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異世界とゴミ

 さて、本日はツアーはお休みです。

 ルートが増えたので、みんなでルートのお掃除やメンテナンスを

 1日かけて行います。


 定期的にメンテナンスしないと見栄えが悪くなっちゃうからね。


 朝10時 よく晴れたいいお天気、異世界ゲートの先の村に

 いつものメンバーと現地エキストラが集合しました。

 今日はみんなジャージや動きやすい服装です。


 集合時間になり、前に出た社長がメガホンで話し出します。


「はい、みなさんおはようございます」

「おはようございまーす」

「えー本日は天気もよく、絶好のメンテナンス日和となりました」


 ……メンテナンス日和ねぇ


「今日しっかりと綺麗にして、お客様を気持ちよくお迎えできる、綺麗な異世界をつくりましょう」

「はい」

「まぁ今日はね、いつもの恰好しなくてもいいし、ユウシャさんも剣の代わりにホウキでおねがいしますね、ホウキでチャンバラするのは、みなさん中学生で卒業していると思いますのでね」


 軽い笑いが起きる


「えー本社のメンバーも、普段体を動かしていませんから、今日はよく動いて……」


 偉い人ってほんとに話が長いなぁ。

 長く話せるから偉いのか?

 偉くなると、話が長くなるのか?

 偉い人ほど、人前で話すことが多いからそう感じるのか?


「それではみなさん、本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いしまーす」


 ようやく始まりました。

 バラバラとそれぞれのグループに分かれていく中で、

 仁和さんが本社組を集めます。


「さ!私たち本社組は森からスタートだよ」

「森っていうと、最初のコースの洞窟まで続く道の左右にある森ですよね?」

「そうそう、ここは結構ゴミが多くてハードなところなんだよ」

「なんで私たちがそんなハードなところに?」

「くじ引きだよ」

「くじ引きかぁ」


 くじ引きじゃしょうがないよね。


「ところで、今日もいるんですね、鈴ちゃんと星野さん」

「なによ!いたら悪いわけ?綾部あおの!」

「私もイセツーのコースをくまなく見られるチャンスですので、参加させていただきますよ」


 楽しそうな見えてるスパイ達。

 みんなもうあんまり気にしてないけどね。


「それじゃあ移動しましょうか」


 仁和さんを先頭に、私・繭ちゃん・園田さん・八木ちゃん・鈴ちゃん・星野さん・社長・関さん。

 9人パーティーです。


「普段から軽く掃除してますけど、そんなにゴミって出るんですか?」

「そう思うでしょう?それが出るのよ」

「毎年1回はやってるんだけど、コースが増えたから半年に1回でもいいかしらね」

「そうなんですね」


 話しているうちにすぐに森に到着しました。


「じゃあ各自ゴミを集めてきて、ここに分別して回収しましょうか」

「はい、分別って可燃ごみとか不燃ごみですよね」

「そだね、異世界だとさらに魔法ゴミっていうカテゴリーがあるよ」

「魔法ゴミっていうと、あれですね?」

「そう、その名の通り魔法のかかっているゴミのことね、捨てるには魔法を解除してから捨てるか、専門の業者にお願いすることになるわね」

「私と園田さんは以前、あの歌う花で初めて知りましたよ」

「そうだったわね、2人の焦った顔を思い出すわ」

「もうそれは良いじゃないですかー」


 あの花にはほんとお世話になったわね


「魔法ゴミはどんな魔法がかかっているか分からないからね、安易に燃やせないのよ」

「そうなんですね」

「粗大ゴミだったり、魔法ゴミは捨てるのにお金がかかるから、不法投棄されていることがあるんだよ」

「はい」

「むしろ異世界は不法投棄の恰好の的になってるという現状よ」

「なるほどですね」


 夢のない話だなぁ。


「それじゃあみんな、がんばって掃除しましょう」

「はーい」


 みんなは各々ゴミを探しに行きました。


 私も周辺を見てみると、ビニールのかけらだったり、お菓子の箱だったり

 色々と落ちていました。


 なんだろうこの紙、パンフレット?が落ちてる。

 ……ビッグムーンの異世界ツアーパンフレットだった。

 絶対鈴ちゃんだわこれ。

 あとでこれをネタに頭ワシャワシャしてやる!


 そんなことを考えていると、


「みなさ~ん、こっちに来てください」


 社長の声がしました。


 メンバーがぞろぞろと社長の声の方へ集まってきます。


「どうしたんですか?」


 誰に聞くでもなく尋ねると、先についていた仁和さんが答えてくれました。


「あおのちゃん、不法投棄よ」

「ええ!?」


 そこにはちょっとした生活家電や、謎の機械が落ちていました。


「ひどいですね」

「そうねぇ、自然にできた森っぽく作ってあるから、森にはたまにこうやって不法投棄されてるんだよね」

「監視カメラとか無いんですか?」

「広いからつけてられないし、景観が崩れちゃうよ」


 それはそうなんだけど。


「なんですかこれ、ヘアアイロン?」

「こっちは目覚まし時計ね」

「なんでこんな物が捨ててあるんですかね?」



「ところでこの、謎の機械は何でしょうか?」

「うーん分からないね、最近投棄されたみたいね」

「ちょっと綾部あおの!こっちには掃除機もあるわ」

「だからなんでフルネームなのよ」


 手分けして探したところ、結構な量のゴミが出てきました。


「家電が新たに3個ほど出てきたわね」

「これって、リサイクルショップで引き取ってもらえたりしないかな?」

「うーん、さすがに無理じゃないかなぁ」

「ですよねぇ」

「ちなみに、リサイクルって意味知ってる?」

「ゴミや使わないものを、また使うとかそんな意味じゃないんですか?」

「広義ではそうなんだけど、厳密にいうと違うんだよー」

「そうなんですか?」

「3Rなんて言われてるんだけどね、リサイクル(Recycle)は資源として使うこと、リユース(Reuse)は捨てずに使うこと、リデュース(Reduce)はそもそもゴミを減らすこと」

「なるほどー」

「世にいうリサイクルショップは、厳密にいうとリユースショップということになるわね」

「そうだったんですね」

「最近は他に2つ加えた5Rなんて言われてたりもするよ」


 みんな色々と詳しいなぁ。


「これってどうするんですか?」

「ちょっとしたゴミは良いんだけど、機械類は不法投棄だし警察かなー」

「警察もあるんですね」

「もちろんあるよ」


 じゃあ任せといたらよさそうだね。

 それにしても異世界警察かぁ。

 ちょっと見てみたいかも。


「けど、年々増えて行ってるわね、ゴミの量」

「そうですねぇ」


 仁和さんと園田さんが嘆いている。

 

「なにか対策できないんですか?」

「うーんあくまでこの森は、絵に描いたような理想の異世界の森だからね、機械は置きたくないんだよね」

「カメラはケーブルや電気が要りますもんね、乗り越えられないようなフェンスもおかしいし……」

「森の向こうを大きな川にしてしまうとかどうです?」

「いくらかかるのよそれ」


 みんなそれぞれに意見を言い合っています。


 うーんつまりは景観を損なわないで、人がごみを捨てにくいようにできればいいのね。

 外から人が近づくとブザーやサイレンが鳴るとか?

 うーん機械は難しいかな、かといって夜に警備員立てるのもさすがにお金がかかりすぎるし。


 何か無いかな。

 パッと見は景観を損なわない、森に会っても不自然じゃないもので、

 人が近づくと音が鳴る物。


 私の心の中で音がする

 なにか思い出そうとしている。

 聞こえる……

 (~♪ ~♪)

 

 もうすこし……


 (……ぁ?……~♪)


 あぁ アレだわ


 (~の~談なら~? マジ~~~真~♪)


 アレしかないわ。


 (魔法の相談なら~?)


「マジックショップ真!」

「わっ何!?急にどうしたの?」

「園田さん!あの花ですよ!」

「えっ?」


 ?だった園田さんの顔が、みるみる納得の顔に。


「なるほど、いいかもしれないわね」

「2人とも、どういうこと?」


「仁和さん、本社の歌う花ですよ」


 仁和さんも納得の顔になりました。


「私に任せといて」


 そういうと仁和さんは、電話を取り出しました。


「もしもし?間地さん?あの花ありがとうね、ところであの花もっとないの?宣伝してあげるから送ってくれない?ロハで」


「園田さん、ロハって?」

「無料でってことよ、無料→タダ→只→ロハ ってな感じの隠語よ」

「なるほどー」


 ピっと

 電話を切った仁和さんがこちらに振り向きました。


「よしこれでオッケーね、後日みんなで来ましょうか」

「はーい」


 

 後日、森には件の花が咲き乱れ、

 不法投棄されるゴミが劇的に減ることになります。


 また、後から聞いた話では、間地さんは2号店を出店したそうです。


 めでたしめでたし。

 

 ……。


 これ、不法投棄してたの間地さんじゃないよね?

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