ハーピーに変身した女
私は、愚者のダンジョンに住む魔物娘の1人ハーピーのハル。
以前は、他の魔物娘、同様に愚者のダンジョンに探査に訪れた女冒険者の1人だった。
他の魔物娘とは、異なり私は、自ら望んで魔物娘へと生まれ変わった。
私は幼い頃から空ばかり見上げている子供だった。
鳥の様に広い空を何の束縛も無く自由に飛び回るのが、私の夢だった。
空を飛ぶ魔法は、浮遊魔法があるが、鳥の様に自由に飛び回る事は、不可能で術者を1~2m浮遊させる程度の役に立たない魔法だ。
人が空を飛ぶ道具も多数考案されたが、浮遊魔法以上に役に立たない代物で、飛行道具の発明者が、自ら発明した飛行道具で空を飛ぼうとして、怪我や死亡する事故が多数発生した。
人々は鳥の様に空を飛ぶ事を諦め、空を飛ぶ事を夢見る事は、〇〇の代名詞となった。
しかし私は、諦めなかった。
冒険者になった私は、空を飛ぶ魔道具伝説のイカロンの翼を求め各地のダンジョンの探査を3人の仲間共に探査を続けた。
ダンジョンの探査では、貴重なアイテムやポーションや金銀財宝等は、手に入れる事は出来たが、私が探し求めるイカロンの翼は私達パーティーが探査したダンジョンでは、手に入れることは出来なかった。
しかし、私には最後の希望があった。
他のダンジョンでは手に入れる事が出来ない、貴重な魔法のアイテムが、入手出来る愚者のダンジョン。
愚者のダンジョンでは、イカロンの翼が手に入るかも知れない。
知られる限りでは、最大のダンジョン、罠も無くダンジョン内の魔物娘も冒険者襲う事の無い安全なダンジョン。
探査に訪れた女冒険者が、行方不明になる愚者のダンジョン。
私の属する白ユリ団が、今迄、愚者のダンジョンの探査に行かなかったのは、白ユリ団が女冒険者で結成されたパーティーだっただからだ。
※ ※ ※
2人の魔物娘、ラミアとハーピーに先導され我々白ユリ団は、ダンジョンの最深部大神殿にたどり着いた。
我々の目の前には美しい大魔王が最後通告を告げている。
「我が眷属と成り、愚者のダンジョンで生きながらえるか、人として誇り高き死を選ぶか? 又は吾輩のコレクションとして幻影水晶に封じられるか ?」
「貴方に見も心も捧げますから、私をハーピーに、空を飛ぶ事が出来るハーピーに変身さしてください」
「女よお前の望みを叶えてハーピーへ変身させてやろう」
大魔王の魔力が私に注がれ、私の体と魂は混沌へ還元されハーピーへ空を飛ぶ事の出来る魔物娘へと生まれ変わった。
大魔王様に可愛がって貰う時や、他の魔物娘と戯れ愛し合う時も素晴らしい喜びの時間だが、自由自在に空を飛ぶ時が一番の喜びだ。
ダンジョンの仮想現実の大空を飛び回る快感は人間の女だった時には、決して味わえぬ喜びだ。
翼が大気を切り裂き、素肌に風の感触を感じて羽ばたく。
急上昇しては、錐もみしながらの急降下。
仲間とのハービーやサキュバスと空中で戯れ愛し合う。
重力縛られた哀れな生き物、人間の女だった時には決して味わえぬ喜びだ。
今日も私は、飛ぶ。
光のカーテンが、変幻自在な色彩に変化する大神殿を仮想現実の大空を。
そして時には愚者のダンジョンを抜け出して外界の大空を。
力強く羽ばたき、遥かな空の高みを目指して
私は空飛ぶ喜びに目覚めた、ハーピーのハル。
人間の女であることを捨て去り自らの意思で魔物娘、ハーピーへ変身を望んだ女、ハル。
幼き頃の夢を叶えた、魔物娘のハーピーのハル。
魔物娘から人間の女には決して戻ることは出来ない。
私は後悔はしていない。
後悔よりも空を飛ぶことの出来る喜びの方が、数千倍、数万倍勝る。
重力に縛り付けられた哀れな人間の女に戻ることなど考えられない。
何時か私も伝説の魔導士イカロンのように、太陽に近づきすぎて燃え尽きてしまうかも知れない。
かつての恋人達の運命は私は知らない。
リーダーのナツキの姿は、アルラウネの花園で見かけた気がするが。・・・
愚者のダンジョンでは新入りの魔物娘が、増えることは、よくある出来事なので誰も気にすることはない。
今日も、又、アラクネに導かれ女性冒険者のパーティーが、大神殿にやってきたようだ。
運命の選択を迫られることも知らずに。・・・