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第18話〜決死のヒット&アウェイ〜

大見栄切って出てきたは良いものの、俺の戦闘は実にシンプルなものだった。


マシンガンや散弾銃で牽制しつつ、屋敷中を逃げ回りながら仕掛けた地雷や手榴弾で地味に相手を削っていく。

だが、さすがは部隊長などと呼ばれているだけあり、その攻撃はほとんど効いていないようだった。

むしろ走り回っている俺のほうがそろそろ限界を感じているくらいである。


挿絵(By みてみん)


「ちょろちょろ逃げ回りおって、いい加減無意味だとわからんのか?」


羊顔の魔物と対峙して30分ほどが経つが、ひたすらヒット&アウェーだけを繰り返す俺の攻撃に明らかに羊の魔物は苛立っているようだ。


「無意味じゃねぇ、よ。それにお前の方こそいい加減俺に攻撃の1つでも当ててみたらどうだ?」


「…良いだろう、そこまで言うなら少し本気を出してやろう」


俺の煽りに反応した羊の魔物は今度は背中から翼を生やしてみせた。

そしてそのまま高速で俺に向かってくる。

まずいこれでは…


「やはりこの地面にも爆発物を仕込んでいたようだな、もはや無意味だが」


「はっ、うるせーよ!」


手に持ったマシンガンで何とか牽制を試みるが、空を飛ぶ相手に的を絞れずほとんど意味をなさない。


そのまま距離を詰められ、鉤爪が俺の身体を切り裂いた。


「あがぁぁぁっ!」


腕やマシンガンでガードしたことで、何とか心臓などの臓器は守ることが出来たが、代わりに武器は大破し、腕も骨が露出するほど深く切り裂かれた。


泣き出しそうになるほどの痛みが俺を襲うが、そんなものに構っている暇はない。

すぐに追撃が来るのだ、急いで対策を考えなければ殺される。


全力で頭をフル回転させ、ある作戦を思いつく。

通用するか分からないが、どのみちこのままだと殺されるだけだ。

俺は迷わずそれを決行することにした。


「ワールド・アクセス!」


瞬間、俺の手に小型の爆弾のようなものが現れる。


「ふん、またさっきの爆発物か。それも今の俺には当たらんぞ」


羊の魔物は空中で小刻みに方向転換を入れながら、徐々に近づいてくる。

確かにあの高速移動に対して手榴弾を当てるなど至難の業だろう。だが


「残念ながらこいつは手榴弾じゃねぇよ…!」


相手がいる方向めがけてそれを放り投げる。

刹那、それは目が潰れるほど眩い光を放ち炸裂した。

羊の魔物もこの不意打ちは予想していなかったようで、視覚を失いそのまま屋敷の壁に激突した。


「よし…今のうちに」


あいつが回復したらすぐに追いつかれるだろうが、何とか次の準備の時間だけ稼げれば良い。

そう思いながら俺は急いでその場を立ち去った。


ーー

ーーー


全力疾走で階段を駆け上り、何とか屋敷の最上階の渡り廊下までやってきた。

そこでやつを迎え撃つ準備をする。


「ワールド・アクセス!」


スキルを唱え今度は筒状の大砲のような形状の武器を取り出す。

そうこうしているうちに俺を追ってきた羊の魔物が最上階にたどり着き、まっすぐこちらに飛んでくる。


「もう逃げられんぞ…このままぶち殺してやる…!」


激昂した魔物が急速に俺との距離を詰めてきたが、そこで俺は渾身の一撃、ロケットランチャーを放つ。

魔物はそれを避けようとするが、廊下は狭く満足な移動距離を確保できない。

さらにロケットランチャーの弾は…


「追尾式なんだな、これが」


ロケットランチャーはそのまま見事魔物に命中した。 

大きな爆発音と共に魔物は廊下の先まで吹き飛ばされる。


「ぐぅっっ」


「は、どうした?少しは効いたかよ」


さすがにダメージは入ったようで、魔物が苦しそうな声を上げる。

とはいえ相手がもし人間だったら、肉片すら残らないような攻撃のはずだが、そうはならない辺りいかに相手が規格外なのかが分かる。


「クソが…殺してやる」


今の一撃によって、本気で相手がキレたようだ。

そして、想像しうる最高火力のロケット・ランチャーで仕留められなかった時点で、完全に俺があいつを倒せる方法はなくなった。

だが…


「そろそろ、だな」


「そろそろ?それはお前の命が尽きるまでの時間の話か?」


「いやぁ、まさか」


魔物の煽りに俺は笑って答える。


「むしろその逆だよ、羊野郎」


瞬間、天井が切り裂かれ魔物の頭上から何かが現れる。

そしてそれは落下の勢いのまま、漆黒の剣で魔物の片翼を切り裂いてみせた。


「やっと来たか…遅ぇよ、有栖」


そう現れたのは、漆黒の剣を持つこの国最強の少女。




聖女アリスだった。



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