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はじまり②

異世界・・・それは剣と魔法、勇者や魔王のファンタジーの世界。


しかし、異世界からの転生者やトラベラーが増えすぎ、今ではすっかり現代日本と変わらない世界となっていた。


そんな中、お客様の夢を壊さず、いわゆる”異世界”を体験することができる会社がある。


その名は「株式会社 異世界観光開発」

「はい、お茶どうぞ!」

 

 茶托と湯呑を持った仁和さんが

 テーブルにコトっと置いてくれました。

 世界が変わっても、湯呑と茶托は変わらない。

 

「ありがとうございます」

「お菓子もどうぞ」


 出てきたのは、緑色で半透明のぷるぷるした物体。

 よくみるとさっきのオークのデフォルメされた顔が描かれている。


「それ、オーク羊羹抹茶味ね、新商品なの、付いてる勇者の剣型爪楊枝で食べてね?」

「あ、ありがとうございます」


 剣使ってなかったけどなぁ。

 食べてみるとこれがなかなか美味しかった。

 疲れていただけかもしれないけれど。


 カードを渡し終えた後、事務所に案内され、仁和さんと二人で休憩中です。

 落ち着いた雰囲気の中、仁和さんが説明を始めました。


「まぁアレよ!外国人が日本に来て、侍は?ニンジャは?って言ってるようなものよ」


 うわぁ分かりやすい。


「じゃあ将軍もいないんですかぁ?」


 どうでもいい質問をしてみた。


「うん?将軍(魔王)は居なくもないかな〜」


 いるんだ。

 まぁ勇者もいたしね。

 どうでもいいけど。


 仁和さんは、とても親しみやすい人でした。

 せっかくだし、今のうちに色々と聞いておくことにしました。


「日当を渡した人たちは、現代人なんですか?」

「違うよ?魔法つかったり、角生えた人なんかいないでしょ!」


 長い金髪が揺れ、ケラケラ笑っている。

 美人が笑うと可愛いな。


「それじゃあ?」

「もちろんコッチの人だよ、派遣会社から来ている日雇のエキストラだね」

「普段は近所の製紙工場で働いてるよ」

「はぁ、そんなものまであるんですね」


 そういえば服とかゲームとか言ってた気がする。

 普通に洋服に着替えてたし。


「皆が知ってる歌で有名な家電量販店もあるし、フリースで有名なあの服屋さんもあるよ」

「マジですか」


 進んでるなー異世界って。


 お茶とお菓子で、仁和さんと世間話ができました。

 異世界で世間話とは、うーん、この場合世間とは何処になるのやら

 落ち着いたおかげで、調子が出てきました。


「あのー説明会っていつもこんな感じなんですか?」

「私が担当のときはこうだよ、いろいろと世界から説明するより早いでしょう?」

「そうですかね?」


 なんだか、

 (行動力の塊)

 といった感じの人だなぁ

 

「いやもう、職業体験じゃないですかー?」

「ふふっ楽しかったでしょう?」

「それどころじゃなかったですよう」


 こんどはふふっと笑っている。

 この人を責められる人なんているのだろうか。


「ねね?どうだった?」


 仁和さんがキラキラした瞳で、まっすぐこちらを見つめている。


「真剣に考えてほしいな!誰でもできることじゃないからね!」

「そうなんですか?」


 まぁたぶんあの説明会のあのブースに仕掛けがあるんだろうけど。

 どうせ説明を受けても分からないだろうし。

 たぶん適正ある人しか座れないとかなんでしょう、

 分かる!分かるよ!


「どうかな?どうかな?」

「え、今決めるんですか?」

「あおのちゃんと、お仕事したいなぁ」


 ドンドン顔を近付けてくる

 まぁ、想像していたものとは違ったけど

 これも旅行業には違いないか……?


「うーん」


 どうしましょうかね、

 いきなり体験させられるし、

 今すぐ決めてほしいとか詐欺なんじゃないの?

 怪しくない?

 でもこの仁和さんにはちょっとまいったね、

 可愛い美人とか大好きなんですが。

 と悩んでいると、

 ね?と可愛くお願いされてしまった。


「やりましょう!」


 うーん可愛すぎる!

 

 即決しておきました。

 

「ありがとう!これから宜しくね!」


 抱きつかれるかと思う様な勢いで、手を握ってきた。

 ドキドキするわ!

 吊り橋効果というか、異世界効果?


「はい、宜しくお願いします!」


 ぎゅっと握り返しました。


「じゃあじゃあ、本社戻ろう、会社を紹介するよ!」

「はい!」


 元気だなー。

 ぜったい良い人だわ。

 根拠はないけれど。


「じゃあバスに乗って乗って!」

「はい」


 仁和さんは事務所に鍵をかけ、バスのステップを上がろうとした時。


「あっ、そうだった、こちら運転手の関さんです」

「どうも」

「よ、よろしくお願いします」


 いたんだ?

 全然気が付かなかった。

 そりゃいるよね、運転手さん。


 バスは発車し、本社に向かっています。


「仁和さん、本社はどっちにあるんですか?」

「元の世界だよー」


 元の世界っていうのは、こっちじゃないという意味かな?

 いやでも、世界があっちとこっちしか無い、とは限らないし

 そもそも仁和さんはどっちの人なんだよう!


 なんて考えていると、仁和さんが住所を教えてくれました。

 それは、私の家から電車で15分ぐらいのビル街にあるそうです。


「あおのちゃん、旅行好きなんでしょ?知らなかったの?代理店いっぱあるよ?」

「私、ツアー使わないんですよね。自分で調べて企画して、自分で行くのが好きで」

「はぁーなるほどねー、つまり商品開発部も興味あるわけね!?」


 あれ?そんな話だっけ?

 まぁ実際旅行代理店のパンフレットを、参考にすることもあるんだけど。

 確かに以前【異世界】なんていう文字を見かけた気もする。

 てっきり比喩表現だと思ってたけど。

 むしろ殆どの人がそう思うんじゃないかな?


 バスは1時間ほど走り、とあるビルの前で降ろされました。

 関さんは車庫まで行くそうです。


「ついたよー、前に見えますのが本社でございます!」


 なんかポーズとってるし。

 可愛い!


「へー立派なビルですね!」

 

 7階立て位の、古くもなく、新しくも無いような。

 オフィス街のビルの並びの真ん中でした。


 大きな会社なのかな?


「こちらの3階が、本社オフィスでございます。」


 まだポーズとってるし。


「3階だけですか?」

「3階だけだよ?他の階はそれぞれ違う会社だからね。」

「分かりました」


 あっポーズ止めてる!

 可愛いかったのに。

 写真撮りたかったなぁ


 私たちはビルの中へ入り、エレベーターで3階へ上がりました。

 エレベーターを降り、会社のロゴが貼ってある自動扉の先に、

 受付のカウンターが設置してありました。

 カウンターの隣を進むと、そこにはオフィスと働く人達が見えました。

 仁和さんは、くるっと振り返り、笑顔で言いました。


「ようこそ!株式会社 異世界観光開発へ!」

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