最強アサシンの息子
俺の名はアサヒ。父はかつて勇者と共に戦った凄腕のアサシンで、今は引退してアサシンギルドのマスターを務めている。そんな父のスパルタ教育のもと、俺も15歳でギルド最強のアサシンと呼ばれるようになった。
ある日、国王から俺宛に一通の手紙が届いた。その内容は、魔王領にある魔族の学園にスパイとして潜入し、魔王の子供と学園の実態を探る任務だという。噂によれば、魔族は人間のように学園を設立し、優秀な人材を育成しているらしい。しかも、その学園には魔王の子供も通っているとか。
「君に頼む、アサオの息子、アサヒよ。確認してきてくれ、いや、確認してこい!」という国王の手紙に、父も「うん、行ってこい!」と背中を押してくる。
果たして俺は、魔族の学園に潜入し、魔王の子供やその実力を暴くことができるのか。人間族最強のアサシンとしての誇りを賭けた、前代未聞の潜入任務が今、始まる——。
入学式
俺はフードを深々と被り、周りの視線を感じないよう、そっと息を潜める。ここは魔族の学園。人間が一人、堂々と入学してくる場所じゃない。アサシンの技術を駆使し、闇に溶け込むように目立たない存在を目指す。だが、そんな俺の決意を打ち破る声が、後ろから聞こえてきた。
「ねえ君、どこの種族?」
ドキッとして心臓が跳ね上がる。バレた? それとも、ただの興味? 冷や汗が背中を流れる。まさか初日で露見するなんて——いや、俺の正体はまだ知られていないはずだ。しかし声の主の視線を感じると、抗えず、そろそろとフードを脱いで顔を見せた。
すると、そこには予想外の光景が待っていた。
目の前にいるのは、今まで見たこともないほど可愛らしい女の子。柔らかい髪が肩にかかり、口元にはちょこんと小さな牙が覗いている。優しげな笑顔を浮かべながら、キラキラした目でこちらを見つめている。まるで小動物のような仕草で、俺をじっと見上げているじゃないか。
「に、にに人間です……」俺はどうにか返事をしようとするが、声が上ずってしまう。
口から出た言葉に、自分でも驚くほどのぎこちなさを感じた。顔が熱くなる。いや、熱いどころか燃えそうだ。慌てて視線を逸らし、どうにか平静を保とうとするが、心の中では完全に混乱していた。
「へえ、人間なんだ。珍しいね」彼女は可愛らしい声で笑い、俺をじっと見つめたままだ。
うっ、近い……! そんなに近づくな……!
——思わず後ずさりしそうになる自分に気づき、密偵としての自覚を取り戻そうと必死に努める。だが、完全に動揺しているのが自分でもわかる。このままでは怪しまれるどころか、間違いなく「不審者」として通報されるかもしれない。
心の中で父の顔が浮かんだ。「アサヒ、任務に失敗することは許されないぞ」という声が聞こえてくるようだ。しかし、そんな厳格な教えも、この少女の前ではまったく効かない。
この俺が珍しい?どうして、、、あっ
そして、俺は気づいた。初日から——いや、むしろ数分で——密偵としての任務は、あっさりと失敗した。