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毎朝、二人でワイワイと言い合いながら服と髪型を決めるのだが、今朝は違った。それぞれが無言のまま、同じように腕組みをしてクローゼットの中を睨んでいた。
ママは、そんな二人を可笑そうに見ながらも、特に何も言ってこない。今日は、お休みで、支度を急かす必要がないからだ。
服とにらめっこをしていた二人だったが、しばらくすると腕組みをといた。
「ミキ、服は決まった?」
「まぁね。ミカは?」
「わたしも決まった」
二人は、せーので服を取り出した。
ミカは、おへそがチラリと見えそうなボーダーのTシャツに、赤のベルトが可愛い短パン。
ミキは、レースのブラウスに、水色の膝丈フレアスカート。
まるで真逆のコーディネートになったことに心底驚いたのか、二人は、お互いの選んだ服をパチクリと眺めた後、とりあえず、服を着た。
いつも同じ物を身につけているので、互いが全く違う格好をしているということが不思議で、それぞれ自身の服であるのに、どこか着心地が悪く、シャツの裾を引っ張ってみたり、スカートの裾を払ってみたり、なんだか落ち着かない。
なんとなくモジモジとしながら、二人は並んで鏡の前に立つと、揃ってヘアセットを始めた。
ミカは、高い位置でポニーテールにした髪をくるっと纏めてお団子に。
ミキは、二つに分けた髪を編みこみ編み込み三つ編みおさげに。
鏡の中で、元気なスポーツ少女と、お淑やかな文学少女がエヘヘと、少し照れくさそうに笑っていた。
支度を終えて、朝食を食べるために、ママのところへ行けば、ママも驚いたように、目をパチクリとさせる。
「あら、あなたたち。今日はお揃いじゃないのね」
「うん。ちょっとね」
「理由は聞かないで」
ママの前でもモジモジとする双子が可笑しくて、ママはクスリと笑う。
「今日はとびきり可愛いわね、二人とも。ミカのお団子も、ミキの三つ編みも、とっても似合ってる」
ニコニコと手放しで褒めるママ。せっかくママが間違えずに二人の名前を呼んだのに、そんな事など気が付かないほどに、二人はモジモジとしながら、朝食を終えた。
身支度を整え、お揃いの小さなポシェットを下げた二人を、ママはニコニコ顔で、いってらっしゃいと送り出した。
手を繋いで歩いていると、近所のおばさんたちが、びっくり顔をむけてくる。
「あら。ミカちゃん……と、……ミキちゃんかい? 今日は二人お揃いじゃないんだね?」
そんなおばさんに、ミカは「うん」と言い、ミキは「えへへ」と笑う。