園田さんとナポレオン
「いいアイディアじゃない!」
講習から帰ってきた仁和さんに、新規ルートの話をしました。
「絶対いけるよー、たぶん社長もすぐOKだよ」
「そうですかね!」
「問題は人手だね」
人手かぁ、うち社員少ないんだよね。
おっと従業員だった。
「この会社って従業員少ないですよね?」
「そだねー、あっちの世界に引っ張られない人でないと、仕事は難しいからね」
仁和さん曰く、耐性を持っている人は、
こっちの世界の住人5人に一人ぐらいらしい。
それってなかなか多くない?
「なかなか多くないですか?」
「でもみんなが、旅行業やりたいわけじゃないからね」
そりゃそっか。
「あおのちゃん、会社っていうのはね?」
むむ!説明かな!?
「出来ることはやればいいけれど、出来ないことは、お金でやってもらえばいいんだよ」
「そんなものですか?」
「社会ってそんなものだよ」
はぁ・・・
眼鏡かけなかった。
説明するほどでもない、
ということかな。
「なので、スタッフは、向こうの人材派遣会社を使うよ」
「モンスターの配置とか、ユウシャ一行とかですか?」
「そうそう、ちなみにマオウさんが運営してるよ」
マオウさんって魔王かぁ、
うーんこの急なファンタジー感。
ていうか、ユウシャ魔王に雇われてるんかい!
「今あるルートのモンスターも、同じ会社ですか?」
「そうだよー、異世界の人材派遣なら、マオウさんとこはシェアナンバー1だよ」
そりゃまぁ 魔王だし。
従うモンスターもおおいのかな。
たぶん カリスマ的なサムシングで
「あとはその"ダンジョン"だね」
「もともとある洞窟を、改造して作る感じですか?」
「ううん、じつはちょうどいい丘が、森の奥にあるんだよねー」
「丘ですか?」
丘ってHILLの丘かな?
「丘って横から穴あけたら、ダンジョンっぽくない?」
「本気ですか?」
「大丈夫、大丈夫、ちょっとした工事だけど、こっちの世界ではすぐ終わるよ?」
「そうなんですか?」
「今はこっちの世界に機械もあるし、魔法もあるしね」
異世界のいろんな種族の人が、重機にのって作業するのかな?
うーん見てみたい。
「というわけで、こちらも委託するよ」
仁和さんが、はいっと出してきたのは、
2枚の名刺。
1枚は、人材派遣会社M&Pの営業部 晩羽さん
もう1枚は、ゴーレム建設 営業部 石さん
「えっと・・・?」
「じゃ!あおのちゃん、メールで見積もり依頼して、アポとっといてね」
「えええええぇ!?」
「大丈夫,大丈夫!仕事依頼したいから、一回本社きてねって言えばいいよ」
「そ、そんな軽い感じなんですか!?」
「困ったら、京子ちゃんに相談するといいよ!」
京子ちゃんって、
あっ園田さんか・・・
名前似合ってるなぁ
「じゃ!私は部長と火山の方を考えてくるから!」
「そ、そんなぁ」
仁和さんは飛んで行ってしまった。
なんだか話が早いけど大丈夫かな?
本来はこう、偉い人で会議とか
あるんじゃないのかな?
「園田さーん!」
「はいはい」
私はさっそく泣きついた。
この間いっしょにお団子を食べてから、
ちょっと仲良くなったんだよね。
「はいはい、メールですね、この文を参考にしてください」
「ありがとうございます!」
さっすが園田さん!
「まぁ案が無いか聞いたのも私ですし、一緒に進めましょうか」
やったー
「はい!」
相変わらず、お顔はクールなままだけど。
やさしい!
「じゃ、さっそくメールを送信してください」
「分かりました!」
よーし、忙しくなるね。
メールを作っている最中に思ったことを聞いてみました。
「仁和さんも、社長もパパっと決めちゃったし、みんな決断早いですね?」
「あたりまえです、早さはそれだけ力になります」
ま、遅いよりはいいよね?
「ナポレオン曰く、戦力とは質量×速度の2乗だそうですよ? 早いとそれだけ有利なんです」
「ひいー急ぎますー」
園田さんは、古いものとか、歴史とか好きなのかな?
歴史の話をすると、止まらなくなるパターンの人だわ。
私は前に園田さんが、送信済のメールを改造して、2社2名にメールを送信しました。
ほぼ名前のところ変えただけなんだけど。
2社とも、返事はすぐに帰ってきました。
営業の人はレスポンスが本当に良いです。
「園田さん、2社とも本社に来てくれるそうです」
「ありがとうございます」
すると、園田さんから、トランプぐらいのサイズの紙の箱を渡されました。
「はい、綾部さんの名刺ね」
「あ、ありがとうございます」
わ、名刺だ!
社会人っぽい。
名刺入れ買わなきゃ!
どんなのが良いかなー?
「あなたは表情豊かですね、考えていることが分かります」
「えぇ!?そうですか?」
「あなたならきっと、他の会社といいお付き合いができますよ」
褒められた!
よし、打ち合わせもがんばるぞと、
でもなんだか私、
どんどんバスガイドから遠ざかっているような・・・?