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38 温泉

「わー! 海が見える温泉だ~!」

 

 波音と水平線上に浮かぶ夕陽の美しい景色を背景に。

 ぬめりのあるゴツゴツした石床に女性陣が腰を掛けていく。


「はぁ……気持ちがいいですねぇ……疲れが吹き飛んでいきます」


 ニケは大きく息を吐きながら腕を伸ばした、すると全員の視線を一点に集める。

 湯船には二つのふくよかな膨らみが浮かんでいた。普段は服で抑えられているものだ。


「皆さん、私なんかを見つめて。どうかしました?」


「……脱いでいる時も思ったけど、戦闘力に差があり過ぎよね」


「ボクたち胸は真っ平だし。子供のサクと変わらないし」


「ぺったんぺったん!」


 ルーシーとノムは自分の身体に触れ、ニケのものと比較して落ち込む。

 精霊は女神の肉体から生み出され、人と同じ性質を持つとされる生物だ。

 寿命に比例し肉体の成長は限りなく遅く、成熟しても見た目の変化に乏しい。


 胸の大きさ一つで女性らしさが決まるものでもないのだが。

 隣の芝生は青く見えるもので。二人は羨ましげにニケを見ていた。


「皆様お揃いでしたか。お仕事お疲れ様です。それから、お誘いいただきありがとうございます」


「シスターのお姉ちゃん!」


「あらあら。サク様、走ると危ないですよ?」


「はーい!」


 そこにシスターヘレナも加わる。金髪を束ねた彼女もまた高い戦闘力を保持していた。

 ニケとヘレナは肩を並べ景色を眺めている。暴力的な圧に押されルーシーとノムは隅に逃げた。

 すると、陰にコッソリ潜んでいた人物とぶつかった。白銀髪を後ろに結んだシンシアだ。


 シンシアは身体の傷を理由に同伴を断っていたが。

 咲がみんなで一緒に入りたいと、駄々を捏ねだしたので渋々付き合っていた。 

 魔の森で別行動していたノムも同じだ。奇しくもこの場には姫乃と関わりある女性が揃っている。


「シンシアは――――私たちの仲間みたいね。持たざる者同士、同盟を組みましょ」


「何事も大きければいいって話じゃないんだ。うん。他のもので補完すればいいんだよ。うん」


「……一体何の話? よくわからない」


 白肌を朱く染めてシンシアはそっぽを向く。


「そうやって恍けても、ヒメノに色仕掛けした件は忘れないわよ?」


「……うぐっ。それは誤解なのに……ぶくぶくぶく」


 貧乳同盟に巻き込まれたシンシアは、呻き声を出しながら湯船に沈んだ。

 シンシアが姫乃と混浴した事実は後日、リヴァルホスが口を滑らせ明らかとなった。


 それを聞いたルーシーは顔を真っ赤にさせて、勇者様がそんなふしだらではいけないと。

 元領主邸に混浴禁止のルールが定められた。しばらくはこのネタを引っ張られ続けるだろう。

 

「私も驚きましたけど。姉様がさっそく姫乃様と仲良くなったとお聞きして嬉しい限りです!」


「お兄ちゃんとお姉ちゃんなかよし~!」


「シンシア、お友達が増えて良かったですね?」


 ニケと咲は素直に喜び、ヘレナまでも便乗している。

 普通は注意すべき問題ではないのだろうか。ノムは困惑する。


「いやいや、いきなり混浴って過程をすっ飛ばしすぎる気がするんだけど……?」


「ノム、この三人に常識を説いても無駄みたいよ。これまで異性と関わった経験がなさすぎるのよ」

 

 幼い咲はともかく、ヘレナもニケ側だったらしい。


「それにしてもこうして見ると、ヒメノの周りって狙ったかのように美人ばかりよね」


「ルーシー、もしかして自分も含めている?」


「客観的に見てよ。そ、それに……私だって、身だしなみとか、アイツに好かれる努力はしてるし……」


「最近お兄さんが髪を短くしていたけど、あれもルーシーの好み?」


「べ、別に本人も納得していたんだからいいでしょ! ぶくぶくぶく」


 ルーシーも湯船に沈んでいく。熱かったのか、すぐに戻ってきた。 


「ヒメノったら浮ついた話は一つも聞かないし。シンシアが一緒に入っても何もなかった訳でしょ? アイツ、本当に異性に興味はないのかしら?」


「お兄さんの世界はサクが中心だから。そこは諦めるしかないよ」


「それさえなければ完璧なのに。はぁ……私も妹みたいにしか思われていないのかな」


 唯一の欠点であるシスコンが酷過ぎて、まるで難攻不落の要塞だった。


「兄妹仲が良いのは悪いことじゃないですよ!」


「……前から疑問だったけど。ニケって、ヒメノのことをどう思っているの? いつも同じ部屋で過ごしているのでしょ? ヒメノも満更でもなさそうだし。特別な関係だったりしない?」


「……ご主人様はご主人様ですけど?」


 ニケの反応に、ルーシーとノムは顔を見合わせる。


「ノム、どう思う……?」


「そのままの意味じゃないかな?」


「……? 私たちいつも仲良しですよ。ですよね、咲様」


「なかよしだよねー!」


 話の意図を汲み取れないニケが疑問符を浮かべる。

 姫乃も他人の好意に鈍感であるが、対するニケもドが付くほど天然である。

 というより、精霊であるノムとルーシー以外はそういうのに疎い人物ばかりであった。


「ルーシーはお兄さんのことが大好きだよね。全然隠す気もなさそうだし」


「当然でしょ。あんなにカッコよく救ってもらえて、しかも本人は大したことはしていないような素振りで、いい加減で、意地悪なのに。時には優しい一面も見せてくれて――――こんなの惚れない訳がないじゃない。もう何回も夢に出てくるし! アイツの気を引きたくて、いつも目で追ってしまう。あーもう、何をしてもカッコよく見えるんだから、ズルいズルいズルい!」


「わー! ばたばたばたばた!」


 ルーシーは恥ずかしさを誤魔化すよう足をバタつかせる。咲も真似して足を動かしていた。


「咲もお兄ちゃん大好き! 大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」


「サク、それを本人の前で絶対に言っちゃダメよ?」


「なんでー?」


「お兄さんが喜びのあまり……またおかしくなるからだよ。あのだらしのない顔は、士気に影響するよ」


「えー」


 咲は不服そうに頬を膨らませた。  


「同じ血を分けた親族同士でも争う方々が多い中で、お二人の関係はいつ見ても微笑ましいですね」


「ですよね、ヘレナもそう思いますよね!」


 姫乃が重度のシスコンであるとしらないヘレナが、手放しで褒め称えている。

 事実を知るニケもそれに同調していた。胸の大きさは度量の大きさと比例するのか。


「二人がこの世界に永住するとなると、いずれはこの関係も大きく変わりそうだけど。仲良しなだけではいられなくなるかもね。だってヒメノは異世界の人だし。全員を選ぶだなんてしないでしょうし。英雄が女性関係で破滅するってよくある話でしょ」


「どーして? 咲はみんなと一緒がいいよ?」


「私はいつまでもご主人様の従者で居続けますよ?」


「……うーん。ヒメノだけの問題じゃない気がしてきた」


「咲もニケもお子様だから。そこが可愛い」


 姉であるシンシアが一言でまとめる。まさにその通りであり。ルーシーはため息をつく。 

 彼女らが本当の気持ちを自覚した時、一体どうなるのか。今から心配であった。


 あと他人事のように話すシンシアも怪しいものである。隠れて混浴までしたのだから。


「本人がいないところで話が勝手に進んでいるけど。お兄さんも大変だね」


「それもそうですね。では、今回の戦いが終わったら改めて、姫乃様のお傍に置いていただけるようお願いしてみようと思います!」


「現勇者に元勇者の従者がくっついているって、改めて思うと変な関係よね」


「ニケは一途で可愛い」


 ◇


 セントラーズの港を一望できる崖近くに湯気が立っていた。

 温泉特有のあの妙に癖になる匂いが充満している。白濁のお湯は街自慢の名物らしい。

 俺はラフな格好で建物内に入る。中には簡易的な受付とこれまた簡易的な休憩室があった。


「よぉ、お前たち。揃いも揃って何してんだ」


「これはこれは勇者様じゃないですか。巡回お疲れ様っス」


「兄貴~奇遇パルね!」


 温泉へと通じる通路近辺で、コソコソしている集団に声をかける。

 もはやお馴染みのレグとパルル、それから眼鏡を掛けた大人しそうな青年。


「お、メガネくんも一緒だったか」


「勇者様、僕にはレオパードというれっきとした名が……」


「レオパードなんて呼び辛いしメガネでいいっスよ」


「メガネパル!」


「いつの間にかその呼び名が街中に伝染しているし。困ったものだよ」


 レオパードもといメガネくんは額を抑えてヤレヤレと首を振った。


「悪いな。俺が考えなしにあだ名を付けたせいで」


「いやっ、勇者様を責めた訳ではないのですが……」


 数日前に異世界では珍しい眼鏡姿の青年を見つけて、親しみを込めてそう呼んだのだが。

 俺は勇者の影響力を甘く見過ぎていた。いつの間にか彼はメガネくん呼びで統一されていた。


 この三人でつるむようになったのも、最近の話だ。

 これまでは俺から話しかけても委縮させ間が持たないことが多く。

 まともに会話ができるのは肝っ玉が大きい、海運亭の女将さんくらいであった。


 この世界での勇者という称号は想像以上に重かったらしい。


 ニケさんの演説以降、皆で勇者を支えようという意識が自然と芽生え。

 物怖じせず話しかけてくれる人も増え始めたのだが。メガネくんもその一人。


 ちなみにレグもメガネくんも歳は俺よりも上だが。

 勇者に畏まられるのは困るとのことで、俺も普段通りでいる。


「さっき偶々近くを通り掛かったんだが、近所のおばちゃんから苦情を受けたぞ。女湯の時間帯なのに男集団がたむろしていて恐ろしいと。……もしかしなくても、覗きか?」


 温泉は一つしかないので、時間帯で男、女、混浴と三つに分かれている。

 今は女湯の時間だ。しかも俺の知り合いの女性ばかりが仲良く入浴中である。

 他の連中を覗くのであれば俺も他人事で済ますが、咲が目当てだというのなら万死に値する。


「そんな恐ろしい形相をしないでくださいよ! 俺たちは次の混浴の時間を待っているだけっス!」


「はい、少し早めに着いてしまって。こうして時間を潰しているのです」

 

 レグとメガネくんが慌てて弁明しだす。確かに、もう少しで混浴の時間に切り替わる。

 一度に入浴できる人数が限られているので、早めに場所を確保するのは間違っていない。


「なんだ。咲がお湯に浸かって頑張って十秒数える姿を覗き見るつもりなのかと思ったぞ。咲はお風呂が苦手だから五秒から先が若干秒の進みが早くなるところが最高に可愛いんだぞ!」


「はわぁ。サクちゃん可愛いパルね~! オイラも一緒に数を数えてあげたいパル!」


「……随分と具体的ですね。あんな小さい子に欲情したらただの変質者っスよ」


 そう答えるレグは真顔だった。


「レグ、サクちゃんを馬鹿にするのは許さないパルよ!!」


「あぁん!? 咲が覗くに値しない、可愛くない子だってかぁあああ!?」


「ひえっ……この人たち結構面倒臭い性格してる!? 怖いっス! 落ち着くっスよ!!」


 俺が以前シンシアに抱いた印象が、そっくりそのままブーメランとして返ってきた。 

 レグに諭され俺は落ち着きを取り戻す。度が過ぎたシスコンは咲の印象まで悪くしてしまう。 

 

 反省。


「それにしても混浴楽しみっスね。ピスコ村には同年代の女性はいなかったし、ハルピュイアの好みからも外れていたから。ここで新たな出会いとか……訪れたり?」


「オイラまたモテモテになるパル? うひょー!」


「お前ら混浴に夢見ているようだが。大抵は羞恥心を失った熟女か老人ばかりだぞ」


「僕はそれでも構いません!」


 俺が悲しい現実を伝えると、レグは「やっぱりそうっスよね」と苦笑する。

 メガネくんが反応していた気がするが。個人の趣向にいちいち口を挟むような野暮はしない。 


「しかも案外既婚者だったりするぞ」


「僕はそれでも構いません!」


「いや、そこは構えよ。見境なしか!」


 思わず口を挟んでしまった。性に貪欲で野生解放している奴もいるな。

 そりゃあこんな目をギラギラさせた若い男が集まっていたら通報もされるって。


「レグ、お前も別に顔は悪くないんだから普通にしてればいいだろ。あと友人も選んだ方がいいぞ?」


「顔だけが良くても全然っスよ。やっぱ線の細い身体が悪いんっスかね」


「顔がイケメンなのは否定しないのか。一瞬だが殺意が沸いた」


「いやいやいやいや、勇者様も別に悪くはないっスよね!?」


「お世辞は結構」


 現実であれば、学年で三番目くらいにはモテていたであろう清潔感のある青年だ。

 何が悪いかと言われれば、環境が悪いんだろうな。生まれる世界を間違ったというか。


 どうもこの世界では塩顔系男子よりも、ガタイが優れた頼れる漢の方がモテるらしい。

 顔もそうだが体格も生まれ持った才能に左右されやすい。持たざる者は涙を飲むしかない。


「勇者様は、懇意にされている女性はいらっしゃらないのですか?」


「ん、俺か? 俺は別に……そういうの興味ないしな」


「本気ですか!? あんなに美人が揃っているのに誰とも深い関係になっていないのですか!?」


 メガネくんが唖然とした表情で、大事な本体を落としていた。

 客観的に見て美人揃いなのは否定しないが。驚く要素なんてあったか?


 男女が一緒にいると、すぐそういう話に持ち込まれる。面倒だな。

 死と隣り合わせの異世界では現実世界と違って若年結婚も多いと聞く。


 種を残すという本能。意識からしてまるで違うんだろうな。


「はぁ……街で声を掛けた子はみんな男がいて経験豊富なんだよなぁ……辛いっス」


「可愛い子は多いけど、それは何か違うパル。やっぱり一から積み重ねていきたいパルね」


「そうかい? 歳を気にしなければ選び放題だし、経験豊富な女性に導かれるのも良いじゃないか」


「「メガネくんの好みと一緒にするな」パル」

  

 お、ついに仲間割れか?


 コイツらも厳密に言えばモテない訳ではないのだが。理想が高すぎるというか。

 人口が激減したこの世界では重婚も当たり前で、若い女性は殆ど誰かに囲われている。

 つまり最初から普通の恋愛は望めないのだ。変に真面目だとこうして取り残されてしまう。

 

「んじゃ、どういう人なら納得するんだ?」


 恋愛話にはさほど興味ないが、異世界だろうと男の語らいは楽しいものだ。

 いつの間にか混浴目当ての他の男たちも集っていた。彼らも会話に参加してくる。


「もちろん聖女様ですよ。あんなにお淑やかで笑顔が素敵な女性に惚れない訳がないぜ!」


「優しいよな……それに胸も大きい。誰にでも分け隔てなく接してくれるところとか悪くない。あれでもう少し、あと二十ほど年上であればアプローチを掛けたのだが……」


「メガネくんの熟女好きにも困ったパルね」


「そうだそうだ! 一瞬想像してしまったじゃないか! 悪くなかったけどな!!」


「聖女……? ああ、ニケさんのことか。ややこしいな」


 聖女とメイドさんがイコールで繋がらないので一瞬戸惑った。

 ニケさんは実はかなりモテる。立ち振る舞いからして生娘なのがバレているのか。

 飢えた男たちから狙われていた。あんまりにも酷い奴は巡回中俺が折檻しておいたが。


「あの方は街に残った住人一人一人に直接お礼を告げてくださったんだ。ありがとうございます、共に戦うことができて光栄ですと。それを聞いて俺はもう一生ついていきますって思ったね」


 ――それは気付かなかった。


 ただでさえ聖水作りで忙しい癖に、その傍らで根回しまでしていたのか。

 ニケさんには改めてお礼を伝えておかなければ。本当、縁の下の力持ちだ。


「いい匂いがするよなぁ。俺もつい用がないのに教会に足を運んでしまうよ。畏れ多くてこちらからは声を掛けられないけどな」


「クッキーを貰ったけど食べずに保管してあるぜ。家宝にするんだ!」


 発言は気持ち悪いがコイツらが無害なのは知っている。

 本人に迷惑が掛からない程度であれば好きにすればいいと思う。


「んで、レグもそうなのか? ニケさんに気があるのか?」


「違いますよ。コイツ、教会に勤めるシスターに一目惚れしたんですよ」


「あっ、勇者様には内緒だって言っただろう! 酷いっスよ!」


 悪友たちに想い人を暴露され、レグは恥ずかしそうに手を動かす。


「シスターヘレナか。美人でお淑やかで気品もあって、何より子供に優しい。咲も随分と懐いているし。今日も一緒になって祈りを捧げていたくらいだ。魅力に感じるのも無理はないな」


 そしてニケさんと同様に男の影はなく胸が大きい。――本当わかりやすい。

 コイツらの想いが成就するかはさておいて、俺の知り合いが人気なのはわかった。

 噂ではシンシアも主に女性に支持を得ているらしい。ノムとルーシーも人望はある。

 

 咲は――俺に人気だ。

 

「勇者様、レグにシスターさんを紹介してやってもらえませんか? コイツは訓練では勇敢な癖に惚れた女の前では意気地なしなんですよ。教会前で用事もなく右往左往している姿がもう情けなくって」


「メガネくん!! クソッ、意気地なしで悪かったっスね!!」


 ここにいる全員が意気地なしに該当してそうだが、これも男の友情か。


 ルーシーからもレグには世話になったと聞いているし。

 俺も歳が近い同性として、今後も仲良くしていきたいと思っている。


「ん、そうだな。今はまだ無理だが、ローザリア軍を退けた暁にはな。紹介程度ならお安い御用だ」


「本当っスか……!? よっし! 俺、戦争が終わったらシスターを食事に誘うっス!」


「綺麗な死亡フラグを立てやがって」


「何ですかそれ」


「戦場に色恋沙汰を持ち込むと死にやすいジンクスがあるんだよ」


「似たようなのは散々言われてましたけど、大抵それを言った人が俺より先に死にましたっスよ」


「何その呪い怖い。お前フラグクラッシャーだったか」


「勇者様って時々よくわからない言語を使いますよね」


 レグの呪いの真偽はともかく。長話をしている間にも女性からの厳しい視線が突き刺さる。

 このままだと俺もバカたちの一員に数えられそうなので、スッと距離を取る。


「とりあえず他の利用者の迷惑になるから、時間まで静かにしておくんだぞ」


「わかりましたっス」

「了解パル!」

「はい」


 とはいえ実際に次が混浴である以上、ここに集まることになんら違法性はない。

 モラルの問題はあるが。俺も同じ男であるからして、気持ちくらいは理解してやりたい。


『あっ、んんっ! 咲様、そこは……どうかお許しを……』

『ぼよーんぼよーん。お姉ちゃん大きい! おムネさん浮いてる!』

『……せっかくだし私も触ってみようかしら。ヒメノは大きい方が好きなのかな……?』

『ボクもちょっと気になってた。少しだけ貰えないかなぁ』

『ヘレナも……大きい』

『シンシア、怖い顔で近付いて来ないでください。触っても神の恵みには与れませんよ?』


 温泉から咲の楽しそうな声と、ニケさんの妙に艶めかしい声が届いてきた。

 続いてルーシーとノム。シンシアにヘレナも。壁が薄いのでここまでよく響いてくる。

 

 すかさず男たちは真剣な表情で耳を澄ませていた。ヤモリの如く壁にへばりついている。

 なるほどな、声だけで楽しんでいたのか。訂正、変態ばっかじゃねぇか。


「よし、全員アウト。反省室送り」


「「「「「「そんなぁ」」」」」パル」

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