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役に立つかもしれない!? ~異世界開発ベンチャー企業論~  作者: imuran
新商品(新ルート)開発編
9/27

私とダンジョン

「園田さん、綾部さん、石さんがお見えですよ」

「は、はい」


 良く晴れた、ある日の午後、

約束していた、ゴーレム建設の石さんが、やってきました。


 今日も、園田さんと一緒に打ち合わせです。


「今日は、昨日ほど緊張していないのね」

「はい!昨日みたいにカッチカチにはなりませんよ!」


 打ち合わせ室の扉を開けた先には、昨日の私よりもカッチカチなお客様が立っていました。


「どうも、ゴーレム建設の石と申します、見ての通り、ストーンゴーレムです」

「あ、綾部です、よろしくお願いします」


 その挨拶、流行ってるのかな?

 異世界流のビジネスマナーなんだろうか?

 私も、見ての通りの人間です!みたいなのやるべきなのかな?

 いやいや、変な子と思われて、病院とか紹介されかねない。

 医師だけに。


「綾部さん?」

「あっはい、すみませんちょっと驚いちゃって」

「まぁ、無理もありません、こっちの世界で人に合うと、大体同じようなリアクションですよ」


 そりゃ、人の形の石ブロックが、スーツ着てるんだもの。

 私はあんまり驚かなかったけど、名刺に書かれている名前の時点で、予想していたし。

 むしろ予想通りというか、期待通りというか。


 そして名刺交換を終えた私たちは、本題に入ります。


「実は、メールでも軽く触れましたが、私共はツアーの新ルートを計画しておりまして」

「ダンジョンの施工をお願いしたく思いまして」

「ダ、ダンジョンですか?」


 石さんは少し困っている。 たぶんね?

 石さんは少し考えてから答えました。


「うーん、弊社もダンジョンは初めてですね」

「ですよねぇ」

「ですよねぇ?」

「大体のイメージってお持ちですか?」

「まあ、ざっくりとしたイメージならありますけれど」

「すみません僕ももってきた資料は、ホテルとかばっかりでして」


 そういうと石さんは、自分の鞄から資料を取り出しました。

 綺麗なホテルの写真が並んでいます。


「すみません、僕もダンジョンは行ったことがなくてですね」


 いや、あなた一番ダンジョンに住んでいそうですけど

 うーんでもこれは偏見かな。

 "君、ダンジョンに住んでいそうな見た目してるね?"

 なんて言ったら、異世界ハラスメントになるんじゃないですか?

 "異世ハラ"があるかどうかは知らないけどね。


「そうなんですねー、私たちもダンジョンはよく知らなくて」

「まぁ、具体的にイメージいただけましたら、見積もり上げさせていただきますので、その時点でご一考いただけましたら」

「かしこまりました、イメージができましたら、綾部からメールさせていただきます」

「ではまた、ご連絡をお待ちしております」

「本日は、ありがとうございました」

「ありがとうございました、よろしくお願いします」


 打ち合わせは終わり、石さんが本社入り口を出ていきました。

 どうやって帰るんだろう?


 私と園田さんは、打ち合わせ室を片付けながら、

今後について相談していました。


「じゃあ、綾部さん!ダンジョンのイメージ作っておいてね」

「えぇ!?」

「私、ゲームもしないし、漫画もあんまり読まないし、あなたのほうが詳しいでしょう?」

「詳しくはないですけど」

「ダンジョンが出てきそうな漫画とか、買ってみたら?経費で落としていいから」

「分かりました、ちょっと見てきます」

「よろしくね」


 園田さんは、経理のお仕事に戻っていきました。

私にかまってばかりは、いられないようで、

少し申し訳なくなりました。


 よし、これぐらいは自分でやってみよう!

 要は、自分が旅行したいようなダンジョンを作ればいいんだ!

 別に戦ったりするわけじゃないから、見どころいっぱいの物を作ろう

 そう決心しました。


 仕事が終わり、帰り道、地元の大きな本屋さんで、冒険物の漫画を買いました。


「すみません、領収書お願いします。」

「但し書きはどういたしましょう?」

「ダンジョン資料用として、でお願いします。」

「かしこまりました」




 聞き返されるかと思って、色々答えを用意しておいたのに、あっさり書いてくれました。


 マンションの自室に帰り、食事とお風呂を済ませて、漫画を読みました。

 主人公が、病気の妹を救うため、ダンジョンにあるという、薬の材料を取りに行く王道のストーリーでした。


 よし、ダンジョンの描写がある!


 おかげでなんとなくイメージがまとまってきました。

 私は、漫画を参考にダンジョンをイメージして、ノートに描いてみました。

 とりあえずは洞窟、そしてモンスターっと、あとたまに宝箱。

 地底湖とかいいよね、なんか水晶とか設置して、綺麗に見せたい。

 不気味で可愛いキノコとかもいいよね。


 でもこれ、実際にあったら、たぶんダンジョン内ってすごく暗いよね。

 勇者一行は松明を持っているとしても、そこしか見えないし。

 照明をつけると嘘くさくなるし、かといって見えないと意味がないし。

 バスのライトだけでは、せっかくの景色も見えないかも。

 うーんこのあたりが課題かな。


 結構しっかり考えてみた。

 私ってまじめ!


 まぁ、そのあたりは専門の石さんに相談するとして、今日はここまでにしよう。

 とりあえず明日の帰りに漫画の続きを買おう。

 ダンジョンに潜った主人公が、絶体絶命のピンチなのだ、

 これでは気になって仕事が出来ないじゃないか。

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