第1話
そして僕は――いやボクは女子として学園に通うことになった。
いやいやそんなまさか普通はバレるって!
「……兄さま、気持ち悪いくらい似合ってますね」
「放っといて!」
これは妹の言葉。
妹は背中まである綺麗な黒髪に切れ長の瞳。身長は僕よりも低く150はないくらいだろう。
そう、この妹の言う通り。
想像に反して似合ってしまっていたのだ! しかも全然バレる様子ないし!
そして気付いたら一年生が終わって二年生に進級していた。
「学園一可愛いと評判の女の子がいるらしいぜ
! 写真も何枚かゲットしたんだ。見るか?」
登校中、少ししてそんな話し声が聞こえてきた。
「あの、落としましたけど――え?」
そんなことを話していた男子の持っていたうちの一枚の写真がボクの足元に落ちた。
その落ちた写真を拾って驚いた。
「僕じゃん!」
そう、その美少女とはボクのことだったのだ。
「え? 兄さまが学園一の美少女? 知らなかったんですか?」
「え? 知ってたの?」
「知ってたも何も、学園では入学当時からそうだったみたいですよ。私は入学してないですから一年前のことは知りませんが」
その日自宅に帰ってから同じ学園に通うことになった一つ下の妹、月丘莉沙に訊いてみると知っていた。
莉沙は最近通い始めたばかりなのに。
「僕……男なんだけど」
「たしかに兄さまは男の娘です。でも学園のアイドル、祈莉ちゃんは違いますよね?」
「あ、アイドル!?」
は、初耳だ。
僕がアイドル? そんなの聞いたことない!
「そうですよ。学園一の美少女、つまりは学園のアイドルなのです」
「それはイコールなの……?」
「イコールです。兄さまは既にファンクラブもありますからね。非公式ですが」
「えっ!? ファンクラブ!?」
それも聞いたことない。
なにファンクラブって? 男の僕にファンクラブって。
いや、学園での僕は女の子だけど……
「えぇ、なかなか熱狂的で男子の告白とかも阻止してくれてるらしいですよ」
「そ、そういえば……ある日を境に告白されなくなったような」
「効果抜群ですね。きっとファンクラブのおかげでしょう」
入学してから毎日一回は告白されてたけどある日を境にされなくなった。
それがまさかファンクラブのおかげだったなんて。
「でもそんなのいるなんて聞いたことないよ?」
「バレないように頑張っているんでしょう。兄さま鈍感ですから気付かなかっただけかもしれませんが」
「そんなことないよ!」
「……一年間も気付かなかったのに?」
「そ、それは……」
ぐうの音も出ない。
学園一の美少女もファンクラブの存在も。
「登校中、人目を気にしてみてください。そしたら鈍感な兄さまでも注目されてることに気付くはずです」
「うー……わかったよ」
納得はできなかった。
でも悔しいことに莉沙の言葉は今のところ間違ってない。
僕が言うのもなんだけど僕の妹、莉沙も相当可愛いと思う。
なのに莉沙を押しのけて僕が学園一の美少女だなんて。
……とにかく、今は莉沙の言葉を信じて明日の登校のときは人目を気にしてみよう。