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異世界旅行記  作者: 地球食いてぇ!
3/3

俺たちの仕事

才能とかがあっても、適応力ってのがないとだめだと思う。

スタートダッシュが、一番大事。

第6-1章「実践」

周りにギルドメンバーの観客がいる中、俺の目の前にはキラがいた。今からこいつと戦うのか…痛いのは嫌なんだがな。しかし今更何を言ってももう遅い。今にも試合は始まろうとしている。

「さ、さっさと始めようぜ!」

「手加減してくれよ?こちとらビギナーオブビギナーなんだ」

さて。俺は魔法については何も知らないが…さっき試したあれが魔法らしい。そうなると…あれは設置して、それから起爆する。まるでC4だな。というか怖いのはこの魔法とかいう超常現象的なものを目の当たりにして案外冷静を保つことが出来ている自分だ。

この前は適当なことを言ったが。パニックになりすぎて一周回って逆に冷静、というものは本当に存在しているのかもしれない。感情のオーバーフロー、今知ったところでなんだという感じだが。と、キラが木剣を持っているのに気付いた。

「おい、俺丸腰だぜ?これは不利じゃあないのか?」

「おお、そうだったな…持ってきてやってくれよ!」

キラはすぐに俺の分も持ってきてくれた。流石にそこまで卑怯ではないようだ。

「では、準備はいいな?…開始!」

マルカの合図とともに、キラが飛び掛かってくる。俺は咄嗟に木剣で受けるが…重い!

流石に剣道はおろかチャンバラすらやったことがない俺は木剣であろうとも扱い方など分かるはずもない。よくよく考えてみればいきなり実戦練習なんて馬鹿げた話だ、畜生め。俺は一度距離を取る。

流石に分が悪すぎる。こっちは魔法がどんなものか分かってもおらず経験もない。明らかに不利だ。はあ、手が痛い。変な受け方をしたのか俺の力不足か知らないが手のひらが痛い。これはすぐに決着がつくぞ。今更だがなんで俺がやることになったのだ。不運だ。

だがキラも俺が初めてであることを察したか、俺が距離を取ってからは攻撃してこずにこちらを見ている。

「がんばれー!アース!」

「落ち着いていけー!」

応援も今はうるさく聞こえる。今は集中したいんだ、考えろ、俺はどうすればいい?もうめんどくさくなってきたから適当にいい感じに負ける感じでいいか?うーん…それだと周りから何言われるか分かったもんじゃあないな。あいつらにも怒られたことあるし。さらにめんどくさくなるのは避けたい。

とりあえず設置するんなら罠として使える。それを切り札(ジョーカー)にするしかない。俺はキラに突っ込んでいく。

「お、来たか…さあ、見せてくれよお前の力!」

キラが剣を俺に振るうが、俺は頭を思いっきり下げて剣を避ける。そして頭を下げたと同時に地面にさっきと同じ要領で魔法を置いた。奇妙なことだが、感覚でできるから設置は案外スムーズにいった。そしてキラの後ろに回ったところで体制を立て直し、剣を振る。しかしキラも反応してくる。

カンッ!

木剣が打つ音が響く。俺とキラは鍔迫り合いのような感じになる。もちろん俺の方がパワー負けしているから俺が押される。手が痛い。しかしグッと我慢し、後ろにそろりそろりと後ずさりすることで何とか耐える。

「…さっき設置したのは分かってるぜ?さすがにバレバレだ」

バレてるか…!だが関係ない!俺は鍔迫り合いの最中、思いっきり足でキラの腹辺りを蹴とばす。

「ぐえっ!」

キラは吹っ飛ばしたが、すぐに体制を立て直した。しかしさっき設置したところまで押し込んだ!俺は右手でスイッチを押すように起爆する。

カチリ

と心の中でスイッチを押した。そしてキラの足元が見事に爆発した。絶対罠としての使い方ではないな。

「しまっ…!」

バァン!

モクモクと砂埃が立つ。砂埃が晴れたが…キラはピンピンしていた。

「ふぅー…あっぶね…」

「そこまで!」

マルカの合図、やっと終わったか。うーわ、手の皮がむけてやがるし、赤いし。最悪だよ。すると、マルカは俺の方へ来た。

「なかなか筋がいいな。キラも手加減していたとはいえ、一発入れるとは」

何が筋がいいだ。控えめに言って死ぬかと思ったわ。畜生め。

「アース!大丈夫?」

「大丈夫ではないかもな」

「それを言えるんだったら、大丈夫かもな」

うるせ。

「ま、まだまだ成長の余地はありそうなのは分かった。さ、お前らも訓練に加われ。お前らも続きだ」

「はーい」

なんだ、結局実戦は俺だけか?本当に損した気分だ。


第6-2章「訓練」

俺たちはあの後、マルカに訓練してもらうことになった。

「さて…お前ら、魔法の仕組みは知ってるな?」

「え…いや…」

「…まさか、知らないで使ってたのか?」

仕組みなんてあるのか。やはり知らないことがたくさんあるな。

「あー…記憶喪失っつっても色々複雑なんだな…知らないのに使ってるとは、まあいい、魔法ってのは…」

『魔法』

生まれた人間は体内にある魔力を使い、さまざまな魔法を使うことが出来る。

魔法は戦闘だけではなく、日常生活にも使われている。

使える魔法は練習すればだれでも使えるようになる「共通魔法」と、個人にしかない「固有魔法」というものがある。

「固有魔法」は誰にでも使えるわけではなく、その人しか持っていない唯一の魔法。人によって特性や威力などが変わってくる。似たようなものはあっても全く同じものはないと言われている。

「…と、いう感じだな。お前がさっき使った爆発も、固有魔法だ」

「あれが?」

「ああ。固有魔法は一人ひとり違うものだからな。だから自分で名前を付けたり、自分なりの使い方をしなくちゃなんねえ」

名前?そんなものまで考えなくちゃあならんのか。だが名前は大事だ。俺はRPGで最初に適当な名前を付けて苦労してクリアした後にエンディングで「ああああ」とか流れるのが嫌なタイプだ。そもそもあれはゲームの中だから許されるのであって現実で使うものの名前が適当だと馬鹿にされかねん。

名前は場合によっては永遠に残るのだ。適当ではいけない。なにか意味がないとな。

「ともかく、今は自分の固有魔法を理解することからはじめるといい。自分の力を理解しないと強くはなれんからな」

「え、あの、固有魔法ってどうやったら決まるとかあるんですか?」

「ん?そうだなぁ、俺はあまり魔法には詳しくないんだが…自分の中にあるイメージが関係してるとかなんとか…」

イメージ?俺の固有魔法…設置して、スイッチ押して、爆破?…ああ、そういえばそんなキャラが出てくるマンガ読んだな。

「へ、へぇ…」

「じゃあ、頑張ってくれ。俺はあいつらの方を見てくるからな」

そう言ってマルカはキラたちの方へ行ってしまった。

「じゃあ…」

「やってみるか」

…とりあえず、やってみるか。


第6-3章「理解」

俺たちは一度バラバラに離れ、各自で色々試してみることにした。さて俺は…

もう一度、地面に設置してみる。一応、心の中で「爆発しろ!」とか「起動!」とか思ってみたがうんともすんとも言わない。さっきのように、右手でスイッチを押すように指を動かす。

ドカン!

と、爆発した。起爆は右手で行うらしい。これが固有魔法か。わざわざ手でやらなければいけないとは。一人ひとり違う特性があるとは聞かされたが思ったより複雑らしい。一応左手でもやってみた。

ドカン!

ふむ。左手でもできるのか。そういえば固有魔法には自分だけの名前を付けるとか言っていたな。…まあ、「爆弾」でいいだろ。…断じて、適当ではない。名前には分かりやすさも大事だからな。

今度はどこに設置できるかだが…地面にしか設置できないわけではないだろう。そうだと願いたい。俺はその辺の小さめの拳サイズの石を拾い上げ、爆弾を設置する。…お、一応くっつくみたいだな。俺は石を放り投げ、起爆。

ドカン!

と、ちゃんと爆発した。爆発した石は粉々だ。この調子じゃあどんなものにもくっつけれそうだな。…生き物にもくっつけられんのかな。まあ今はやめておこう。けが人が出る。

しかしこの爆弾…完全手動ともなるとなかなかめんどくさいぞ。設置型ってだけでも割とめんどくさいのに、なんかこう…時限式とか感知型とかにできんのか?爆弾と言えばそういう感じだと思うのだが。

ふむ、できるか?試してみよう。俺は爆弾を設置しながら…「この爆弾は3秒後に爆発する」なんて心の中で言った。で、急いで離れる。3…2…1…

ドカン!

…あ、できたわ。てことは…?今度は「この爆弾は何かが近くを通った時爆発する」と心の中で言って爆弾設置。少し離れて、その辺の小石を爆弾の近くへ放り投げる。

ドカン!

…なんだ、できるじゃあないか。よしよし、なかなか汎用性が高いことが分かったぞ。…まあ、正面切っての戦闘は難しそうだが。

そうだ。このギルドとかいうところの人たちはあの黒怪と戦っていると言っていた。そうなると、最低限自分の身を守る手段を身につけなければいけない。あの時追いかけられて分かった、絶対生身では死ぬ。戦闘も起こる。前世でも高2で死ぬという短い人生だったのだ。せっかくのこの命、自分で守らねば。

「にしても…なかなか荒らしたな」

思わず独り言が漏れてしまった。俺が試したせいで、近くは穴ぼこだらけになっていた。


異世界TIPS

アースの固有魔法

設置型の魔法。設置してから自分で起爆する手動型、何かが近くを通ると起爆する感知型、一定時間が経つと起爆する時限式の3つの爆弾を使いこなすことが出来る。

ほかにも何か使い方がある…?


第6-4章「とっておき」

「よう、頑張ってるな」

マルカが来た。トーヤとシンを連れている。呼ばれてきたのだろう。

「…次はな、お前らにとても大事なことを教える」

…さっきとは雰囲気が違うな。

「まず…お前ら、このギルドに来たからにはあの黒怪と戦う覚悟はあるんだろう?」

「…まあ、そんな気はしてました」

「町を守ってるって言ってたしね」

まあ、あんな奴がうじゃうじゃいる世界で平和に落ち着いた生活が送れるわけがない。面倒くさいのは好きじゃあないが、怯えて暮らすよりはいい。前世より危険の多い世界なら自衛手段を身に着けられるのだからそれもいいだろう。

もちろん、特に何もしない怠惰な生活が俺にとって一番なのだが。

「…なら、お前らに大事なことを教えておこう。黒怪についてだ。あいつらは醜い姿をしているだけでなく、身体能力が俺たち人間よりもはるかに高い。つまり、普通にやっても太刀打ちできないんだ」

「じゃあ、どうやって戦ってるんですか?町を守ってるって言ってましたし、僕たちの前で黒怪を倒したのも見ました。対抗手段がないわけではないんでしょう?」

「なかなか鋭いな」

こいつ頭はいいからな。

「ある道具を使っている。これだ」

そう言うと、マルカは懐から手のひらくらいの大きさの棒状ものを取り出した。なんだそれ?

「…注射器…?」

…確かに、よく見ると針がついている。良く分かったな。

「それが道具、ですか?」

「こいつは『魔力増強針(まりょくぞうきょうしん)』…と呼ばれるものだ。黒怪(あいつら)に対抗するために開発されたものだ」

「えーと…どういったものなんですか?」

「名前のまんまだ。自分の魔力を跳ね上げることが出来る。これは2倍だな」

「え?2倍?」

他もあるってことか。

「ああ。2倍、3倍、5倍、7倍、10倍だな」

なんだそれ、なんか危なくないだろうな?

「なんだが、欠点もある。こいつを使いこなすには、素の自分の体の強さと、魔力の質が関係してくる体は鍛えりゃ何とかなるんだが魔力の質は生まれた時に決まるもんだからどうにもならん。

で、欠点てのはな…こいつには『反動』があるんだよ」

「は、反動?」

「こいつを使った後、使いこなせる体ではなかった時…体が動かなくなる」

やっぱり危ないじゃあねぇか。

「ギルドに所属している奴らは全員訓練を受けてるから最低でも2倍は全員使いこなせる。ただ訓練を受けていない一般人がこれを打った場合で考えると…大体使った後10分は体が全く動かなくなるな。ちなみに、効果が強いほど、反動がでかいぞ」

「そ、それは…なんか怖いですね」

「だが、使いこなせればあいつらと渡り合える。戦闘中、ずっと魔力が強くなったままでいられる」

諸刃の剣ってことか。危険だが、使わなければ戦闘がままならないということか。

「ちなみに、自分の身の丈に合わないものを使った場合は?」

「最初こそ強くはなるが、どんどん効力が落ちていく。抜いてないのに体が動かなくなったりもするし、反動もでかい。口も目も動かなくなることもある。だから、扱える効力の針を渡しているんだ」

「へ、へぇ…」

「まぁ、もちろんさっき言った通り、2倍は使えるようになってもらわないとな。しっかり訓練励むんだぞ」

うぇ。疲れることはあまりしたくはないんですが。…いや、前世の俺が弱すぎただけか。

(なんか、怖いね、危なそうだし…)

(でも、使わないと何もできないんだろ?使いこなせさえすれば反動とかいうのもなさそうだし)

まぁ、あれだろう。今の俺達には使うしか選択肢がない。…訓練、頑張りますか。


異世界TIPS

魔力増強針

その名の通り、打ったものの魔力を上げるもの。体の中のすべての魔力が強化されるため、魔法の威力だけでなく身体能力も上がり、体の様々な機能が上がる。

種類は2倍、3倍、5倍、7倍、10倍。反動があり、使った後に体が動かなくなる。

素の体の強さと魔力の質で反動が決まる。鍛えれば反動を弱め、最終的にはほぼ反動をなくすことが出来る。

ちなみに針が効果のある部分であり、体の中に何かを入れているわけではない。

打ってから抜くまで効果は続くが、体に合っていないとだんだん効力が下がっていき、反動の効果が表れてくる。


第7-1章「いよいよ戦闘」

1週間後。あれから訓練ばかりだった。体の方もかなり鍛えたし、共有魔法の方もいくつか覚えた。ちなみに基礎的な魔法は俺の固有魔法とシナジーがなさそうだったので防御魔法以外は真面目にやってはいない。代わりに割とマイナーそうなものが合いそうだったのでそっちを重点的にやった。自主練もやった。前世の俺では考えられないことだ。ちなみに2倍針は俺たち3人とも使えるようになった。大変だったよ。

とりあえず最初は何かいろいろとシナジーがありそうなものを見つけて合わせると強そうなものを探す。ゲーマーだとこういうことが身についている。おお、哀しきかな。

「お前ら!今回は城壁の外だ!近くに集団の黒怪どもが来ているらしい!そいつを俺たちで片付ける!いいな!」

「はい!」

うん?今回は実戦か。しかし実際にあいつらと戦うとなると…緊張するな。

(ね、ねぇ…じ、実際に戦うって…この前の化け物と?)

(そう…らしいな)

(えぇ…僕怖いよ…)

1週間たったがかなり強く覚えている。あんなすごい剣幕で追っかけてきたからな。だが、今回は違う。俺は力を身に着けた。対抗できる力を。だから何とかなる…と信じたい。

うんまあ。なんとかなるだろ。

「さーて、頑張りますかね」

「ん、そうだね」

「ええ…?怖くないの?」

俺たちギルドメンバー…と言っても町の方には別の問題が起こった時のために、外に来ているのは俺たち三人、キラ、マルカだ。基本的に少数精鋭らしい。実戦を知っておくのも大切だとか言って隊長自ら来てくれたのは頼もしいな。しかし、ここでもキラが連れられているとは。よほど信用されているのだろうか。

で、着いたのは森だった。それも大き目の。

「このシレビ森に黒怪が発生しているらしい。残らずせん滅するぞ!」

「了解!」

「り、了解!」

「よし。数は…情報によると、大体30ほどらしい。あまり多くはない、やるぞ!」

そう言って隊長は先陣きって森の中に入る。俺たちも置いて行かれないようにしなければ。

しかし数まで分かるとは。なかなか魔法の力というのも便利なものだ。科学とはまた違った面白さがあるな。別に理系でも文系でもないんだが。俺たちも森の中に入る…

ドォン! ズバァッ! ドガァン!

「おい、そっち大丈夫か!」

「ちょ、こっちヤバそう!」

「オーケー、今行く!」

何ということだ。よもやこんなにも早くはぐれてしまうとは。流石にベテラン二人についてはいけなかったよ。そしてこの状況。割とうじゃうじゃいる。五体くらいがいきなり襲い掛かってきて、割とピンチだ。俺は入り組んでいる森の中、木々に感知型爆弾を仕掛けて攻撃。二人を巻き込んではまずいので少し離れたところで逃げ回っている。武器も短めの片手剣と盾なので取り回しもいい。

トーヤはシンを守りつつ、攻撃している。木々を利用して飛び回り、避けながら黒怪たちを斬っている。両手に剣。双剣をトーヤは使っているらしい。

シンは木を遮蔽物に隠れながら、トーヤが木を引いてくれている所に魔法を打っている。武器が杖なこともあり、あいつの固有魔法はおそらく飛び道具系の魔法満載なのだろう。

見た目がこうも人間離れしていると、斬る時のためらいというのは意外にもすぐ薄れ、しっかり攻撃しているつもりだが、なかなか倒れない。

「このままやってたら他の場所からも来るんじゃない!?」

「確かに、ジリ貧ってやつだよ!」

「さっさと決めないとヤバいってこったろ!一気に押し込むぞ!」

俺は訓練通り、二倍針を取り出し、体に思い切り刺す!

ドスッ!と刺さり、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

「っし…!」

痛くはない。俺は目の前の黒怪を思い切り右手で突き飛ばす、と同時に爆弾もくっつける。突き飛ばされた黒怪は後ろにいたもう一体の黒怪にぶつかる。それを見た俺はすかさず起爆!

ドッガァン!

と、さっきから使っていた爆弾とは比べ物にならないくらいの爆発が起こり、二体の黒怪を包み込む。しかしやはり硬い。まだ倒れてはいない。そしてこの魔法が生きている者にもくっつくことが分かった。

「ぐがああああああああああああ!!!!」

叫びながら突進してくる黒怪。しかし突進してくるルートには…さっき木にくっつけた感知型爆弾が爆発する。

「げあっ!?」

針を刺していないときに設置したものだったから、威力はそこまでだったが怯ませることはできた。ひるんだ隙に俺は勢いよく突進。スピードもさっきと比べて上がっているのが見える。俺の剣は見事に黒怪の喉元に貫通するほどに刺さった。そして近くにいた黒怪を右手の盾で殴りつける。

怯んでいるうちに右手も使って左で持っていた剣を引き抜く。黒い液体がどろりと流れる。そして使っていた右手で爆弾を刺した方の黒怪にくっつけて殴った方に突き飛ばして、俺は起爆。

「ファイア!」ドガァン!

…砂埃が晴れ、見てみると、黒怪は二体とも動かなくなっていた。多分力尽きたのだろう。自分でもよく二対一を制したものだ。


第7-2章「いよいよ戦闘②」

アースは…少し離れてるな。二体相手にしてるのか。流石だ。ともかく、俺達で三体なんとかしなきゃな。

トーヤとシンの前には三体いた。あまりダメージを与えられてはいなかった。やはり、針を刺して強化しなければ、人間は黒怪に太刀打ちできないのだ。

「よし!やるぞ!」

「う、うん!」

トーヤとシンは同時に二倍針を体に突き刺す。二人の鼓動はドクンドクンと早くなり始めた。

「ああああああああああ!!!」

「うがあああああああああああああ!!!」

黒怪が二体突進してくる。そして一体、トーヤが受け止めると同時に、シンが氷の魔法を放ち、もう一体の足元を一瞬で凍らせた。

「おっ…らぁ!」

トーヤの双剣が黒怪の首筋を掻き切る。黒い液体を流しながら一体が倒れた。

「ぐらああああああ!!」

足元を凍らされて動けなくなっている黒怪が叫びながら腕を振り回しているが、動けていないのでトーヤには当たらない。そこでシンがもう一度氷の魔法を放つ。今度は頭に命中し、黒怪の頭から肩辺りまでが丸々凍った。

「…!!………!!!…………」

黒怪はしばらく手足をじたばたさせていたが次第に動かなくなった。もう一体は窒息した。

「ナイスだ、シン」

「うん。トーヤもね」

ただ…なんだあいつ?攻めてこないな。

一体だけ、動かずにじっとこちらを見てくる黒怪がいた。他の黒怪が攻撃している時も、動いていなかった。

「なんだ…?まぁ、来ないのならこっちから行くぜ!」

トーヤが突進すると、黒怪はひょいとジャンプして軽く避けてしまった。

「食らえッ!」

シンが魔法を放っても、黒怪はひょいひょい避けてしまう。全然当たらず、あまりにも軽々避けられてしまうため、トーヤはだんだんとイラつき始めていた。

「こんのッ…大人しく、しろッ!!」

トーヤが思い切り剣を振るが、これも避けられる。しかし、これを外したせいでトーヤの体制が大きく崩れる。黒怪はそこを狙った。

「トーヤ!」

「ぐあぁっ!」

シンが魔法を放ったが、トーヤは黒怪の攻撃を受けてしまった。そしてシンが放った魔法もまた避けられる。

「だ、大丈夫?」

「あ、ああ…シンのおかげで浅めで済んだらしい…いてて」

ちくしょう…俺としたことが冷静さを欠いちまった…もっと冷静になれ…相手の思うつぼだ…考えろ…あいつを倒す方法を…

黒怪はまたも攻撃する様子はなく、こちらの様子をうかがっている。黒怪の中にも個体差があるのか…?

と、その時。離れたところでドガァン!と大きな爆発が起こった。

「爆発?…!」

「で、どうするの?」

「右だ。右に追い込もう。そうすれば何とかなるはずだ」

「右?…分かった!」

アースのいる方向に行けば…!

シンは魔法を黒怪の左側に打ち込む。当たるか当たらないかのギリギリを正確に打ち込む。そして黒怪は右へと飛んで避ける。そのまま連射して追い込んでいく。

トーヤは正面から牽制し、徐々にアースのいた方向へ黒怪は移動していく。そしてアースが戦っていた場所まで着たとたん、

ドカン!とアースが木に着けながら戦っていた感知型爆弾が起動。完全に意識外の攻撃だったのか、そこまで大きなダメージではないが、黒怪は大きくよろめく。

「ぐあっ!?」

「今だ!」

トーヤはすかさず突っ込み、黒怪の懐まで潜り込む。針で動きとスピードが上がっているため、黒怪は一瞬で切り刻まれた。

「がぁ…あ…」

黒怪は倒れ、動かなくなった。

「やった…」

「やったね。流石トーヤ!」

危なっかしかったが。勝ったぞ!


第7-3章「不穏な雰囲気」

「なんだ、お前らこんな近くで戦ってたのか、危ねぇだろ。俺の魔法的にさ」

急に爆弾が爆発したと思ったら。こいつらだったか。

「いや、僕たちがこいつを倒すためにこっちにおびき寄せたんだよ」

俺は二人の足元に転がっている黒怪を見る。

「なかなか派手にやったな。お前らグロ耐性とかあったか?」

「まぁ…あんまり見たくはないね」

「はは…僕もだよ」

自分でやっといて、それはどうなんで。と、言いたいが血みたいのが赤じゃあなく黒。見た目もギリギリ人型をしてるが完全に化け物。グロ耐性とはまた別の耐性が必要そうだ。

「…まだいるかもしれないから、油断はしない方がいいな」

「え、あ、そうだね。とりあえず周り確認…」

「おう、お前らこんなところにいたのか」

マルカとキラだ。俺らが派手にやってたから気付いたのか。…そういえばこの二人の戦闘音らしき音は聞こえてこなかったな。よほど静かにやれるのか、ただ単に俺らが気付かなかっただけか。

「…何匹やった?」

「ええと、5、ですかね」

「…ま、はじめてにしちゃ、上出来だな」

ふむ。てことはさっき俺らが戦闘してる間にこの人達はたくさん仕留めたのか。俺は少し木に寄りかかる。流石に少し疲れた。

「おい、そこ、危ないぞ」

…?と、ハエトリグサ的な形をしたものが俺の服に噛みついていた!

「っ…!」

正直心臓が飛び跳ねるくらい驚いたが、とりあえず剣で取っ払った。

「~~~~~w」

「アースって本気で驚いたら声でないんだったねぇ」

「ほっとけ!」

おのれ俺に恥をかかせおって。変に記憶に残ったら恥ずかしくなるじゃあないか。

「ハッハッハ!そいつはな、『イーターリーフ』っつうんだ。その辺の動物を食べる肉食だからな、食われるなよ?」

「ハハハ!そうそう、この森にはそいつが割とたくさん生えててな。この森は動物たちが逃げ込んできてるからな、餌もあるから生き残ってるんだろうよ」

全員笑ってやがるぜ。なんかもう俺も笑うしかなくなってきた気がする。

「ああ、そうだ。遭うことはないだろうが…そのイーターリーフには親玉がいてな。本当にバカでかいんだ、多分お前が払ったやつの100倍くらいはあるだろうぜ」

こんな緑に同化してるやつの100倍の大きさ?それ隠れられないんじゃあないのか?

「ま、今回の任務とは関係ないんだがな。…で、キラ、お前何匹やった?」

「えー…10ですかね」

「となると、あと3匹か」

じゃあ隊長は12?キラも10。三人で5体やってる最中にそんなに…レベルがちげぇや。

「じゃあ、ここからは全員で動いて、確実にやろう。くまなく探すぞ!」

「あ~…隊長、そのことなんですが…」

「なんだ?…トーヤ、だったか」

「はい。ええっと、あっちに…」

「いたのか?」

「いた…んですが…その…」

「どうした?」

「あれは…黒怪なんですかね?」


第7-4章「不穏な雰囲気②」

トーヤが見つけたと言った方向に行ってみると…

「…え!?」

「なんだ…ありゃあ」

そこにいたのは…というか倒れていたのは…人間の女の子…に、見えるが、なんとも奇妙なことに右腕が黒怪と同じものになっていてとてもアンバランス。そして右肩から首にかけて黒い筋のようなものが伸びている。

「あれは…なんなんでしょうか?」

「い、いや…俺は知らねぇ…隊長は?」

「し、知らねぇ。初めて見た」

ほう。片腕だけ黒怪…しかも隊長たちも知らない。新種か?しかしまぁこれは…

「…確認だ。もしあれが黒怪なら…即刻排除だ」

「え…」

なかなか厳しいな。まぁ敵に容赦する方がおかしいか。

「で、でも人間だったら…」

「そのための確認だ。いいか、シン、トーヤ、アース。慎重に行け。何があるか分からん、後ろに下がっていろ」

何があるか分からんってのは最初に言ってほしかったな。まあ、大人しく下がって…

「おやおや。そんなところで寝てたのか」

「やっぱり、こいつらを追ってきて正解だったわね」

「…!誰だ!」

俺たちが木の上を見ると…そこには、二つの人影が見えた。


~次巻に続く~

また次回。

次は…戦闘、かな?

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