再開
「貴様らを葬り去ってやろう。」
アンドロマリウスはヴェクシスの体を完全に支配し、不気味な笑みを浮かべた。晃たちは一瞬のうちに状況が変わったことを悟り、身構えた。
「これは…まさか…」
晃の青白い炎が再び燃え上がる。しかし、目の前に立つ黒田は、以前とはまるで次元の違う力を纏っていた。アンドロマリウスに体を乗っ取られたヴェクシスは、圧倒的な力で彼らに襲いかかろうとしていた。
「奴を止めるためには、私たち全員の力が必要よ…!」
アンドロマリウスが姿を現すと、空気は一瞬で張り詰め、エレナの顔には驚愕が広がった。
「まさか…闇の使徒の幹部、アンドロマリウスがここに現れるなんて…!」
エレナの声を聞いた瞬間、晃の心には怒りが爆発的に湧き上がった。彼は青白い炎をさらに強く燃え上がらせ、力を込めてテレキネシスでアンドロマリウスに攻撃を仕掛けた。周囲の物体が宙に浮き、強烈な力でアンドロマリウスに向かって飛んでいく。
「お前を…絶対に許さない!」
晃の怒りが頂点に達し、そのエネルギーはますます増幅していく。しかし、その強大な力にもかかわらず、アンドロマリウスは冷静で、不敵な笑みを浮かべていた。
「力だけでは、私には勝てんよ…」
アンドロマリウスは晃の未熟さを見抜いていた。晃の力は確かに強大だが、完全にはコントロールできていない。その隙を狙い、アンドロマリウスは手を軽くかざすと、静かに精神攻撃を仕掛けた。
「見せてやろう…お前の最も弱い部分を…」
その言葉と共に、晃の視界が一瞬で暗転し、意識は遠のいていった。
次に目を開けた時、晃は子供の姿に戻っていた。そこには懐かしい景色が広がり、目の前にあったのは彼の幼少期に暮らしていた家だった。現実との区別がつかない晃は、ただ驚いたように辺りを見回す。
「ここは…どこだ…?」
突然、優しい声が聞こえてきた。
「晃、おかえり…」
振り返ると、そこには彼の両親が微笑みながら立っていた。父親と母親の姿を見た瞬間、晃は涙が止められなかった。長い間、会いたくてたまらなかった両親が、目の前にいたのだ。
「お父さん…お母さん…!」
晃はそのまま二人に飛びつき、涙を流しながら抱きしめた。両親の温かさと懐かしさが彼を包み込み、不安や恐れはすっかり消え去っていた。
「一緒にここで暮らそう、晃。もう何も心配はいらないよ…」
母親の優しい声が、晃の心を安らげた。父親も笑顔で頷き、晃はその言葉に従いたいという気持ちが溢れた。このまま、ずっと両親と幸せに暮らしていけるなら、それも悪くない――そう思い始めていた。
だが、その瞬間、遠くからエレナの声がかすかに聞こえてきた。
「晃…戻ってきて…!」
その声は弱々しかったが、確かに彼の意識に届いていた。晃は両親の顔を見つめながら、再び涙が溢れた。心の奥では、この場所が本物ではないことを理解していた。
「お父さん…お母さん…会いたかった…でも、俺は…」
晃は、両親との再会の喜びと、現実に戻るべきという葛藤の中で、苦しみ始めた。しかし、エレナの声が次第に強くなり、彼を現実へと引き戻そうとしていた。
「晃!戻ってきて!」
その声が次第に明瞭になっていくが、晃は目を閉じ、両親から離れたくない思いと戦っていた。
一方、現実の世界では、アンドロマリウスに乗っ取られたヴェクシスの肉体が限界に達し始めていた。晃を精神世界に閉じ込めることには成功したものの、アンドロマリウスの圧倒的な力にヴェクシスの体は耐えきれなかった。
「ここまでか…しかし…晃を閉じ込めた…!」
ヴェクシスは最後の力を振り絞り、言葉を残すと、血を吐いてその場に倒れ込んだ。アンドロマリウスの精神攻撃はそのまま続いていたが、ヴェクシスの肉体はついに耐えきれず、絶命した。
しかし、アンドロマリウスが仕掛けた精神攻撃は依然として晃を捉え続け、彼は精神世界で両親と共にいるままだった。晃の精神は完全に子供に戻っており、現実の世界に戻る必要など一切感じていなかった。彼は、このまま永遠に両親と一緒にいられることを信じていた。
「お父さん…お母さん…」
晃の目には涙が浮かび、幸福感に満たされていた。遠くでエレナの声がかすかに響いていたが、子供の姿に戻った晃には、その声が現実のものとして感じられず、彼の心を引き戻すことはできていなかった。