第39話〜ヴェレストリアのこれから〜
エルグラシア王国での一件から数週間がたった。
あの後俺達は無事ヴェレストリアへと戻ってきたのだが、
結局、エルグラシアから俺達への報酬はゼロ。
そればかりか魔王軍の部隊長を倒したことすら、誰にも知られることなくエルグラシアをあとにするという、実に悲しい結果となった。
まぁとはいえ、一応魔女リエルの勧誘に成功したので、最低限の成果はあったとしよう。
そのリエルについてだが、ミナ様に紹介したところヴェレストリアへの移住を快諾され、王家直属の魔導師として迎え入れられる運びとなった。
そして意外な副産物として、リエルの時間魔法は物体の修復も可能であったことから王国の復旧に貢献。
元通りにするのに莫大な金がかかると思われていた部隊長襲撃時の破損箇所が、わずか数日で新品同様に修繕された。
はからずもリエルを迎えた事で、俺達の目的であったヴェレストリア復興に少し近づいたわけである。
そんなわけで目下の課題であった被害箇所修復が完了し、少しだけ余裕が生まれた俺達は、今後のヴェレストリアの行動方針を決めるべく、話し合いを行うことになったのである。
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「お集まり頂きありがとうございます」
ヴェレストリアの執務室にて、集めた人達に礼を述べるミナ女王。
集まったメンバーは聖女有栖、アーカシア帝国部隊長イクス、王家直属魔導師リエルの3名に加えて、メイドのティアナさんと俺が呼ばれている。
「お伝えしていたとおり、集まって頂いたのはヴェレストリアの今後についてお話をしていくためです」
「ミナ様。1つよろしいですか?」
「イクスさん、どうされましたか?」
「今後の方針決定の会議となれば、重要度はかなり高いはず。僕のような部外者がいる場で決めるのはいささか危険かと思います」
イクスの言うことは最もだ。
同盟を結んでいるとはいえ、他国の人間を重要な会議に招く事は、一歩間違えれば自殺行為。
機密情報を盗んで下さいと言っているようなものである。
だが、それはもちろんミナ様も理解した上での行動だろう。
「イクスさん、お気遣いありがとうございます。ですが、この件はぜひアーカシアの代表である、あなたも交えて決めていきたいのです」
「なるほど…つまり今回の決断は少なからずアーカシアにも影響があると?」
「ない、とは言い切れません」
「…分かりました。ではお聞かせ頂きましょう」
ミナ様の答えに何かを察したのかイクスが話を促し、それに応じてミナ様が話を始めた。
「皆さんのご尽力により、ヴェレストリアはなんとか復興の兆しが出てきました。ですが、まだまだ国としては弱小と言ってよいでしょう」
ヴェレストリアの現状を淡々と話すミナ様。
確かに有栖やリエルなど優秀な人材を抱えているとはいえ、国としてはまだまだ未熟と言わざるを得ない。
「しかしそんな中で、私達は今最も魔王軍に目をつけられている存在となってしまいました」
「それは…確かにですね…」
ミナ様の言葉に気まずそうに同調する有栖。
目をつけられる存在になった、というのは俺達が2人の魔王軍部隊長を倒してしまったことを言っているのだろう。
2回とも止むを得ない理由とはいえ、結果だけ見れば俺達が魔王軍に喧嘩をふっかけているように見られても無理はない。
「魔王軍と戦ったこと自体は何も間違ってはいないと思います。しかし、今後本格的に魔王軍が私達に攻撃を仕掛けるようなことがあれば、きっとヴェレストリアはすぐに陥落してしまうことでしょう」
神妙な面持ちで話を続けるミナ様。
「つまり、魔王軍と渡り合える力をつけていきたいってこと?」
ミナ様の話の本筋を理解したリエルが、確信をついたような質問をする。
「そうですね…少なくとも魔王軍が安易に攻めて来れないだけの力を身に着けたいと考えています」
「なるほどね、それで…具体的になにかプランはあるの?」
「…リエルさんは【レーヴァテイン】という剣をご存知ですか?」
「【レーヴァテイン】…確か先代の魔王を倒したとか言う剣のこと?」
「えぇ、そして今は封印の丘にて次の所有者を待っているという伝説の剣です」
決意を秘めたような顔でそう言い放つミナ様。
その様子を見て、ここにいる全員がミナ様の考えを理解した。
「つまり、ミナ様が考えている次の目標って…」
「はい、魔王への抑止力としてその剣を入手したいと考えています」
「しかしあの剣は、今どこにあるかすら分からないはずでは…?」
ミナ様の言葉に待ったをかけるイクス。
「えぇ、ですが先日地下の書庫で見つけたのです」
地下の書庫というのは俺達が羊の魔物に襲われた際に俺達が籠城したあの部屋のことだろう。
ミナ様はそう言いながら古びた本を取り出し、1つのページを俺達に見せる。
【伝説の剣レーヴァテイン、セレスティエラの頂きに眠る】
本にはそのように記されていた。




