第41話〜2つの出会い〜
―フィオSide―
パーティを追放されてから一週間。
この話は当然セレスティエラ国内でもすぐに情報が行き渡り、私はセレスティエラからも永久追放となったようだ。
ここまで迅速に話が進むということは、私をパーティ及び国内から追放する動きは既定路線だったのだろう。
ヴェスターと国王陛下は蜜月な関係にあるという噂も聞いていましたし、あまり驚くような話でもない。
さて私はというと、今まで通り魔王軍の被害を受けた町や村を助けながら、一人旅を続けている。
「でも…いつまでもこれじゃダメだよね」
自由に動けるようになった事はメリットもあるけれど、1人では出来ることに限界があることも事実。
魔王討伐という大きな目標を果たすためには、同じ志を持つ仲間を集めなくては。
しばらくは前途多難な旅が続いていきそうだ。
‐誰か助けてっ!!!‐
物思いに耽っていると、遠くから叫び声が聞こえてきた。
急いで助けに向かうと、一人の女性が魔物の群れに襲われている。
「早く逃げてください!」
私はすぐに女性と魔物の間に割って入ると、剣を抜いて戦闘態勢に入る。
魔物は10匹、これくらいなら私だけでも対処ができるはず。
私は剣で魔物の攻撃をいなしつつ、1匹ずつ着実に対応していく。
しかし残り3匹となった時‐
バキンッ!!
魔物の歯を受け止めた剣が2つに折れてしまった。
「なっ!?」
補給がない中での連戦で剣はすでに限界だった。
なんとか柄とつながっている刃先だけで戦いを続けようとしたが、これでは相手に致命傷を与えることはできない。
やがて残った刃先も砕けてしまい、3匹を残したまま、私は戦う術を失った。
「はぁ…でもさっきの方が逃げる時間くらいは稼げましたよね」
最後に人を助けられて良かった。
私は武器を捨て、食われる覚悟を決め魔物に向き直る。
魔物は下品な笑みを浮かべながら近づいてくると、その爪を突き立てようと振り上げる。
私は目を瞑って最後の瞬間に備えることにした。
あれが当たれば即死だろうか?
あ、でも勇者の加護があるからすぐには死ねないのかな、痛いのはやだなぁ…
どこか他人事のようにそんな事を考えながら、魔物からの攻撃を待っていたが、数秒経っても魔物の一撃が私を襲うことはなかった。
状況が読み込めずに目を開けるとそこには、黒いローブを身に纏った少女と、燕尾服を着て見慣れない鉄の塊を手に持った少年が立っており、
先ほど私を襲おうとしていた魔物は地面に倒れていあ。
「そこの女の子、大丈夫?」
ローブを来た少女は優しい口調で尋ねる。
「え、あ、はい。私は大丈夫です…あの、お二人はその…?」
「私達はただの通りすがりよ。あ、腕怪我してるわね。ちょっと持って、治すから」
少女は残った魔物のことなど眼中にない様子で私に語りかけ、魔法で私の腕を治癒してくれる。
しかし存在を無視された魔物は怒った様子で、こちらをめがけて突進してくる。
「あの!後ろ!!」
「大丈夫よ、もう勝負はついてるわ」
‐ワールド・アクセス‐
燕尾服の少年が、何か呪文のようなものを唱えた直後…。
2体の魔物は頭から血を流し、そのまま絶命してしまった。
「リエル、お前もちょっとは戦えよ…全部俺にやらせやがって…」
「いいじゃない、細かい事言ってるとモテないわよ?」
「余計なお世話だっ!」
「あの、助けて頂きありがとうございます。なんとお礼を申し上げていいか…」
「気にしなくていいわ、目的地の途中でたまたま通りかかっただけだしね」
「その目的地というのは?」
「セレスティエラ公国って国だ、ちょっと探しものがあってな」
「え、セレスティエラですか…!?」
「お、その反応何か知ってんのか?」
まさか追放された矢先にその名前を聞くことになるとは、私が驚いた反応を見せると、少年が嬉しそうに距離を詰めて私に訪ねてくる。
「いや、その知ってはいるのですが…」
「ほんとか!ちなみにそこへの行き方とかは!?」
「い、一応存じてます、私はセレスティエラ出身なので…」
「頼む!案内してくれ!!」
私が返答した矢先に彼は頭を下げて私に道案内を求めた。
確かにセレスティエラは勇者が生まれるという関係上、魔王から真っ先に攻撃を受ける可能性が高く、非常に高度な魔法で秘匿された国。
基本的にその出身者でしか辿り着くことが出来ない場所ではあるのだが…
「すみません、セレスティエラには原則国民以外の立ち入りが認められていなのです。それに私は既に国を追放された身なので、もうあの国に近づくことは…」
「追放された…ちょっと待って。あなた名前は?」
「え、あ、申し遅れました。私はフィオ・リストレールと申します」
「フィオ…ってもしかしてあなた勇者…?」
「あ、はい。お恥ずかしながら、追放された勇者です…」
ー
ーー
ーーー
こうして、私がヴェレストリアから来た2人と初めて対面しているちょうどその頃。
もう一つ、ヴェレストリアとセレスティエラの間で奇妙な縁が生まれようとしていた。
「ふふふ、ここがヴェレストリアか」
「お待ちしておりましたヴェスター様。中で聖女アリスがお持ちです、どうぞこちらへ」
「ありがとう、聖女アリスをお目にかかれるとは。この時を本当に待ちわびたよ」
ー
ーー
ーーー
セレスティエラへ向かうものと
ヴェレストリアを訪れるもの。
それぞれの思惑が交錯し、新たな物語が紡がれていく。
そしてそれが大きな戦いの火を巻き起こす事になろうとは、この時はまだ誰も気づいてはいなかった。




