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繭ちゃんとお泊り

「さあさあ、入って入って」

「お邪魔致します」


 繭ちゃんが泊まりに来た。

 どうしよう!?

 とりあえず座ってもらって、話を聞こうかな。

 言いたくないことだったらどうしよう。


 いろいろと考えながら、テーブルにご案内。


「座って座って、コーヒーでいいかな?」

「はい、ありがとうございます」


 コーヒーメーカーのボタンを押す。

 来客用のマグカップを出し注ぐ。

 綺麗にしててよかった。

 来客が少なかった訳ではないよ?

 

 繭ちゃんは荷物を置き、ソファーに座っている。

 小旅行レベルの荷物のボストンバッグ

 着替えとかかな?


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 両手で受取り、両手で飲んでいる。

 両手で飲むの可愛いよね?


「おいしいです」

「でしょう?コーヒーメーカーハマって買っちゃったんだよー」

「そう……ですか……良いですね」


 若干の重苦しさを感じる。


「さて、今日はどうしたの?」

「実は……母親から逃げてきまして」

「それはまたどうして?」

「母は私を実家に帰そうとしてくるんです」

「え、そうなの?」

「今日は借りているマンションに帰ると、母がいました」


 怖!

 おそらく着物だろうし、すごい怖いかも。


「なので逃げてきました、……すみません」

「いや、ぜんぜんいいんだけどね?」


 なんだか元気がないなぁ

 それにしてはなんだかしょんぼりしてる。

 "いたから逃げてきた"だけではない気がするけど。

 何か元気づけて上げられないかな

 あ~沈黙は良くないんだけど


 どうしようかと焦っていると、頭の中に1人思い浮かびました。

 そうだ、鈴ちゃんなら同世代だし、何かいい考えがあるかもしれない!


 私はスマホを取り出して、

 こっそりと鈴ちゃんにメールを打とうとしたところ、


 "ピロリロリロリー♪ お風呂が沸きました"

 

 静かな部屋に突然お風呂のお知らせが響く。

 びっくりしてスマホ落としちゃった。


「わ、びっくりした!そうだお風呂沸かしてたんだった」


 繭ちゃんも驚いていました。


「ほらほら、繭ちゃんとりあえずお風呂入ろう、気持ちが落ち着くよ」

「私は、その、先輩の後で大丈夫ですので」

「いいのいいの、私は後で入るから、繭ちゃんに元気になってほしいし」

「あの、ありがとうございます」


 繭ちゃんはお風呂のほうへ歩いていきました。


 さて、布団どうしようかな……?

 自分用のベッドとスペアの布団しかないんだけど。

 と、その時。


 排気量の多そうな車の音が数台。

 そして急ブレーキ音。

 部屋のチャイム連射。


 ピンポーン ピンポーン ピンポーン

 ドンドンドン!


「わわ、何々!?」


 恐る恐るカメラを見ると、

 そこには鈴ちゃんがアップで写っていました。


 えぇっ鈴ちゃん!?


 訳もわからぬまま、扉を開ける。

 

 ガチャ

 

 バン!


「綾部あおの!ちょっと大丈夫なの!?」

「えっなになに?大丈夫って?」

「はぁ~~~?」


 鈴ちゃんの後ろには、民間警備会社の武装した人が数名ついてきていました。

 鈴ちゃんは、フルフル震えながら、


「……どういうこと?」

「いや、むしろ私が聞きたいんだけど、血相変えてどうしたの鈴ちゃん」

「どうしたのじゃないわよ!こんなメール送っておいて!」


 鈴ちゃんはスマホの画面を見せてきました。

 そこには……

 ”鈴ちゃんたすけて” 


「あーあのびっくりした時だ、途中で送信しちゃったんだね」

「あんたねぇ、何事かと思って飛んできちゃったじゃないの!」

「ごめんね、お風呂が沸いた音にびっくりしてスマホ落としちゃって」

「まったく、何事も無かったから良かったけど」

「心配してくれたの?ありがとう」

「ふん!心配なんてしてないわよ!」


 はぁ優しくて可愛い。

 いつも生意気だけどギャップがまた……


 そんな時、お風呂場からバスタオル姿の繭ちゃんがひょっこり顔を出した。


「あの、何かあったのですか?」

「えっ!繭美?」


 鈴ちゃんは繭ちゃんの姿を見て、また震えだした。


「綾部あおの!ちょっとこれはどういうことなのかしら?繭美を連れ込んでこんな姿にして!」

「えぇっ、お泊りに来てるんだよ、お風呂に入ってただけじゃない」

「心配してきてみれば……」


 あ、爆発しそう。


「このエロ綾部あおのーーー!」

「えええっちょっと、鈴ちゃん!? 繭ちゃんちがうよ!?」


 鈴ちゃんの爆発と私の弁解に

 繭ちゃんはフフフっと笑いだしました。

 

 おぉ元気になったかも?

 さすが鈴ちゃん。


 爆発した鈴ちゃんをなんとかなだめて、

 後ろの警備会社の人には帰っていただきました。

 繭ちゃんは少し元気を取り戻しました。


「で、鈴ちゃんは帰らないの?」

「帰ったら繭美になにするか分かんないでしょ?私も泊まるわ」

「えええっ何もしないよ!?」


 鈴ちゃんの中で私はどうなってるんだ。


「あのー鈴さん?ベッドも一つですし、布団ももう1セットしかないんですけど」

「そうね、ベッドで2人寝て、一人は床で布団になるわね」


 それってもう私は床で寝ろってことだね。

 お嬢様を床に寝かせるわけにはいかないでしょう?


「分かったよう、2人はベッドで寝てね」

「あの、先輩私が、床で寝ます」


 繭ちゃんが提案してきた。


「いいんだよ、ありがとうね、私は2人に寝てほしいんだよ」


 優しい、ほんとはちょっと繭ちゃん抱いて寝たかった。


「ところで鈴ちゃん、さっきの警備会社みたいな人はなんなの?」

「あーあれは民間の警備会社の人よ」

「お店のセキュリティとかの?」

「そう」

「どうゆうこと?」

「私自身にセキュリティがかかってるのよ、腕輪のロックを外すと警備の人が飛んでくるのよ」

「へーなにそれ面白い」

「あと私の許可なく服が脱げても警備が飛んでくるのよ」

「それは面白すぎない?」

「まったく冗談じゃないわよ、とりあえず腕輪のロックを外しながら走ってきたわ」


 なるほどね

 この子もなんだかんだで先輩思いで可愛いよね

 こんな可愛い子なのに……


 なんだかこのセキュリティをかけた人は

 鈴ちゃんを物扱いしてるような気がして

 少し苛立ちを感じてしまった。


 結局繭ちゃんの逃げてきた理由は聞けなかったけど。

 私達のおかしなお話で、少し元気がでたみたい。

 良かった。


「じゃあ、明日も仕事だし寝ましょっか」

「はい、おやすみなさいませ」

「おやすみ、綾部あおの」

「なんで毎回フルネームなの、おやすみ」


 ……眠れない。

 まぁそれがですね?

 自分のベッドでお嬢様2人が寝てるんですよ

 狭いから密着して

 しばらく見ていたおかげで

 寝不足になりました。


 翌日、眠たい目をこすりながら起きると、

 レンジに何か入れっぱなしになっているのが見えました。

 

 昨日のファストフードだ。

 そういえば、ご飯食べてなかった。

 私は3人分朝食を用意し、

 お嬢様を起こしに行きました。


 2人は私のベッドで寄り添って寝ていました。

 なにこの光景やばい!

 ベッドの周りだけ空気が違う!

 お嬢様は寝ててもお嬢様なんだね。


「お嬢様!朝ですよー」

「ふぁあああああい」

「はぁああい」

「可愛い」


 実はかなり時間が無かったため、3人で急いで朝食をすませ、

 バタバタと会社に向かいました。


「おはようございます」


 3人そろって挨拶しながら、会社に入る。

 仁和さんが私達を見つけ、


「おはよう、あら3人そろって出社なの?仲いいね」

「でへへ、そうなんですよ」

「たまたまよですよ、ちょっと早く入ってよ綾部あおの!」

「だからなんでフルネームなの」


 全員あつまり、業務開始。

 今日はなんと、勇者視点の魔法の納品日です。


「うんうん魔法納品されてるよー、京子ちゃん!さっそくツアーに入れ込んでいいかな?」

「試して、現地スタッフに伝えといてくださいね?私はパンフレットに追記しておきますので」

「はーい!お願いね」


 あの魔法届いたんだ

 どうやって届いたんだろうメールとかかな?

 相変わらずどういう仕組みなのかさっぱりだけど。


「あおのちゃんも繭ちゃんも、マニュアル読んどいてね」

「はい!」


 新しいルートも順調だし、新しいアトラクションも増え

 差別化もできたんじゃないかな?


「さ、忙しくなるよ、他の企業にも負けないようにがんばろう!」

「はい!」


 勇者視点の魔法はあっさり受け入れられ、すぐにスタートしました。

 新ルートも好評で、私もお客様から満足の声をたくさん聴きました。

 園田さんもアンケート結果は順調だと言っていました。

 このまま順調に推移していくと思っていました。


 1か月後


 いつも通り出勤すると、仁和さんと園田さんと社長がうなっていました。


「うーん」×3

「おはようございます、朝からどうしたんですか?」

「おはようあおのちゃん、それが、客数や売り上げが伸びてないのよ」

「えええ、そうなんですか?」

「それどころか、少しずつ減っていってるわね」


 なんでだろう、勇者視点も面白いし、ルートも作ったのに。


「BMや若松はどうなんです?」

「両方とも売り上げを伸ばしているわね」

「なにか特別なことをやってるんですか?」

「ううん、スタンダードなプランだけなんだけど」


 なんでだろ~と考えていると、全員集合して考えていました。

 さらにルートを増やすべき

 もっと奇抜なアイデア

 他には無いプラン

 値段を下げる

 ネットで口コミ

 等々色々な意見が飛び交う中。

 オフィスの来客チャイムが鳴りました。

 八木ちゃんが応対に出ていきました。


「このままだとまずいわね」


 園田さんも困っている様子。


「そうですねぇ早急になにか作戦を」

「みなさんちょっといいですかぁ?」


 戻ってきた八木ちゃんが、お客様を連れてきました。

 そこには、和服の女性。

 若松鶴乃さんの姿がありました。


「ご無沙汰しております、若松でございます」

「ご無沙汰です」

「みなさん、そろそろお困りではないかと、参上いたしました」


 また深々とおじぎをしました。

 空気が澄む

 BGMが和風に変わる。


「どういうことですか?」

「依然申し上げた通り、今のあなた方ではBMや他社に勝てないどころか、勝負にもなりません」

「何故です?」


 この人がむしろ何かしたんじゃないですか?

 こう、悪い噂流すとか?


「そこの表情豊かなあなた、わたくしは何もしておりませんよ」

「心が読まれた!?」


「弊社のホテルを使うというお話を、受けてくださるのであれば、特別に教えて差し上げましょう」


 ゴクリ


「御社がなぜ戦えていないのかを」


 静まり返るオフィス

 着物の女性は大真面目なようです。

 繭ちゃんは私の後ろに隠れていました。


 さて、どうする?この提案……

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