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仁和さんと眼鏡

 さて、私が入社してから3日が過ぎました。

その間は本社で座学が続き、

眼鏡の仁和さんのおかげで、座学に集中できました。


 いいよね、眼鏡。


 そして4日目、本日も会議室に仁和さんと二人。

今日も異世界の事について、勉強をしていました。


 ガイドだし、いろいろ知っておいたほうが良いよね?

 旅行に行くときも、その地域の知識があれば

 何倍も楽しくなるからね。


「そういえば、もう日本人が考えているような異世界は無い、って言ってましたよね?」

「そそっ!なんか100年ぐらい前から、急に異世界転生者やら漂流者が増え始めたらしいよ」


 ふむふむ、何かあったのかな。


「ふぉっふぉっふぉ、昔話をしてやろう」


 と仁和さんが背中を丸めて話だした。

 おばあさんキャラだわ

 ポケットから出てきたメガネも、いつもより丸くて小さいし。


「長い年月をかけて、異世界転生者や漂流者が、現代の知識やら機械・化学なんかを持ち込んだおかげで、

だんだんと変わっていったのじゃが」


 ふむふむ。


「あるとき一人の異世界転生者が、元世界と異世界をゲートでつないでしもうたのじゃ、

自由に行き来できる扉が現れた時、どうなったと思う?」

「えっとー 戦争とかですか?」

「ううん、正解は、大企業が資源や安い労働力を欲しがって、工場を建てまくったのでした。」


 ごめんなさい異世界!


「こうして、いっきに現代化が進み、今のような状態になったんじゃよ」

「そうだったんですねー あの勇者さんも作り物だったんですね。」

「いや?あの人はユウシャさんだよ?」

「えっそうなんですか?」

「あっちの世界で、雷の魔法使えるのは、ユウシャさんだけなんだよ、 じゃよー」


 あ、わざわざ言い直した。


「じゃあご本人なんですか?日雇いで働いてましたけど」

「まぁ、ユウシャなんて今いっぱいいるしね、日本でいうと藤原さんみたいな物だよ じゃよー」


 それは、かなり居るのでは?

 クラスにもいたよ?藤原さん。

 会ってないなぁ、藤原さん、元気かな?


「ええ、ユウシャって名前だったんですか?」

「うん、今はもう戦う相手もいないし、普通に働いたほうがいいんじゃないかな?」

「そうなんですね、時代は変わったんですね」

「まぁー 元世界の人間が聞いたら、がっかりしちゃうよね」


 もう背中は丸くなくなっていた。

 おばあさんキャラやめたのね。

 飽きるの早いなぁ。


 歴史は少しわかったんだけど、

どうにも腑に落ちないことがありました。


「私、旅行好きなのに、異世界旅行とか聞いたことなかったんですよね」


 ちょっと旅行とかには、自身あったんだけどな


「ま、このツアーは団体様むけだからねー、だいたいは企業さんの社員旅行が多いんだよ」

「どういうことですか?」

「異世界はね、なんていうか理みたいなものが違うんだよ」


 コトワリ?


「異世界には、魔法とか勇者とかいるでしょ?でもこっちの世界にはいないのに、

異世界にいくと当たり前のように感じちゃうんだよ、なんていうか、信じちゃうんだよ」


 そういえば、この間のツアーの時

 だれも疑ってなかったなぁ。


「人をすぐ信頼したり、色々なことを信じやすい人っていうのは、あっちの理に引っ張られやすくてね?

帰ってこれなくなることが、たまにあるんだけど」


 なにそれこわ!

 異世界、ヤバイ所なのでは?


「団体だと、そんな人はほんの少数だから、みんなで帰ろうって言うと、帰れるんだよ」

「ええ、怖いです!信じやすい人ほど、帰ってこれなくなるかもしれないんですか?」

「うん」

「大丈夫、大丈夫!ちゃんと自分で、物事を考えられる人は、元の世界を見失わないよ」

「ええぇ 私いっぱい自分で考えることにします!」

「それがいいよー」

「でも、信じやすい人、帰れなくなったら可哀そうですね?」


 今までもいたのかな?帰れなくなった人。

 信じやすい人かぁ、人を信頼するって悪いことじゃないと思うんだけど、

 いい人ほど帰れないこともあるのかな?


「たしかに可哀そうだね、でもね?」

「え、はい」

「すぐに信頼する人は、いい人に見えるかもしれないけれどね?

ある意味で、自分で考えることを放棄しているんだよ」


 厳しいなぁ


「まぁかといって、人を疑ってばっかりの人もそれはそれで、社会で生きづらいだろうしね、

社会人は何事も"ほどほど"が肝心だよ」


 一息おいて、仁和さんが静かに口を開いた。


「あおのちゃん、儲かるっていう字はね、"信じる者"って書くんだよ」


 確かに!?

 私が驚くと、仁和さんはケラケラ笑いだしました。


「冗談よ、本当は人に諸で儲かるだよ あおのちゃん、信じた?」

「もー!仁和さん、信じましたよ!」

 

 この人には、かなわないなぁ。

 この話だって、どこまで信用していいのやら。

 たぶん仁和さんは、最終的に信じるも信じないも

 自分で考えることが重要なのだと、教えているのだと思いました。

儲かるという字は、ネットなどでよく"信じる者"だといいますが、実際には、イ+諸で 儲 だそうです。

諸とは、蓄え等の意味がありますので、人が何かを蓄えている様をあらわした漢字となります。

まぁ実際に信者はお金になるのでしょうから、

"儲"は”信+者”だと"信じた者"もいるのでしょうね。

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