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役に立つかもしれない!? ~異世界開発ベンチャー企業論~  作者: imuran
新商品(新ルート)開発編
15/27

2人と眼鏡

 さて、新ルートにむけて動いてきましたが、

 いよいよ大詰です。


 今日もいつも通り出勤し、園田さんと相談中です。


「綾部さん、お願いがあるんですけど」

「はい、なんでしょう?」

「ゴレ建の石さんとM&Pの晩羽さんの両方から、最終の見積もりを貰って欲しいんですよ」

「分かりました!」

「値段はもう私が、2人と話して決めてあるので、書面のデータをメールで貰ってくださいね」

「はい!」


 うーん、我ながら返事だけは良い。

 見積もり最終ということは、もう支払う準備があるんだね

 社長ほんとにお金借りてきちゃったのかぁ

 やり手なのかもしれない。


 と、いうわけで私は、以前の名刺を見て、石さんに電話をかけました。

 個人の番号があるということは、スマホがあるのか。

 なんでもあるなぁ、異世界。


「あ、お世話になっております、異世界観光開発の綾部です」

「お世話になっております。石です」

「すみません、お支払いして、正式に依頼出したいので、最終の見積もりのデータをお願いしたいんですけど」

「はい、かしこまりました、すぐにメールさせて頂きますね」


 ほ、なんとかなりそう。

 いやー結構こういうやり取りに慣れちゃったね。


「……あのーすみません御社、法人格は前後どちらでしたっけ」

「えっと、少々お待ちください」


 ホウジンカク?


「園田さん、ホウジンカクってなんですか?」

「あー、"株式会社で前"って言っておいてください」

「わかりましたー」


「すみません、お待たせしました、株式会社で前です」

「ありがとうございます、かしこまりました、それではすぐ送りますので、ご確認お願い致します。」

「ありがとうございます、失礼します」

「はい、失礼します」


 よし、これで一つ終わりっと。

 電話を切って、顔を上げるとニヤニヤしている鈴ちゃんがいました。


「あっれー先輩、法人格もしらないんですかぁ?」


 !チャンス!?


「うん!知ってるの?教えて教えて?」

「当然ですよ!仕方ない先輩ですねぇ」


 鈴ちゃんは、胸ポケットから眼鏡ケースを取り出し、

 スチャっと装着した。


「そもそも法人っていうのはですねぇ、法によって人じゃない物に、人の権利や義務を持ってもいいよと認められた、人の集まりのことです」

「ふむふむ」


 さわさわ


「まぁ今の電話の場合は、"正式名称は、法人格の株式会社は前か後ろのどっちに付くんですか?”と聞かれてたわけです……って何さわってるんですか!!!」

「んー?なるほどねー賢いねぇ」

「ちょっと、話きいてましたぁ? 触るのやめてください!」

「うーんもうちょっとで理解できそう、もうちょっと触ってたら理解できそう」

「触らないで下さいよもう!こっちのほうが理解できないですよ!」


 ペシっと払いのけられた。

 鈴ちゃんは、眼鏡をしまいながら。


「まったく!なんで仁和さんはこんな人雇ったんですかね!」


 ぷんすこ行ってしまった。

 

 可愛い。

 しかし、電話の内容から聞いてたのね

 あの子、私の事好きすぎない? 気のせい?

 さて、とりあえずもう1つのM&Pの晩羽さんに連絡しないと。


「お世話になります、異世界観光開発の綾部です」

「お世話になっております、晩羽です」

「すみません、最終の見積もりを頂きたいんですけど」

「かしこまりました、ほんなら派遣するのは、リザードマンで決定でええですかね?」

「はい、お願いします」

「普段みんな洋服きてるから恥ずかしがるモンスターもおるんですけど、リザードマンは半裸OKですし、鎧きて剣持たせといたらそれなにり見えますからね」

「そ、そうなんですね」

「ほな、見積もり送らさせてもらいますね」

「弊社の正式名称わかります?」

「頂いた名刺に書いてありますので大丈夫です、ありがとうございます」


 なるほど、晩羽さんは名刺をしっかり管理してるんだね。

 とりあえず、バランスを保つために繭ちゃんの所にいこう。


「繭ちゃん、お疲れ様!何してるの?髪撫でて良い?」

「は、はい……今、園田さんを、手伝ってます」

 

 さわさわ

 よし! 私の平和が守られた。


「どれどれ、うーん減価償却表?」

「あの、えっと、お金、使いましたし……」

「減価償却って良く聞くけど、どういう意味なの?」

「えっと、それはですね……」


 繭ちゃんも、胸ポケットから眼鏡を取り出し、

 両手でゆっくりとかけた。

 

「減価償却は、簡単にいうとですね、高い支払いを、分割して費用を計上することです」

「ふむふむ」


 なでなで


「例えば、ですね、車を会社で買って、そのまま経費にすると、その、その月は赤字になりますよね……なので、その月だけ大赤字にするのではなく、割って計上することで、毎月ちゃんと利益がでてますよ、と銀行さんにアピールできたり、します」

「なるほどー」


 お手本のような生返事。

 生は危険ですね、ちゃんと火を通さないと、

 足のはやい物はすぐに傷むからね、

 お魚とか、車とかね。

 そんなことより眼鏡めっちゃ可愛い。

 はぁ~、連れて帰って一緒にご飯食べてお風呂に入ってお着換えして抱いて寝たい。


「あの、詳しく説明すると、その、長くなるんですけど……」

「大体わかりました!ありがとうね、あと眼鏡めっちゃ似合ってて可愛いね」

「あの、あ、ありがとうございます」


 繭ちゃんを誉めていると、また鈴ちゃんがやってきました。


「ちょっと先輩、私達の話ちゃんと聞いてたんですか?」

「うーん、聞いてたよ」


 私は2人から聞いた話を、一言一句そのまま返しました。

 2人はすこしびっくりしていました。

 

「へ、へぇ先輩記憶力だけはいいんですね?」

「でへへ、そうなの、記憶力だけは良いんだよ、ってだれが記憶力だけの女やねん」


 晩羽さん譲りのノリツッコミ


「なるほど、仁和先輩が綾部先輩を雇った理由が少し分かりましたよ」

「分かってくれたかね」

「たしかに、記憶力は評価に値しますね、他に評価するところはないですけど」

「なにおう!私は2人をこんなに評価してるのに!」

「どんな評価ですか?」

「繭ちゃんは、可愛いし、かしこいし、おしとやかだし、美人だし、やさしいし、髪綺麗だし、触らせてくれるし」

「私は?」

「鈴ちゃんは、可愛いくて元気だね?」

「ちょっと!繭美のほうが評価高くないですか!?」

「そんなことないよ~」


 繭ちゃんなでながら適当に流す。


「ぐぬぬ」


 おや?あのぐぬぬ顔可愛いなぁ。


「じゃあ、私と繭美どちらかしか雇えないなら、どっち雇うんですか?」

「繭ちゃん」


 即答しておいた。


「あーー即答したなぁ!綾部あおのーーー!」

「即答しちゃった」

「ぬーーー覚えてろよーーーー!」


 悪役か!走り去ってしまった。

 オフィスは走らないでほしいな。


 ちょうど仁和さんがオフィスに帰ってきました。


「みんなお疲れ様、あおのちゃんも繭ちゃんも、みんなも頑張ったね!新ルートはもう完成したようなものだよ!」

「はい!」

「はい」

「もうお金払って、依頼して待つだけだからね」

「工事はすぐ終わるんですよね?」

「魔法があるからすぐ終わるよー」

「じゃああとは……?」

「京子ちゃんの下に1人きたらいいなって感じかな」


 なるほど

 ほんとに大詰めなんですね。


 

 後日、あっというまにダンジョンも火山も完成しました。

 ダンジョンは、光るキノコが怪しくひかり、湿った壁を照らす、不気味な雰囲気です。

 半裸のリザードマンが闊歩し、奥には天井が抜けて光が差し込み、地底湖とお花畑が広がっています。


 火山は活火山を登るルートで、マグマが流れていますが、魔法で落ちないよう見えない柵があります。

 半裸のリザードマンの衣装違いが闊歩し、火を出す鳥が勇者を苦しめます。


 そして新ルート公開の初日を迎えました。

 毛利社長が、オフィスに全員を集めて、挨拶をしています。


「みなさん、お疲れ様です、おかげで新商品も増え、仲間も増え、会社は一つ大きくなりました」

「今日は公開初日です、頑張りましょう!目指すは従業員100人です」

「おー!」


 士気も上がり、みんなも準備に気合が入っています。

 みんな自分の席にもどった時、八木ちゃんの声がオフィスに響きました。


「た、大変ですぅ!」

「どうしたの?」

「異世界旅行の業界に、他社が新規参入してきましたぁ」

「あら、ライバル会社がとうとう現れたわね」


 仁和さんも園田さんも、予想していた、という感じてした。

 

「で、どこなの?」

「それが、両方大手の、ビッグムーンツアーズと若松観光の2社ですぅ!」

「えええええ!?」


 全員の視線が、2人に向けられ、

 鈴ちゃんはニヤっと笑いました。

法人とは、法によって人じゃない物に、人の権利や義務を持ってもいいよと認められた、人の集まりです。

会社の名前で契約したり、所有者が会社だったりするのは、法人だからです。

会社にさんを付けるのは法人だからです。

知らない人を呼び捨てにはしないでしょう?

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