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修練

晃、エレナ、そして空は夜空を飛び続け、ついに高野山の山影が彼らの目に入ってきた。霧が立ち込める神秘的な山々の間に、古くからの修行道場が静かに佇んでいた。


「ここが高野山…」晃は、静かな畏敬の念を抱きながら、霧の中に浮かぶ古い寺院の輪郭を見つめた。


「蓮道さんが待っているわ。彼の指導を受ければ、君の力をもっとコントロールできるようになる。」エレナは、晃にそう告げて寺院へと向かった。


寺院に到着した三人を迎えたのは、蓮道だった。彼は白髪の長髪を背に流し、痩せた体に僧衣をまとった老人で、常に目を閉じている。その姿は静寂そのもののように見えたが、周囲には深い威厳と強大な気配が漂っていた。


「よく来たな…」蓮道は穏やかな声で語りかけたが、彼の目は一度も開かれなかった。それでも、晃たちは彼が全てを見通しているような感覚を覚えた。


蓮道は静かに晃の方へ歩み寄り、目を閉じたまま彼を見つめるように立ち止まった。「お前の魂を見させてもらおう…」


その言葉と共に、蓮道は晃の内に秘められた魂を見通すように、手を彼の胸元にかざした。しばらくの沈黙の後、彼は再び口を開いた。


「お前の魂には、計り知れないほどの大きなエネルギーが眠っている。しかし、まだその力を完全に制御できていない。このままでは、力が暴走し、逆に己を滅ぼす可能性があるだろう。」


晃は驚きながらも、蓮道大阿闍梨の言葉に重みを感じた。「俺は…どうすればこの力をコントロールできるんですか?」


蓮道大阿闍梨は微笑を浮かべ、深い声で答えた。「修練を積むしかない。力を使うのではなく、力と一体となり、共に生きることが大切だ。力を抑え込むのではなく、自然に流れるように導かなければならない。」


彼はエレナと空に軽く頷き、晃に向かって指示を出した。「ここで修練を始めるぞ。まず、深い呼吸をし、体内のエネルギーを感じることだ。力を無理に使おうとせず、体に流し込む感覚を掴むのだ。」


晃は静かに座り、蓮道の言葉に従って呼吸を整え、内なるエネルギーに意識を集中させた。彼の体内で感じられる青白い炎は、今までとは異なる柔らかい光を放ち、少しずつ体全体に広がっていった。


「そうだ、その感覚を覚えろ…力を制御するためには、自分の内側と対話しなければならない。己を見つめ、力を恐れるのではなく、受け入れるのだ。」


晃は深く息を吐きながら、その言葉に従い、力を自分の一部として受け入れ始めた。少しずつだが、彼のエネルギーは落ち着きを取り戻し、暴走することなく体の中を循環していく感覚が広がった。


しかし、蓮道はその様子を見つめながら、眉間にわずかな緊張を見せた。「だが、時間が足りぬ…」


「時間が足りない…?」晃は集中を解き、蓮道を見つめた。


「アンドロマリウスの総攻撃が近づいている。奴は今、すべての闇の使徒を率いて一斉に動き出そうとしているのだ。修練を続ける時間が十分にあるとは限らぬ。」


エレナも不安げに蓮道を見つめた。「では、どうすれば…?」


蓮道はゆっくりと頷き、答えた。「お前たちが学ぶべきことは、この短い時間の中で限界まで修練を積むこと。そして、戦いの中でその力をさらに磨くのだ。全てを学ぶには時間がないが、今できることを全力で学ぶしかない。」


晃は深い息をつき、再び集中を始めた。アンドロマリウスとの決戦が近いことを知り、彼の胸には新たな決意が芽生えた。「どんなに時間がなくても…俺は、この力を制御してみせる。」


エレナと空もまた、緊張の中でそれぞれの力を高めるための準備を進めていた。蓮道のもとでの修練が始まり、彼らは迫り来る総攻撃に備え、限られた時間の中で全力を尽くすことを誓った。

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