第3話〜少女は聖女で転生者?〜
町に鳴り響いた怒号。
どうやらこの町に魔物が攻め入ってきたらしい。
「何でこの町に魔物が…!?襲われる理由などないはずなのに…!」
そう言うとじいさんは慌てて、外に飛び出そうとする。
「おい!どこ行くんだよ!?」
「魔物達と話をするんだ!この町を襲うなんて何かの間違いだ、話せばわかってくれるはず!」
「いや、いきなり攻めてきた魔物に話が通じるわけないだろ!」
「そうかもしれん…だが私はこの町を守らなくてはならない。私はこの町の町長だからね」
そういうと、そのままじいさんは外に出て言ってしまった。
なるほど、この町の町長だから色々俺と話を付けてくれたわけか。
だが、どう考えても魔物とやらは話が通じる相手には思えない。
良いじいさんなのは分かるが、無鉄砲に魔物とやらの前に姿を見せるなど、自殺行為だ。
「そんなことも分からない奴は放っておくしかないな」
他のやつなどどうでもいい。自分の命が最優先だ。
極めて冷静にその結論に至ったが、ここであることに気がつく。
「もしあのじいさんが死んだら、仕事の話なかったことになるんじゃ…?」
そうだ、仕事を斡旋してくれる話はあくまで俺とおっさんの口約束のようなもの。
契約書を巻いたわけでもないのだから、いくらだって反故にされる可能性があるのだ。
「あぁ、クソがっ!」
町長を守るため、俺は外に飛び出した。
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結論から言うと、俺がじいさんの元にたどり着いた時には既に手遅れだった。
じいさんは血塗れの状態で横たわり、3匹の大きな黒い犬のような化け物に貪り食われている。
そして、アニメや漫画に出てくるオークのような、醜い化け物がその様子を見ながら大声を上げている。
おそらく嗤っているのだろう。
あぁ、来なければ良かった。
心底そう思ったが、化け物達が人間を炙り出すために、家に次々と火をつけている様子を見て、閉じこもっていても結果は変わらなかったことを悟る。
かくなる上は逃げるしかない。
決意して俺は慌てて走り出す。
だが、すぐに俺を認識した犬型の魔物が追いかけてくる。
ダメだ、間に合わない。
数秒後には俺の足に魔物が噛み付いていた。
「あがっ…!?」
全身を苦痛が駆け巡る。
ひと噛みで足の骨が砕けたようだ、もう走ることはおろか立つことすら出来なくなった。
その場でうずくまる俺、どうやらここまでのようだ。
犬の魔物がとどめとばかりに俺の上にのしかかり、喉元に噛み付いてこようとする。
死を覚悟した刹那、犬は俺の真上で真っ二つになっていた。
「大丈夫ですか!?」
俺の頭上で声が響く。
声の方に目を向けると、青と白のドレスのような服を身にまとう茶色の髪の少女が立っていた。
状況を見るに、どうやら彼女が助けてくれたらしい。
「何とか…」
今にも痛みで叫びだしたいところだが、何とか堪えて彼女に返事をする。
「足…酷いですね…ちょっと待ってください、治療しますから」
「治療って、そんなこと出来るのか…?」
激痛に襲われながら問いかけると、少女は優しく微笑んだ。
「大丈夫です。私、聖女ですから」
少女の身体が眩い光に包まれる。
その光を見つめるだけで、不思議と痛みが引いてくる。
治療が始まるのだろう、聖女様が耳元でそっとささやく。
「我慢してくださいね、痛みは一瞬ですから」
聖女の手には杖、ではなく漆黒の剣が握られていた。
「な、何すんだ…」
俺が抗議の声を上げるよりも早く、少女は持っていた剣を俺の足に突き立てた。
「あぁぁっ!?…って、え…?」
不思議と痛みは感じなかった。
足の感覚がなくなったのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。
その証拠にみるみる出血が止まっていき、足の傷が塞がっていった。
「嘘だろ…」
「これが私の魔法です。ごめんなさい、ちょっとびっくりしましたよね」
いたずらな笑みを浮かべる聖女。
「いや、正直ビビったけど助かったよ。でも聖女様って剣なんて使うんだな。てっきり魔法の杖とかそういう感じかと思ったのに」
「あはは!そんなゲームじゃないんだから」
「え、ゲーム?」
「あっ、やば。な、なんでもないですよ!」
取り繕うように聖女が笑う。
聞き間違いじゃないなら、この子は確かに今ゲームと言っていた。もしかすると…
思考を巡らせようとしたが、こちらの異常に気が付いた魔物たちを俺達の元に近づいてきていた。
「やばい!早く逃げねぇと!」
「あぁ、あのくらいなら大丈夫だよ」
少女は余裕たっぷりに答えると、再び漆黒の剣を構える。そして…
「いくよ、ダインスレイヴ」
一度だけ、敵を薙ぎ払うように剣で空を切る。
刹那、巨大な黒い斬撃が敵めがけて飛んでいく。
斬撃が敵に触れた次の瞬間、魔物の群れは一瞬で消し飛んでいた。
「さ、これで一件落着ですね」
思わず言葉を失っていた俺に少女が優しく微笑んだ。
今はっきりと分かった。
この少女は俺と同じ
転生者だ。