俺たちは死んでいた
気持ちの切り替えは、大事。
第一話〜第1-1章「見知らぬ場所」〜
………?
あれ…?どこだ、ここ。
俺は何か…よく分からない場所にいた。暗いような、明るいような。空気が澄んでいるような、澱んでいるような。しかし周りには何もない。
一体自分はどこにいるのだろうか。…というか、なぜ、俺はここにいる?
……分からない。というより、思い出せない。
ああ、クソっ。分からないというのは本当に気持ちが悪い。……ここがどこなのか、調べてみないことには…周りには何もない。物も、俺以外の生き物も。
俺は、歩いてみることにした。
〜第1-2章「見知らぬ場所②」〜
俺は歩いてみた。道なのかどうなのかも分からない所を歩いた。景色は変わらない。明るさも、空気も、何もかも変わる気配がない。狂いそうだ。
ただ…疲れはしなかった。体感だと、かなり歩いたはずだ。だが自分の足は疲れもしないし痛みはない。息も乱れない。おかしい。俺はこんなに体力に自信のある方ではなかったはずだ。
「おーい!誰かいないのか!」
久しぶりに声を出した気がした。しかし声はどこかに消えるだけで、届く気配はない。
もう一度、考えてみた。俺はなぜここにいる?…いや、俺はここにいるが...ここに来る前、何をしていた?
……分からない。思い出せない。なぜだ?俺は元々ここにいるはずがない。ここではない場所にいたはずなのは分かる。…どこにいた?
俺は考えながら歩いた。
〜第2-1章「出会い」〜
考えて見たが...やはり分からない。気持ちが悪い。モヤモヤする。1度、前を見た。景色は変わらない。
「おーい!おーい!俺はここだ!誰かいないのか!」
前よりも大きな声を上げた。…やはり答えは…
「…い……だ………!」
「!」
声が聞こえた。
「おーい!聞こえるか!」
もう一度、呼んでみた。
「…こ……よ…こ……!」
いる。確かに聞こえた。微かだが…ここには俺以外の誰かがいる。俺は希望を持った。幻聴ではない。力が沸いてくる気がした。
俺は走り出した。
〜第2-2章「出会い②」〜
俺は走った。だんだんと声が近づいてきた。
「おーい…ここだ…!」
小さくだがハッキリと聞き取れるようになって来た。…?この声…どこかで聞いたような…
と。人影が見えた。
「おい!来たぞ!ここ…だ…」
「って、え?」
「…」
「…」
「シン!?」
「アース!?」
「な…なんでこんなとこに?」
「それはこっちのセリフだよ。アースこそ…というかここどこなのさ!」
「俺が知るわけないだろう、どういうこった?」
まさか知り合いがいるとはな。こんなとこに。この謎の場所。俺がここにいるのもおかしいが、こいつまでいるとは。ますますわからん。
「……のか………れ…?」
「!」
「!」
「おい、聞こえたか?今の」
「うん、聞こえた。多分僕達以外にも誰かいるんじゃない?」
「早く行こう」
俺たちは走り出した。
…
旅行記TIPS
アース(16歳)
本名…大林 明日真
あすま、から取って、アースと呼ばれている。
自由を掲げ、怠惰に生き、狂気を愛す。
という言葉を信条にしているいわゆる頭のおかしい少年。
自分から動くことはほとんどない。
シン(17歳)
本名…江戸川 新一
しんいち、から取ってシンと呼ばれている。
成績も身体能力も平凡ないわゆる凡人。
エアガンマニアという一面があり、家に沢山のエアガンがある。
成人したらサバゲーにやってみることが夢らしい。
誕生日が少し早いだけでアースとは同世代。
〜第2-3章「出会い③」〜
俺たちが走り着いた先には…
「おい!大丈夫…って…」
「え!?トーヤ!?」
「え?って、ええ!?お前らかよ!?」
まさかまた知り合いとはな。驚きだ。頭が追いつかなくなりそうだ。
「ここ、どこだよ?なんでお前らこんなところに…」
「ハァ…それはもう聞いた」
「僕達も分かんないんだよ」
「ええ…そうなのか…」
「でも…これでいつもの3人、揃ったねぇ」
「…ああ!確かに」
「しかし、俺たち以外はいないのか?」
「うーん…探してみようよ。まだいるかもしれないし」
「だな。行こうぜ!」
なんか、さっきまで焦りがあったが、落ち着いたら動くのが面倒になって来た。
疲れはしないが…まぁ、行くか。
………しかし。
「いないねぇ」
「だな、結構歩いた気がするけど声とかも聞こえないぜ?」
「ああ。…もういないんじゃあないか?」
「うーん…そう決めつける?」
「俺もアースと同じだな。こんなに声あげて返事ないんだろ?お前らは俺より前に合流したんだし」
「そっかぁ。でも…ここ、どこ?」
「そこなんだよな…」
そうだ。ここがどこかは分かっていない。
「…え?…ちょ、見て、あれ!」
「え?」
「あ…?」
俺たちは、何か光が見えた。地面が光っているような気がする。こんなことは今までなかった。
俺たちは光の元まで駆け出した。
異世界TIPS
トーヤ(16歳)
本名…青木 遠哉
とおや、から取って、トーヤと呼ばれている。
いわゆる熱狂的なアニオタであり、気持ち悪いくらいの知識をアース達にいつも披露してくれる。
初対面の人にもお構い無しなので第一印象は最悪だが、
中身は成績優秀、しかも学校では生徒会長をしている。
顔も悪くはないので、嫌われている訳では無い。
「いつもの3人」
アース、シン、トーヤはいつでも一緒にいることで、学校でも有名だった。
アースは自分から動かないので、シンとトーヤがアースの所に行ってくっついているという感じだった。
3人とも個性的な一面を持っているため、「嵐」だとか「静かな混沌」だとか呼ばれている。
〜第3-1章「世界」〜
俺たちは光っている場所に行ってみた…
「え…!?」
「なん…だあ!?これ!?」
「こいつは…」
俺たちが見たものは…光の中には、映像のようなものが写っていた…そこに写っていたのは...電車?だった。
「これ…電車?」
「だ…脱線事故…かな…?」
「こいつぁひでぇな…」
確かに脱線事故に見えた。線路があって、電車が線路から外れて横倒しになっていて…家が潰れ、車両も一部が潰れてい…た。火があがっている家もあった。
『これは…あなた達がいた世界…』
女の人?のような…声がした。
「…え?アース、なんか言った?」
「いや。トーヤか?」
「俺も違うよ」
「じゃあ誰だよ」
『これは…あなた達がいた世界…』
「だ、誰だ!?」
『あなた達は…不運でした…』
「…は?」
「何が…?」
『大林明日真…江戸川新一…青木遠哉…あなた達がいた世界です…』
「あなた達がいた世界…?地球、日本ってことか?」
「こいつがか?しかし、俺たちは今ここに立ってるぞ?」
『あなた達は…この事故で…命を落としてしまいました…』
「何を言って…」
『これを…』
すると、光の中の映像が切り替わる。そこには…頭から血を流して倒れている、俺たちがいた。
「は…?」
「え…?し、死…」
「死んでるのか」
『分かって頂けましたか…?あなた達は、命を落としてしまいました…とても、残念なことです…』
「な、そ、そんな、わけ」
「い、いやいや、いや。じゃあ、僕達はどうなるのさ」
「…あれか?あの世、ってやつか?」…
『ご理解が早いですね…あなた達は死にました…今のあなた達は、魂、という訳です』
「…」
「…」
「…で?俺たちはどうすれば?」
トーヤ達は絶句している。あの目は少々ショックを感じているらしい。そりゃあな。
『この事故は…とてもとても、悲しく、不運で幸運でした…』
「それは…どういう…」
〜第3-2章「世界②」〜
『この出来事は…"不幸中の幸い"が重なったもの…お話致しましょう』
「…」
『この事故は、とある脱線事故…しかし、消防署が近くにあったため、火が上がった家はすぐに鎮火させられました…
さらに、電車が突っ込んだ家には奇跡的に誰もおらず、そして事故は起きましたが、軽傷や重傷の人はいても、死人は、出ませんでした』
『あなた達3人を、除いて』
「…!」
「僕達、3人だけ…?」
死んだのが俺たち3人だけ?俺たちだけが死んで、他は助かったのか…
………いや、まぁ、いいや。人はいつか死ぬんだ。それが早かっただけなんだろう。
『あなた達だけが即死だった…あなた達には…"不幸中の不運"が降りかかったという訳です…』
「…」
『なぜ、あなた達3人はここにいるのか…気になりますか?』
俺は2人を見る。…あの目は絶望を感じているんだろう。
俺は頷く。
『あなた達には…もう一度新たな人生を歩むチャンスを与えましょう…そのために…ここに呼び出しました…』
「…」
「…」
「…詳しく、お願いします」
〜第3-3章「世界③」〜
『あなた達は別の世界に行き…新しい自分として生まれ変わることが出来ます…しかしこれはあなた達への慈悲のようなもの…選択はあなた達に任せます…』
「…それは…」
『…言っておきますが…この世界…地球に戻ることは出来ません…死んだ人間は二度と同じ世界には戻ることは出来ません…同じ人間は戻れません』
「どうする?」
「どうする…って…」
「選択は、自由だってよ」
『ここでいわゆる成仏…というのも選択肢に入っています…あなた達は別の世界に行く…"転生"か。選んでください。焦る必要はありません…ゆっくりと、決めてください…』
「…どうしよう…」
「…成仏したらさ、もう、お前らとは会えないのか?」
「…!」
「俺はさ、みんなと一緒に居たいぜ?」
「…うん、そうだね!そうだよ!」
「俺たちが3人一緒に逝ったのも、"不幸中の幸い"ねぇ。たまにはいいこと言うねぇ、トーヤ。俺も賛成だ」
『あなた達の選択は…転生、でよろしいのですね?』
「ええ」
「うん」
「はい」
『分かりました。不運に見舞われた3人の人間に、もう一度、新たな人生を歩むことをここに許可致しましょう…』
………『あなた達の行く世界は地球より危険な場所…生き残るための力を与えましょう…』
目の前が、光に包まれた。
〜第3-3-1章「世界⑤」〜
僕は光の中で考えてみた。僕はアースについていけるだろうか。
アースはいつも眠そうな目をしていて…自分からは絶対に動かなかった。一緒にいる時も、いつもフラフラ歩いていて、貧血気味だし。
…でも僕は、アースに救われたんだ。僕はアースと一緒に居たいんだ。
〜第3-3-2章「世界⑤」〜
俺は光の中で考えてみた。俺はアースと一緒にいられるだろうか。
アースは、俺の周りではあまり評判は良くなかった。頭がおかしいとか言われるし、成績は中の下か中らへんだし。
…でも俺は、アースに救われたんだ。俺はアースと一緒に居たい。
〜第4-1章「新たな人生」〜
目を開けると…外だった。しかし、地球では見たこともないようなだだっ広い草原のような所に立っていた。
「ここは…」
「来た…ってことで良いんだよね?」
「まぁ…多分?」
というか、なんか体に違和感がある気がする…
「あ、見て、あっちに何かあるよ」
確かに、向こうの方に大きな建物のような何かが見える。
「結構遠そうだな…」
「ここは何も無さそうだし、とりあえず行ってみようぜ…って、その格好…」
「え?」
あ、確かに。何故か服が俺たちが着ていたものではない。違和感はこれか?
「…なんか、カッコイイね!」
「そうか?」
「ちょっとは興味持てよ…」
俺たちは歩き出した。
〜第4-2章「新たな人生②」〜
「おい…おかしいぞ…」
「え?アース、どうしたの?」
「なんかあったか?」
「俺…こんなに歩いてるのに疲れてないぞ…!」
おかしい。この前は歩いたら酷い時は3歩歩いたら疲れが来てたんだぞ…
「ああ…そういえば」
「小走り2秒で疲れてたもんねぇ」
「これが…"生まれ変わる"ってことか…」
うんうん。スタミナがあるって最高だな。なんだか泣きそうだぜ。
………
「…着いたか」
「ひゃ〜あ…でっかいねぇ…」
「巨人でも攻めてくんのかってくらいデケェな」
中はどうなってんだ?というより、入口はどこだ?ここまででかいと、外周の距離ヤバそうだな。
「どっから入れるか探してみるか」
「そうだね」
歩いていくと…あからさまに門と人が立っていた。身につけているのは…鎧?
「なんか、アニメとかの異世界感、半端なくない?」
「だな」
「あの、すいませーん!」
「むっ?なんだ貴様ら?まさか…黒怪か?」
門番らしき人は槍をこちらに向けてくる。俺たちは両手をあげる。
「うわっ!ほ、本物?」
「い、いやいや、俺たち悪い人間じゃないですって」
「黒怪…ってなんですか?」
「何?知らないのか?怪しいな…」
門番は俺たちに棒切れのようなものを向けてくる。その棒の先が青く光る。
「ふむ。人間なのは間違いないようだな。しかし…黒怪を知らないとは…何者だ?」
「あ〜……実は……俺たち何も覚えてないんすよ…ねぇ…」
「なんだと?」
「そうなんですよねぇ〜…」
俺も頷く。
「ふむ…記憶喪失…ということか?名前は分かるのか?」
「ああ、ええ、まあ。そこはなんとか」
「う〜む…さすがにここで追い返すのもなぁ…仕方がない…」
「入れ」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、待て。さすがに記憶喪失だろうがすんなり街に入れる訳にはいかん。ここで待て」
門番は俺たちを門の内側に入れ、どこかへ行ってしまった。門番は行ったが、街の住人らしき人がこちらを見ている。
「大人しくしとくか」
「そうだね。ていうか、記憶喪失って…トーヤ」
「いやまぁ。どこかから来た謎の人間が記憶喪失ってのは割とテンプレかな、と」
そういうもんなのか?とりあえず…
俺たちは、待つことにした。
〜第4-3章「新たな人生③」〜
しばらく待っていると…門番が戻ってきた。
「待たせたな。とりあえず、あそこの…大きな建物に行ってくれ。そこでお前たちの事情を聞く」
「はぁ、わかりました」
「…まっすぐ行けよ」
と、いうわけで俺たちは素直に行くことにした。
「良いのかな?嘘ついたってことにならない?」
「知らないのか?バレなきゃ犯罪じゃないんですよ?」
「確かにな。で、ここか」
確かに大きな建物はこれしかないからここだとは思うが…
「なんか…何この…文字?」
「でも…読めるな」
確かに、明らかに日本語ではない。俺は日本語以外は出来ないのだが…建物には、"南区ギルド"と書かれていた。
「とりあえず入るかな」
俺たちは中に入ってみることにした。入ると、職員らしきお姉さんがこちらに話しかけてきた。他にも、たくさんの人がいた。
「こんにちは!あなたは…他の区の方ですか?初めて見る顔ですが…」
そういえば…門番とは普通に会話していたが文字が違うってことは言葉も違うんじゃあないか?なぜ俺たちは普通に会話出来ているんだろうか?
そういえば…あの声…力がなんとかって言ってたが…まぁ、生きるために読んだり喋ったりするのは最低限必須だからな、恐らくだが…そうなのだろう。
「えーと…ここに行けと…門番の人に…」
「ああ、あなた達が…ではこちらに」
俺たちは奥の部屋へと案内された。…なぜか見られている気がする。
中に入ると…応接室のようなものだった。一人の男が座っていた。
「では」
お姉さんは行ってしまった。
「君たちが、記憶喪失だと言っている奴だね?」
なかなか言い方に圧がある。恐らくトップ…か?そんな雰囲気を感じる。
「ええ。そうですが…」
男はチラりと机を見る。そういえば机に水晶のようなものが置かれている。飾りか?
「まあ、掛けたまえ」
掛ける。座るの丁寧な言い方だったか。言われた通り、俺たちは座る。
「さて…君たちは記憶喪失だと言ったが…この道具のこと、知らないか?」
「いや…知りませんね」
また男はチラりと机、というか水晶を見る。
「…嘘はついていないようだな」
「?」
「これは偽りを見通す水晶玉…この前では、絶対に嘘はつけない。もし嘘をついたら…こいつが赤く光る」
(ど、どういうこと?)
(ウソ発見器、っていうことじゃない?)
そうなるとなかなかシビアだな。素性が分からなくていきなり記憶喪失だとか言ってきて、さらに嘘までついているなんてバレたら信用はなくなるし、回復することもない。
「最近黒怪の活動が活発になってきているんだ。さすがに正体の分からない君たちを野放しには出来ない。ここは私の管轄だ。勝手なマネはさせない」
「いや、あの。そのこくがい?ってなんですか?」
すると、男は驚いたような顔になる。
「知らないのか?」
「はい」
「本当に?」
「ええ」
男は水晶を見る。しかしこちらは嘘はついていないので光ることはない。
「なるほどな。この辺りで黒怪を知らないやつはいない。確かに…記憶喪失なのかも…」
「ああ…そうなんです…」
「なんも思い出せないんですよねぇ」
「だが。まだ君たちを信用した訳では無い」
「!」
おいおい。せっかく丸く収まりそうだったのに。記憶喪失だとか言い出したトーヤを恨みたい所だが…俺もあの状況ならなんて言って信じて貰うかは分からないな。
「率直に聞こう。君たちは…本当に記憶喪失なんだろうね?本当に何も覚えてないのかい?」
…!おいおいおいおい、マズイな。ここでそれか。嘘がついていることがバレれば何をされるか分からない。雰囲気的に、状況がピリピリしているのが伝わってきたからな。
一体、どうしたものか。
〜次巻に続く〜
また次回。
次はいよいよ危険が迫るかも?
※この物語は間違いなくフィクションです。誰がなんと言おうとフィクションであり、とにかくフィクションなのです。