第49話〜逆転への軌跡〜
−遊斗Side−
「ずいぶん妙な身体してるんだな」
「褒め言葉と受け取っておこう」
戦闘開始直後、俺はマシンガンを取り出し賢者ヴェスターに向けて乱射した。
当然防がれると思っていたのだが、以外にもヴェスターは両手を広げ俺の攻撃を防御無しで全て受けてみせた。
なぜ、そんな事をしたのか理解に苦しんだが、その理由は嫌でもすぐに分かることになった。
ヴェスターの体が銃弾を受けた箇所からすぐに再生していったからである。
「…へぇ、回復魔法ってやつか?」
「ははっ、敵である君に教えるはずがないだろう?君も知能に自信があるのなら、自力で答えに辿り着いてみるがいいさ」
そう言って嫌味ったらしく笑うヴェスター。
なぜだろう、こいつとは1ミリも仲良くできる気がしない。
「ならそうさせてもらうぜ、ワールドアクセス!」
俺はスキルを唱えると次の武器を取り出す。
呼び出したのは死の商人が生み出した悪魔の発明品。
つまりはダイナマイトである。
それのピンを引き抜くと俺は迷いなくヴェスターに向けて投げつける。
硬い岩面を容易に打ち砕く破壊力を持った小型の爆弾。
その威力を生身で受けたとすれば、奴はひとたまりもないだろう。
ダイナマイトはヴェスターの足に当たり、そのままコツンと音を立てて地面に落ちる。
その刹那、巨大な爆発音とともにヴェスターの身体が爆炎に包まれた。
「やったk…」
命中を確認して気分が上がっていたため、俺はフラグのようなセリフを言いそうになってしまったが、慌てて自分の口を塞ぐ。
言い切ったら絶対に、高笑いと共に無傷のヴェスターが爆煙から現れるような気がしたからだ。
だが俺の必死の抵抗も虚しく…
「ははは、酷いことするねぇ。この服、結構高いのだよ?」
高笑いをしながら、傷一つないヴェスターが服をはたきながら現れた。
「はっ、無傷かよ」
「いや、まさか。見慣れない技だったしなかなか素晴らしかったよ」
俺の悔しそうな顔を見て満足そうに笑うヴェスター。
さしずめ格付けが済んだとでも思っているのだろう。
実際、あいつの攻略法が見つかっていないので、そう思われるのも仕方ないかもしれないが…
「さて、君の攻撃も一通り受けたことだし、今度はこっちの番だね」
ヴェスターは杖を俺の方に向ける。
すると、強い光を放つ高速の球体が俺に向けて放たれる。
「ちっ!ワールドアクセス!」
俺はバリスティックシールドを呼び出し、その攻撃を盾で防いだ。のだが…
「がぁっ!!?」
球体はその大きさからは考えられないほど強い力で、盾に直撃したため、俺は盾ごと吹き飛ばされ後ろの岩壁に叩きつけられた。
「おっと、少し強く放ちすぎたかい?すまない、君がこんなにも弱いとは思わなかったんだ」
「はっ、少し足が滑っただけだっつーの…」
激痛に顔が歪みそうになったが、俺は何とか平静を装いながら悪態をついて見せる。
そんな俺の様子をみたヴェスターは余裕たっぷりに笑いながら、
「そうかい?ならもう少し数を増やしても良さそうだね」
そう言って杖を構える。
すると先ほどの光の球体が無数に現れ、俺に向けて一斉に放たれた。
まずい…!!
一撃ならバリスティックシールドで防ぐことが出来ても、その衝撃で吹き飛ばされてしまえば残りは防ぎきれない。
かと言って、全てを回避するほど機敏に動けるわけでもない。
スキルが使えるとは言っても俺は生身の人間、運動神経なんて一般の成人男性以下でしかないのだ。
となれば、スキルで何とかするしかない…
俺は必死に思考を巡らせ、この攻撃を防ぎ切る術を考える。
そして…
「こうなりゃ一か八かだっ!ワールドアクセス!!」
俺は半分やけくそ気味にスキルを発動すると俺の周囲を大きな柱のような物が包み込む。
直後大きな爆発音とともに、柱が大きく振動するのを感じた。
衝撃が止んだのを確認してスキルを解除すると、柱が消失する。
その様子を少し苛立った顔でヴェスターが見ていた。
「本当に随分変わった魔法だね、今の柱はなんだい?」
「コンクリートだよ、セメントマシマシだから強度は中々のもんだぜ?それでも、防げるかは微妙だったけどな」
「まったく、わけのわからないことを…」
これで俺もヴェスターの攻撃を防ぐ術を手に入れた。
だがこちらの攻撃が通用しない状況も変わってはない。
何とかあいつが不死であるカラクリを見破らなければ…
そういや、ヴェレストリアの方にもヴェスターの分身がいるって話だったな。
もしかして向こうが本体なんだろうか?
そう考えれば、分身であるこちらをいくら倒したところで傷一つつかないのも納得ではあるが…
だが、わざわざ敵国に。
それも聖女という、強力な存在がいる場所に自身の本体を配置するような真似をするだろうか…。
もしかすると…
1つの仮説を立てた俺はヴェスターに向き直り、銃を構える。
チャンスはわずか。
そしてかなり至難の業になるだうが、やるしかないだろう。
「期待してるぜ、聖女様」
俺はぽつりとそう呟くと、ヴェスターに向けて銃口を向けた。




