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異世界旅行記  作者: 地球食いてぇ!
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俺たちの行き先

分からないが、一番嫌い。

 〜第4-4章「新たな人生④」〜

「君たちは本当に...記憶喪失なんだね?」

「それは...」

 どうする?嘘をつけば信用はなくなる。何をされるか分からない。いや...嘘をつかなければ良いんだろ?

「どうした?」

「じゃあ僕が話しましょう。僕たちはこの世界の記憶は...ほとんどありません」

 水晶は光らない。

「...では、記憶喪失...というのは本当なんだな?」

「ええ」

 嘘はついてないな。この世界の記憶がないのは当然だ。この世界とか言っても転生してきたなんて信じてもらえんだろう。

 というか、いいのか?こんな戯言で嘘突き通して。この水晶信憑性なくないか?

「水晶が光らなかったんだから、そうなのでは?」

「ふむ...まぁそうだな。いや悪かった。最近黒怪(こくがい)騒ぎで神経が張り詰めてたんだ」

「...で、その黒怪ってなんですか?」

「本当に知らないのか」

「はい」

 今度は本当に知らない。なんなんだこの世界は?

「そうだな。見てもらった方が早いだろう。来なさい」

 俺たちは言われるがままついて行く。

 とりあえず、信用は失わなかったようだ。


 〜第5-1章「異形」〜

 連れて行かれたのは、壁の上だった。

「うーわ、たっか...!」

「これ...何メートルくらいだろ?」

「これだけ高いと風とかもありそうだな...」

「あれを見なさい」

 男は双眼鏡のようなものを手渡してきた。というかこれ双眼鏡だ。俺はそれで言われた方向を見る。

「なっ...!?」

「え?どしたの?」

「な、何が見えた?」

「ほら...」

 俺は2人に双眼鏡を手渡す。2人は代わる代わる双眼鏡を覗く。

「えぇ?なにあれ?」

「な、なにあれ?気持ち悪い...」

 俺たちが見たのは、人型の形をしているが、全身がドス黒く、人のようだが人ではない何かがいた。

「あれが"黒怪"だ。あれは怪物だ。生き物を見ると見境なく襲いかかるし、襲ったものは貪り食う。人間もな」

「え...!」

「特に人間が好みらしくてな。だからここにたくさんの人間を集めて、守っているんだ。あいつらは運動能力がとんでもなく高い。この高さの壁も時間さえあれば登れるんだ」

「じゃあ、壁を越えられたら...」

「あいつらにとって、ここは豪華すぎる食料庫だろうな」

「ど、どうするんですか!?」

「だからこそ、俺たちが壁の中から四六時中見張り、来ようものなら叩き落とす。...そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はマルカ。グラ・マルカだ。よろしく頼む」

「あ〜...俺たちは...」

(どうする?ここで本名言うのか?)

(明らか外国みたいな名前じゃん、日本名信じてもらえるの?)

(いや...いいだろ、あの名前で)

「アースです」

「ああ...シンです」

「トーヤです」

 うんまぁ。違和感はないな。

「名前、だけか?」

「それしか思い出せないんで」

 ふむ、と言うようにマルカは顎を撫でる。

「まぁ、壁の中に居れば安全さ。この街は俺たちが守るから、安心しとけ」

「そうですか」

「いいか?勝手に壁の外に出るんじゃねぇぞ?外までは、俺たちは守りきれねぇ」

 当たり前のことだな。安全な場所から出るのは自己責任、ね。

「じゃ、俺はまだ仕事があるから、街でも見に行ったらどうだ?」

「そうします」

「ありがとうございます!」

 俺たちは壁を降りて、街を見て回ることにした。


 〜第5-2章「異形②」〜

 というわけで、前の門の所まで戻ってきた。俺たちは街の方に歩きながら辺りを見渡す。

 住宅街のような、至って普通の街だ。壁に囲まれていることを除けば。

「なんか閉じ込められてる感があるねぇ」

「仕方がないんじゃない?あれがうろついてるってなったらさ」

「確かに、みすみす食われに行くやつも居ないだろうしな」

 まぁ、実際に食っているところを見た訳ではないが。しかしあれだな、あの黒怪とかいうやつ...あれは...

 バァーーーーン!!!

 という音がいきなりしたかと思えば何かが飛んできて俺たちのそばに落ちた。それは...あの門番だった。

 右手には俺たちに向けてきたあの槍を握っていた。左手は...

 ()()()()

 左腕がまるまる無かった。切れたところから血が吹き出していた。

「な...!」

「え?え?」

「おい...あれだ!」

 俺たちが通してもらったあの門。閉じてはいるが、大きな穴が空いていた。まるで、何かに突き破られたような...

「キャアアアアアアア!!!」

「か、怪物だ!怪物が出たぞ!」

 周りも大騒ぎだ。

「ちょっ、アース、あれ!」

 俺が見ると...あれだ。あの壁の上で見た...黒怪か!?体全体が真っ黒だ。頭のてっぺんから足の先まで黒い。目も黒く、少し赤かった。手や足には鋭い爪のようなものがついている。

「アアアアアアアアアアアア!!!!腹がァ...減ったァ...食いたい食いたい食いたいィィィィィアアアアアアアアアアアア!!!!」

 完全に発狂じゃあないか。しかも喋ってやがる。喋るのか?あいつは?

 ...?何かあいつ..."食ってないか"?

「!腕だ...!あいつ、門番の腕を...!」

「え?え?」

 俺は無意識に門番が持っていた槍を握っていた。違う、今はこんなことをしている場合じゃあない。

「トーヤ!シン!走れ!逃げろ!」

 と同時に俺も走り出す。トーヤ達も走り出す。

「足りないんだぁアアアアアア!!!!」

 黒怪もこちらに向かってくる。早い!まずい、このままじゃ追いつかれる!ぐんぐん俺たちとの距離が縮まってくる。

「食わせろォぉぉぉぉアアアアアア!!!!」

 あいつは飛びかかってきた。俺はここでやるしかないと、思ったのかもしれない。

 俺は手に持っていた槍を、思い切り黒怪の方に向けた。

 ドズッ!

 という音と共に手に重みが来る。黒怪の胸に、深々と槍が突き刺さった。重みのせいで俺は尻もちをつきながら転ぶ。おの黒怪も地面に落ちる。

 俺が...やったのか。理解するまで時間がかかった。ただ...黒怪の体がピクリと動いた瞬間に、我に返った。

「ダメだ、逃げるぞ!」

「え?やったんじゃ...」

「バカタレ、生きてたらどうすんだ!」

 また俺たちは走り出す。...と、あれは…チラリと覚えているぞ、さっきのギルドとかいうところにいた人たちだ。俺たちはとにかく走った。助けてもらえるかもと思ったからだ。そして俺たちは何とかギルドの人たちの後ろ側に逃げ込んだ。

「大丈夫?ツイてなかったわね、ここに来たばっかの人たちでしょ?来て早々こんなことに巻き込まれるとはね」

「どういうことなんですか?これは!」

「少し落ち着けよ。混乱してるのは分かるが」

「にしたって、見てたぜ?まさか反撃するなんてな。割とダメかも、とか思っちゃったぜ」

「あ…見て!あいつ、まだ生きてるよ!」

 俺たちは恐る恐る見てみた。確かに、かすかに動いているような気がする。

「…さん…許さあああああん!!!よくもおおおおお!!!!」

「…!」

 いきなり黒怪は起き上がり、俺が刺した槍を引き抜きながら叫んだ。

「ハッ…あいかわらず生命力はあるんだな」

(ちょっとちょっとちょっと!?ホントに何が起きてるのさ!?アース!?トーヤ!?)

(俺が知るか)

(えー…俺たちが壁の上で見たあの黒怪ってやつがここに入ってきたらしいな)

 さすがはトーヤ。こんな時でも冷静だな。

(ていうか、なんで二人ともそんなに冷静なのさ!)

(ほら、あれだろ。パニックになりすぎて逆に冷静みたいな)

(また適当なこと言って…!)

(落ち着いてシン。パニックになってもいいことないぜ?)

(え?僕がおかしいの?コレ)

「お前ら、さっきから何話してるんだ?」

「い、いや、何でもないです!」

 と、あの黒怪が立ち上がって叫ぶ。

「ああああああああ!!!邪魔しやがって…もう全員皆殺しだああああ!!!」

「あーあ…」

「逃げりゃいいのに…」

「まあ、逃げ切れればの話だけどね。あの人から」

「それもそうだな」

 なんの話をしているんだ?そしておの黒怪はこちらに向かって突進してくる。

「許さん許さん許さん許さんゆるっ_____」

 ドズゥン!という音ともに黒怪は地面に叩き落される。叩き落したのは…あのマルカという男だった。黒怪は…頭が吹き飛ばされて無くなっていた。

「お前ら、無事か?」

「ヒュ~…さっすがギルマスぅ」

「今日もカッコいいですよ~」

「あのなぁ…見てないでお前らもちょっとは動けよ…こいつらは…」

 マルカは俺たちの方に来て手を差し出す。

「大丈夫か?」

 自分でも立てるが一応マルカの手を握って立つ。トーヤは自分で立つ。シンは…

「ほら、さっさと立て、シン」

 俺はシンの腕を掴んで立たせる。

「いや、だからさ。なんで二人ともそんな平然としてられるのさ」

「お前がビビりなだけだろ」

「そうそう。もっと冷静になれよ、シン」

「えぇ…?なんでぇ…?」

「…まぁ、俺の目から見ても動揺が全く見られないのは珍しいけどな」

「で、ですよね!?」

 とりあえず、助かったらしい。


 第6-1章「行き先①」

「あ、あの。ありがとうございました。助けて頂いて…」

「いや、いいんだ。これが仕事だからな」

「…というか、あなたは何者なんですか?」

 トーヤが聞く。当然の疑問だ。一瞬であの化け物を倒してしまうなんてただものじゃあない。

「おれか?名は…知ってるよな。俺はこのギルドのギルドマスターだ」

「ギルド…マスター?」

 そういえばギルマスとか呼ばれていたな。つまり偉い人ってことか。

「そっすよ。このお方は我らがギルドマスター!この南区のギルドのリーダーっす!」

「あんまり持ち上げるな。それにしたって…」

 マルカは俺の方を見る。

「黒怪を足止めしてくれたんだってな。すごいじゃないか、普通はできないぞ」

「はぁ…」

 今でも実感が湧かないが、やっぱり俺がやったのか。しかし、冷静になって考えてみればあれはただ運が良かっただけだ。本当は槍なんぞ拾わずいち早くこの人達のところに向かった方が良かったのだ。我ながら馬鹿なことをした。

「で、お前たちこれからどうするんだ?」

「え?」

「いや…記憶喪失で…行く当てあるのか?」

「…あ」

 そういえばそこのところを考えていなかった。しまった、色々と足りていないところがあるな。

「その様子だと、なさそうだな。提案なんだが…俺のギルドに入らないか?」

「…え?それはどういう…」

「お前らは俺たちの仕事を手伝う。俺はお前らの衣食住。保証してやろう。手伝いと言っても、危険な仕事ばかりじゃない。どうだ?」

 あまりにも怪しい言葉だ。知らない人の誘いには乗ってはいけませんとお母さんに言われているのに。

 …いや、多分言われてないな。

「どうする?」

「いいんじゃない?」

 適当だな。その流される癖何とかならんのか。

「トーヤ」

「それしかないと思うよ、今の俺たちだとそれしか選択肢ないっぽいし」

 …それもそうか?…確かに、俺もそれ以外の代案は思いつかん。

「では、そうします」

「お!いいねぇ~人手が増えるのは歓迎だぜ?」

「お前らはもっと働け。いっつもサボりやがって」

「サボってるわけじゃないっすよぉ~」

(さっきはごめんね、すぐ駆けつけてあげられなくて)

 ギルドの人の一人が話しかけてきた。

(いや、いいんですよ。俺が不運だったんですよ)

 不運…まぁ死んだ矢先に一日も立たずにもう一回死ぬのはごめんだな。そうならなくてよかった。不幸中の幸いねぇ。

 ただ、寝床は確保することができたらしいな。


 異世界TIPS

 グラ・マルカ

 南区ギルドマスター。

 ギルドは各区に本部と支部が設置されていて、マルカはその本部のマスター。

 圧倒的なパワーで敵を叩き潰すのが得意らしい。

 正義感が強い。


 第5-2章「行き先②」

 俺たちはギルド施設の裏の建物に案内された。

「ここが宿舎だ。今からここがお前らの家だ」

 ホテル的な雰囲気はあるが、やはりファンタジー感あるな。

 …

 中に入り、部屋に入ると、なかなか雰囲気あるな。…汚いが。

「空き部屋なんだ。掃除は各自してくれ」

 …まあ、当たり前か。

「ああそうだ。お前ら、記憶ないってことは…この辺のことも知らないのか?」

「え、ああ、はい」

 そこまで気を回してくれるとは。なかなかいい人だな。

「なら、教えてやろう。ここはな…」

 …

 マルカが教えてくれたところによると…この町はセトルの町。この周辺の人々は全てこの町の壁の内側にいるらしい。そしてこの町は壁で五つに分けられていて、南区、東区、西区、北区、中央区に分かれているらしい。

 そしてあの化け物、黒怪。数年前から現れて、辺りをうろつき始めたらしい。この辺りに元々いた魔物と相まって手に負えないことになったらしい。そこから、小さな村などにいた人たちは、全て安全な場所を求めて移動したらしい。今も、黒怪については調べられているらしいが、詳しいことはよく分かっていないらしい。

「はえ~…」

「というか、あの化け物以外にもいたんですね」

「ああ…昔は魔物がいても対処できたから良かったんだが、黒怪が現れてからはその魔物の数も減ってきていてな…このままだと本当に外があいつらだらけになっちまう」

 なかなか大変そうだな。簡単に対処できないほどの力を持った奴が現れて、そいつがどんどん増え続けてるってことか…

「何か、対処方法とかはあるんですか?」

「あー…それなんだが…悪い、時間がアレだからそれはまた今度で頼む」

 ふむ。まあ引き留めても迷惑だし…俺もなんだかんだ疲れたしな。言ってしまえば、声を出すのも面倒だ。

「分かりました。ありがとうございました。何から何まで」

「いいんだよ。それじゃあな」

 そう言って、マルカは去っていった。


 第5-3章「行き先③」

 マルカが去った後。

「…とりあえず、掃除でもしない?」

「だね。これは汚いな…」

 埃だらけで少し動くと埃が舞う。蜘蛛の巣みたいのまである。物も散乱している。確かに、これは掃除しないとゆっくり休めそうにもないな。

「じゃ、始めよっか。…ほら、アース!動いて!」

「へいへい」

 俺は仕方なく腰を上げる。面倒くさいことはやりたくないが、さすがに自分のことだ。無視はできないな。

 俺たちは掃除をすることにした。これが大変だった。埃を片付けようとしたら埃が雪のように舞って息ができなかった。虫も出た。なかなかに苦労した。

 …

「…ハァ。こんなもんかな」

「うん…ヘ、ヘ、ヘックシュン!」

 おいおい、大丈夫か?まあ無理もない。永く苦しい戦いだったからな。俺もかなり疲れた。こんな事は久々だ。…この世界に来てからは、初めてか。

 一応綺麗にはなった。散乱していたものは邪魔にならない場所にまとめておいたし、蜘蛛の巣もない。虫も多分、追い出せた。…と。

「よう!片付けか?新人!」

 俺たちの部屋に入ってきた人がいた。あいつは…さっきのギルドメンバーの人たちにいたやつだな。

「はい、今終わったところです」

「お、そうか。じゃあ来いよ!みんなに紹介するからさ!」

 ギルドに入るんだから、挨拶くらいはしておかなくっちゃあな。この部屋はまだ埃が舞っている。さっさと出よう。掃除のときに窓は開けておいたから、少しすれば空気の入れ替えも済むはずだ。俺はさっさと部屋を出る。

「あ、待ってよアース…ヘックション!」

「大丈夫か?シン」

 …

 俺たちが付いて行くと、すぐに広い部屋に出た。ここがみんなが集まる場所なのだろう。そこにはあのギルドメンバーがいた。

「よう皆!連れてきたぜ!」

「あ!君たちが?よろしく~」

「よ、よろしくお願いします」

「あら、そんなに硬くならなくてもいいのよ?」

「自己紹介が遅れたな。俺はキラ。キラ・ニースだ。よろしくな」

「よろしくお願いします」

「分かんないことがあったら、俺に聞けよ?俺が知ってることなら、何でも教えてやるぜ!」

「あらあら、さすがは南区一番手」

 なかなか元気のあるやつだ。声が大きいのはあまり好きではないが。

 …

 一通り、自己紹介は済ませた辺りで周りからいろいろなことを聞かれた。

「どこから来たの?」

「記憶喪失って本当?」

「なんか、得意なことあるの?」

 ああ。面倒くさい。俺たちは疲れているし、この世界については何も知らないので、適当に流していた。しばらくするとキラが「疲れてんだろうし、休ませてやろうぜ」と、気の利いたことを言ってくれたので、俺たちは部屋に戻った。換気も済んで、良い感じだ。

「や、大変だったね」

「ホントだよ。いきなりあんなことに巻き込まれるなんてな」

 本当だよ、詳しいことは何も聞かされずに飛ばされた挙句、来て早々これか。本当に不運だな。

「ふあぁ~あ…もう僕は寝るよ」

「そうだな、俺も寝るか」

 さすがに俺も眠い。宿舎だからか、ちゃんとベッドはあるようだ。…でもこれ二人用だな。

「…三人じゃ、狭いかな?」

「いいよ、俺は別で寝る」

「え、アース…いいの?」

 俺は床に座り込み、ベッドに背中を預ける。正直寝られればどうでもいい。俺は眠いのだ。

「いいんだよ」

「でも…」

「俺がいいって言ってるんだ」

「…分かった、じゃあ、おやすみ」

 疲れからか、俺たちはすぐに眠ってしまった…


 第5-4章「行き先④」

 翌日。俺たちは広いグラウンドのようなところに呼ばれた。ちなみに昨日の寝心地はあまり良くなかったのでまだ眠い。

「お、来たか」

 マルカと、グラウンドで走り込みをしているギルドメンバーがいた。

「お前ら…俺のとこに来るからには、しっかりどんなことが出来るか見せてもらおう」

 何だ、ここにきていきなり面接かなんかか?

「見せる…って、何を?」

「何…ってほら、魔法とか、その辺だよ、こんな感じで」

 そう言うと、マルカの手のひらからパキパキと音を立てながら石が出てくる。…?これは…

(あのさ…これ…)

(…多分、僕とトーヤの考えてくること、同じだと思う)

 そうだ。これは…奇妙なことだが、俺たちはこの魔法を()()()()()。なぜだ?俺たちはここのことは知らないはずだ。…あの俺たちがこの世界に来るときに聞こえたあの声か?分からないが…とにかくやってみる。

 感覚のようなものも俺の中にある。トーヤ達もやっているようだ。トーヤが一歩、地面を蹴ると辺りに突風が起きてトーヤの姿が消える。見ると、少し遠くの方にトーヤがいた。

 シンが手のひらを出すと、まばゆい光が輝く。まぶしくて俺は目を閉じる。俺も、やってみる。少し離れたところに行き、右手を地面の辺りにかざす。すると、何か分からないが、見えないものがそこに置かれた感じがした。

「ほう、身体強化に純粋な魔法。それに…設置系か。使えるとは思っていたが…割と力はあるな。」

 シンは驚いた顔をしている。戻ってきたトーヤも、さすがに驚いたようだ。

(な、なにこれ!?こんなの使えるなんて聞いてないよ!?)

(ああ、さすがに…これは驚いた)

 俺も驚いた。俺はあまり実感はないが…マルカが認識しているということは一応俺も使えてはいるらしいな…

「どうした?」

「い、いやぁ、なんでもないですよ」

「おいおい、お前らすごいな!」

 と、遠くの方からどかどかとたくさん来た。さっき走ってた奴らだ。

「見てたよ、すごいじゃん!お前ら魔法使えたんだな!」

「おい、お前らまだ終わってないだろ?」

「あ、ああ…?」

 良く分からないが、すごいのか?しかし…なんか右手に違和感があるな…俺は右手を握り、親指を立て、親指でスイッチを押すように指を倒す。これも俺の中にある感覚だが…と。

 バァン!という音が鳴り、さっき俺が手をかざしたところが爆発したようだ。さっきのギルドメンバーたちがおぉ~と声を出す。

「あ~…あんまりむやみやたらに爆発させないようにな?」

 はい、すみませんでした。良く分からないのにやるもんじゃあねぇな。

「まぁ、あれだ。とにかく、魔法が使えることは分かったんだ。キラ、少し相手をしてやれ」

「いいぜ!そうだな…じゃ、お前!ちょっとやろうぜ!」

 えぇ?俺?俺どっちかと言えば動くよりも見る派なんですが。サッカーとかはやるより見る派なんですが。そもそも俺サッカー見るよりもゲームする派なんですが。まぁだが…今はマルカの方が立場が上だ。つまりやらなければいけないか…仕方がないか…ハァ。

 …ハァ。

「分かったよ…手加減してくれよ?」

「あれ、アース、意外と素直だねぇ。いつもは嫌がって僕たちに丸投げするのに」

「あぁ。俺もよく使いっ走り行かされたぜ?そのお前が自分から動くなんてな」

「マルカが言うからな…てかお前ら、俺を何だと思ってるんだ」

「…怠惰?」

「同じく」

 なかなか容赦ないな、お前ら。まぁ間違ってはいないが。

「おい、話終わったか?早くやろうぜ!」

「あぁ…」

 結局、俺がやることになってしまった…


 ~次話に続く~

また次回。

ある意味アースにとっての危険だったね。

次は新キャラかも?

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