りなさい、である。

ミノリの返事を聞いたマヤリィは大きく頷くと、

「よろしい。では、行ってきなさい」

『長距離転移』の魔法陣を出現させる。

「はっ!行って参ります、ご主人様…!」


次の瞬間、二人はエアネ離宮の前に立っていた。

「ここが…エアネ離宮…」

クラヴィスにとっては初めての桜色の都である。

と、そこへ…

「貴女は…まさか、ミノリ殿でございますか…!?」

そこにいたのは、自分も血を流しながら怪我人を介抱する雪色の白魔術師だった……。

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