千夏が男装して男子高へ潜入しなければならななかった件
ある日、もう9月に入ったというのに夏の暑さが全然抜けない放課後。授業を終えて学校から家族の待つ自宅へと千夏は帰ったのだ。千夏が家に帰り着いた頃にはまだ共働きの両親は仕事から帰宅しておらず、家には弟の美琴が自室にいる気配を感じるのみだった。高校一年生の美琴は男性なのだから、当然姉である千夏が通う女子高に通うわけもなく、姉とは同じ市内にはあるが別の公立高校に通っているのだ。 美琴の通うその高校は工業系の学科の履修を専門にする男子高で、構内では男子生徒しかいないのだからか、いつも「カノジョほしー、カノジョ欲しー」などと苦しげに誰や彼やに訴えているし、女体に飢えてか、少し彼の部屋を覗けばアダルト雑誌だの官能小説の文庫本だの、ネットでのアダルト系の検索履歴だのをとてつもない量、目にしてしまうことになるのであった。 彼は一足先に学校を終えて帰宅していたらしく、部屋の中からは、カチャカチャというパソコンのキイでもタッチする音が漏れてくるのであった。 千夏はいつも通り帰宅したその足のままリヴィングルームに入ると、通学鞄をソファに放り投げると細い脚を投げ出す形でソファに身を預けていたのである。




