別れ
晃は、アンドロマリウスの幻影から解放された後、急いで亜香里の元へと駆け寄った。彼女は地面に横たわっており、意識は朦朧としていた。薄く開かれた瞳は焦点が定まらず、肌は冷たく、呼吸も浅くなっていた。
「亜香里…!」
晃はその場に膝をつき、彼女の顔を覗き込んだ。亜香里の顔には苦痛が浮かび、彼女はかすれた声で口を開いた。
「晃…ごめんなさい…こんなことに…なってしまって…」
亜香里の言葉は、どこか遠くから聞こえてくるような弱々しさがあった。彼女の体は、ヴェクシスによって生体エネルギーを搾り取られた影響で限界を迎えていた。
「そんなこと言うな、大丈夫だ。俺がいるから…」
晃は亜香里の手を握りしめ、必死に声をかけた。彼の瞳には強い決意が宿り、彼女を助けたい一心だった。だが、亜香里は力なく首を振り、涙を浮かべながら呟いた。
「晃…私、ずっとあなたのことが…好きだったの。だけど、もう…私…もうダメかもしれない…」
その言葉を聞いた瞬間、晃の胸に鋭い痛みが走った。彼は思わず亜香里を強く抱きしめたが、彼女の体はどんどん冷たくなっていく。
「そんなこと言うな…!しっかりして、亜香里!お願いだ、目を閉じないで…!」
晃は必死に呼びかけたが、亜香里はゆっくりと瞳を閉じ、微かな微笑みを浮かべながら、静かに息を引き取った。
「亜香里…!亜香里…!」
晃の声は虚しく響き、彼女の命はその場で途絶えた。晃は信じられないように亜香里の顔を見つめ、彼女の冷たくなった手を握りしめたまま、涙を堪えようとしたが、それは無理だった。感情が堰を切ったように溢れ出し、彼はその場で泣き崩れた。
「どうして…どうして…こんなことに…!」
エレナと空は、その光景を目の当たりにしながら、何もできずに立ち尽くしていた。エレナは悲しげな表情を浮かべ、空も口を開けることができなかった。彼らには、亜香里を救う術がなかったのだ。
「晃…」エレナがか細い声で呼びかけたが、晃は答えず、ただ亜香里の亡骸を抱きしめ続けていた。
その場に広がる静寂と、晃の嗚咽だけが響いていた。それは、残酷な現実だった。