プロローグ
お祖父様が死んだ。
お祖父さまは生前に遺言状を遺してた。
それが一周忌の親戚一同が集まる席で発表される。
「ワシには心残りがある。それは可愛い孫息子の女子高校生姿が見れなかったことじゃ」
「ん?」
「は?」
「え?」
親戚一同絶句した。
「その可愛い孫息子とは他でもない。月丘祈莉、祈莉のことじゃ」
月丘祈莉。
僕のことだった。
「祈莉はワシの悲願である女子高校生制服に身を包み、女子高校生のまま学園生活を送ってくれ」
「親父……そんな悲願があったのか」
月丘長男一家の正造おじさんは至極真面目に泣きながら呟いた。
いや、おかしいだろ。
泣きたいのは僕の方なんですけど!?
「無事、祈莉が女子高校生のまま学園生活を全うしたら財産は全て、祈莉に相続するものとする。失敗した場合は兄弟それぞれ好きにするがいい」
「……ふざけてます?」
「祈莉くん、信じられないかもしれないが全て真実だ」
遺言状を読み上げていた正造さんは僕に遺言状をチラッと見せた。
間違いなく書かれてた。悲しい。
「祈莉くん、女装、できるのか?」
「無理です」
正造伯父さんは真顔で言った。
それを僕は即答した。
「そうか……だが頼む!」
「はい?」
「亡くなった親父の遺言なんだ! 頼む!」
「えぇ……」
正造伯父さんは泣きながら土下座した。
僕は動揺した。
親戚一同も真面目な顔だった。
どうやら信じられないけど、僕は女装して春からの高校生活を迎えないといけないらしい。
死んだ祖父の遺言によって。