新しき顕現者①
「…ここ数日、私達が感じていた流転の國に顕現する者とは貴方のことだったのね」
今、玉座の間にいるのは四人。
玉座に座ったマヤリィ。
両隣に控えるのはジェイとルーリ。
そして、たった今、流転の國に顕現したばかりの一人の青年。
少し前から感じていた。
この流転の國に新しく顕現してくる者があることを。それを予感しているのはマヤリィだけではなかった。
「畏れながら、ご主人様。私もこの國に現れる何者かの存在を感じております」
数日前の会議でルーリが言った。
「ご主人様、私も同じ予感を感じております。されど、現在、魔力探知ではその正体を突き止めることが出来ません」
ネクロの魔力探知に引っかからないということは、皆が流転の國に顕現した時と同じく、突然この城のどこかに現れるということだろうか。
「ご主人様、いかがなさいましょう?可能性は低いとは存じますが、必ずしも私達に友好的な者が現れるとは限りません」
「私もそう思います。不測の事態に備えて、各部屋に結界を張り、警戒を強めるべきかと」
皆は口々に進言する。
マヤリィは玉座から皆を見て、
「分かった。皆を守る為にも、その者が現れた際のシミュレーションをしておきましょう。…出来れば、我が國の仲間となる者の顕現を願いたいところね」
流転の國においてこのような事態は初めてのことなので、マヤリィも戸惑っている。
しかし、この國に存在する者達の強大な魔力と、マヤリィ自身の持つ宙色の魔力をもってすれば、たとえどんな脅威が迫ってこようと返り討ちにすることが出来るだろう。
そして、その数日後に早くも彼が流転の國に現れたのである…。