懐古
黒田が暗い部屋の中で不気味に微笑んでいた。彼の体は巨大で、脂ぎった肉が光を反射している。体重100kgを超えるその体は、不気味なオーラを放ち、教会内の空気が一層重苦しいものに感じられた。彼は信者たちの精神エネルギーを吸収し、力を蓄えていたが、その顔には何か違和感があった。
黒田の目が赤く光り、何か別の存在がそこにいるかのように視線をさまよわせた。
「闇の使徒が人間の体を宿すこと――それが私たちにとって、この地上での力を増幅させる唯一の手段だ…だが、人間の肉体に宿ることで、私たちもまた変化を遂げているのかもしれんな…」
黒田の口から漏れ出た言葉は、人間らしいものではなかった。彼の中に潜むのは、もはや完全に人間ではなく、闇の使徒の魂だった。
彼の本来の姿――精神エネルギー体である闇の使徒は、何世代にもわたって人間の肉体に受肉してきた。そして、その過程で、ただ単に精神エネルギーを吸収する存在から、人間の思考にも徐々に影響を受け始めていたのだ。
「人間どもが、愛だの、信仰だのと言っても…愚かしい。だが…」
黒田はその言葉にわずかに躊躇いを見せた。「なぜか、私の中にあるこの感情…何なのだ?彼らの思考が、私に影響を与えているというのか?」
黒田は強く頭を振り、再び冷徹な表情に戻る。彼の体を宿している闇の使徒が、かつてはただの精神エネルギーを求める存在だった。しかし、人間の体を宿ることで、彼らもまた、人間のような思考や感情に揺さぶられることがあった。
「人間の体を渡り歩いてきたが、その影響か…人間の感情が、私の中に入り込んでいる。笑わせる…!だが、無視はできぬ…この歪んだ感情もまた、我が力の一部となるのだ…」
黒田は静かに立ち上がり、教会の中央に集まる信者たちを見下ろした。彼の目には、人間としての感情が一瞬浮かび上がり、その後、闇の使徒としての冷酷さが戻った。
「人間は弱い…だが、私たちもまた、その弱さに囚われつつあるのかもしれんな。しかし、それも悪くない…」
黒田は冷たく笑い、信者たちから放たれる精神エネルギーを一層吸収し、力を高めていった。その姿は、かつての闇の使徒とは異なる進化を遂げた存在だった。彼は、精神エネルギーを吸収するだけでなく、人間の感情と共に成長し、彼自身もまた新たな段階へと進化していたのだ。
「この肉体も、もうすぐ役目を終えるだろう。しかし、その時までに、私はさらなる力を得る。人間の愚かさと欲望を、存分に利用してやる…」
黒田は再び冷たい笑みを浮かべ、目の前の信者たちに命令を下す。彼の中で渦巻く闇の使徒の力は、ただの精神エネルギーの吸収だけではなく、人間そのものの感情や弱さにも影響を受けながら、その支配力を一層強めていった。
彼の存在は、もはや完全な人間ではなく、同時に完全な闇の使徒でもなかった。その歪んだ姿は、新たな力を持った恐るべき存在となっていた。