表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

愛情

エレナが生まれたとき、両親はすでにこの世にいなかった。事故によって命を失った両親の代わりに、彼女を育てたのは修道院のマザーだった。修道院は平穏な場所で、エレナはマザーの深い愛情に包まれながら育っていった。


しかし、この修道院には一つの秘密があった。マザーは光の使徒の一人であり、エレナが光の力を持つ特別な存在であることを知っていたのだ。そのため、修道院全体に強力な結界を張り、外界からエレナの存在が気づかれないようにしていた。闇の使徒たちがエレナの力を感じ取り、狙ってくることを常に危惧していたのである。


エレナがまだ幼い頃、ついにその恐れが現実となる日が訪れた。


ある日、結界に干渉する強大な力が感じられ、修道院を包んでいた静けさが一瞬にして崩れた。闇の使徒ヴェルクスが、結界を打ち破り、エレナを捕らえるために修道院に侵入してきたのだ。


「エレナ、怖がらないで。私が守るから。」

マザーは優しく微笑みながら、幼いエレナを強く抱きしめた。だが、その目には強い決意が宿っていた。エレナを守るためには、光の使徒としての全力を尽くさなければならないと覚悟を決めていた。


ヴェルクスは暗黒の力を操る恐ろしい存在だった。彼は修道院の中に踏み入り、マザーとエレナを見下ろしながら不気味に笑った。「ようやく見つけたぞ…その小さな娘、エレナだな。彼女の力は、我が主アンドロマリウス様に捧げるのにふさわしい。」


マザーはエレナを背後に隠し、結界の中で最後の防衛戦を張った。「エレナには指一本触れさせない…!」


激しい戦いが始まった。マザーは光の力を振り絞り、ヴェルクスに立ち向かった。修道院全体が光と闇の力で揺れ動き、次第に破壊されていった。しかし、ヴェルクスの闇の力は強大で、マザーの体力は限界に近づいていた。それでも、彼女はエレナを守るために戦い続けた。


「エレナ…私が守る…」

マザーは力を振り絞り、最後の決断を下した。彼女は自らの命を犠牲にして、ヴェルクスを道連れにしようとしたのだ。強烈な光がマザーの体から放たれ、修道院全体を包み込むほどの輝きが広がった。


しかし、ヴェルクスはその瞬間、闇の力を使ってなんとか逃げのびた。「フフフ…そう簡単には死なないさ、光の使徒よ。」


マザーの体は限界を迎え、崩れ落ちた。彼女はその場に倒れ、息を引き取る寸前だった。それでも、彼女の心配はただ一つ――エレナのことだった。


「エレナ…ごめんなさい…守りきれなくて…」

マザーはエレナを見つめ、最後の力を振り絞りながらその言葉を口にした。


その瞬間、エレナはマザーが倒れる姿を目の当たりにし、心の中で強烈な感情が爆発した。大切な人を失うという絶望と怒りが、彼女の内なる力を解放させた。


「マザー…!」


突然、エレナの体から白い炎が溢れ出し、彼女を包み込んだ。その炎は純粋で、圧倒的な力を持っていた。エレナは無意識のうちに、まだ幼いながらも、その力を発動させた。


「な、何だ…!?この力は…!」

ヴェルクスは驚愕し、逃げようとしたが、白い炎が彼を包み込み、焼き尽くし始めた。彼はもがき苦しみながら、最後の言葉を叫んだ。


「ア…アンドロマリウス様…!」


その言葉と共に、ヴェルクスは白い炎の中で消滅した。


エレナは、ただ炎に包まれたまま、マザーの元へと走り寄った。彼女はマザーを抱きしめ、その目から涙が溢れていた。


「マザー…お願い、戻ってきて…」


しかし、マザーの命はすでに尽きていた。彼女は静かに微笑みながら、エレナの頬に手を触れ、「あなたは強い子…これからも生き抜いて…」と、最後の言葉を残した。


自分の力が解放された瞬間、大切な人を守れなかった悔しさと、力を使いこなせなかった無力感が彼女の心に深く刻まれた。しかし、マザーの教えを胸に、彼女は光の使徒として生きる決意を固めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ