決意
亜香里を失った深い悲しみと虚無感に包まれた晃に、エレナはそっと近づき、真剣な眼差しで彼に語りかけた。
「晃…あなたには、これからまだ多くのことが待っている。今のままでは、あなたの力が暴走するかもしれないわ。力をコントロールすることが必要なの。」
晃は亜香里の亡骸を見つめたまま、力なく頷いた。彼にはまだ、目の前で失ったものの大きさが消えないままであったが、エレナの言葉にはどこか説得力があり、その言葉に耳を傾けた。
「私もこの数日間、高野山にある裏密教の蓮道大阿闍梨を訪ねていたの。彼は光の戦士の一人で、私たちに協力してくれるわ。そして、闇の使徒を倒すために、あなたには力をコントロールできる術を学んでもらう必要があるの。」
「高野山へ行く…?」晃は涙を拭い、エレナの顔を見つめた。
「そう。闇の使徒との戦いはこれからも続くわ。亜香里を救えなかったことを無駄にしないためにも、力を正しく使う方法を学ばなければならない。」
「俺は…戦うしかないんだな…」
エレナは穏やかに頷き、晃の肩に手を置いた。「でも一人じゃない。私たちも一緒よ。空もね。」
空はいつもの軽口を挟まず、静かに同意した。「テレポーテーションで高野山に一気に行きたいけど、俺の精神エネルギーが尽きる可能性が高い。飛んで行くしかないんだ。」
エレナは頷きながら、晃に向き直った。「まずは、飛行の力を身につけてもらうわ。これはエネルギーを制御する一つのステップでもあるの。あなたの内に眠る力を正しく使うために、空を飛ぶことを覚えて。」
エレナは説明しながら、自身の体に光を纏い、静かに宙へ浮かび上がった。その姿はまるで天使のように穏やかで、優美だった。
「まず、集中して。力を無理に出そうとせず、自分の内なるエネルギーを感じて。力を外へ解放するのではなく、体にバランスよく流すイメージよ。」
晃はエレナの言葉を思い返し、深く息を吸い込んだ。心の中で静かに集中し、力を過剰に放出しないように、自分の内側に向けてエネルギーを巡らせていく。そして、青白い光が彼の体を包み込み、足元が少しずつ地面から離れていった。
「やった…!」
晃は少し驚きながらも、浮かび上がる感覚を楽しんでいた。
「その調子よ、晃。力をコントロールできているわ。」
エレナは微笑みながら、空もまた軽やかに浮かび上がった。「よし、みんな飛べるようになったな。高野山に向かうぜ。」
エレナ、晃、空の三人は、夜空の中を飛行しながら高野山を目指していた。星々が瞬き、冷たい風が彼らの頬を撫でた。晃の心には、失ったものへの悲しみが残っていたが、それでも前へ進むための決意が少しずつ強くなっていくのを感じていた。
「高野山に着けば、さらなる力を手に入れるための訓練が待っている。そして、闇の使徒を倒すための道が開けるわ。」エレナは晃に向かって優しく語りかけた。
「俺も、強くなって…亜香里のためにも、必ず闇の使徒を倒す。」
晃の心に新たな希望と決意が芽生え、三人は静かに高野山の山影に向かって飛び続けた。