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067 潜入! 梯子でいこう穴の奥

 宝箱の中身は魔道書だった。五枚の紙が束になっている。


「何の魔法?」

「デバフ関連っぽいよ。膂力に魔力、敏捷が五パーセントダウン、物理防御と魔法防御ダウンは固定値っぽい書き方だね」


 早速使って効果のほどを確かめたいが、探索するべき横穴はまだまだある。


 一度芋虫部屋へと戻り、一つ右側の穴へと入っていく。こちらも分岐も隠し扉もなく、宝箱が鎮座する小部屋にすぐに着いた。


「さて、こっちは何だろうね?」


 先ほどと同じフォーメーションで宝箱を開けてみるが、今回は暴れることなく普通に開いた。


「一体、何の袋だ?」


 宝箱の中身は、袋が一つ入っているだけだった。袋の中身は見るまでもない。インベントリに放り込んだ方が早いに決まっている。


「お金だ。四千(ゲー)だって」

「まあ、そんなもんか」

「次行こう、次」


 次の部屋は何もなく、その次は『ハズレ』が立ち塞がっていた。だが、私たちはもう惑わされない。コイツはただのヌリカベ的なモンスターだ。


 蹴り倒して先に進むと、本当に何もなかった。


「騙された!」

「第二階層は裏ボスがあったのにね」

「いや、普通は先にこっちに来る想定なんじゃねえか?」


 なるほど。ハズレの先は本当にハズレという実績があれば、あれを見つけた段階で引き返す判断もあったかもしれない。


 なんて性格の悪い運営なんだ。


 結局、七つの横穴のうち、四つはハズレで残り一つは小さなガーネットがいくつも入った袋だった。


「このゲームって、宝石って何に使えるんだ?」

「知らない。普通に考えたら、錬金の材料になるか、アクセサリーにして効果付与とかできるのかだろうけど」


 以前にも宝石は見つけたが、倉庫に放り込んだままだ。後で生産組に確認してみよう。



 わたしたちは、魔法の効果を確認するべく第三階層に向かう。狼部屋も挑戦したいが、その先が少々怖い。通路に戻ってしまえば狼はさほどの脅威ではないが、その先にボスが待ち構えていたら、たぶん、勝てない。


「とりあえず、クマの出てくる穴を見てみようよ」

「確かにな。あれを一つひとつ探索する必要があるのかってのは大事だぜ」

「もし、何かを見つけたらどうする?」


 なるべく考えないようにしていたが、セコイアが聞いてくるように方針は決めておかないとならない。


「穴を全部探索するとか、やりたくないよね」

「何個あるんだよ、あれ?」

「……情報公開しようか。梯子も売ろう」


 横穴は、軽く数千はあるだろう。それを一つひとつ全部確認するとか、面倒臭すぎる。というか、探索していれば、絶対他の人にもバレる。ならば、早い段階で情報を出してしまった方が良いだろう。


 クマに防御力低下の魔法をかけてみたが、効果は目に見えてわかるほどではなかった。というか、みんなでボコボコにしていると分からないんじゃないかと思う。

 倒すまでに必要な攻撃回数が十回から九回になっても、大した違いはない。どうせみんな二回攻撃するのだ。最後の誰かは意味が無かったことになるとしても、攻撃を一回ずつにすることはない。


 今回は穴の探索を優先するため、素材回収(ドロップ)を狙わず、速攻で倒している。速やかに梯子を出して、穴の横にかけて大急ぎで登る。


「これ、結構奥まで続いてるよ」


 最初に上っていったセコイアに言われ、みんなで急いで梯子を上る。梯子を回収して奥に向かうと、幾つも枝分かれしていた。


「マジかよこれ」

「おい、違う色でマッピングされだしたぞ」


 試しに右に進んでみるとさらに分岐があり、さらに右に行くとクマがいた。


 速攻で倒して先に進もうとすると、そこは崖になっていた。というかちがう。これ、別の穴に出たんだ。


 これは想定外だ。第三階層は二つの迷路が重なっているということか?


「二つだといいよね……」


 セコイアが不吉なことを言う。まさか、別の穴から入るとさらに違う迷路が広がっていたりするのだろうか?


「あり得るよな」

「とりあえず、ここに何があるか探してみようぜ」


 こちら側の迷路には、変な横道は見当たらない。天井の高さは三メートルほどで、剣や槍を振るには十分だが、結構圧迫感はある。


 分岐まで戻り、別の道を進んでみると、だんだんと道幅は広くなっていく。天井も段々と高くなり、自由に動ける分だけ、敵の襲撃への警戒も必要になる。いきなり上からコウモリが襲いかかって来ないとも限らない。


「なんか、壁の色も変わってないか?」


 ヒイラギがそう言うので、一度戻って確認する。

 元々は暗い灰色の岩だったのが、確かに赤っぽい色に変わってきている。


「採掘とかできるのかな?」

「やってみるか」


 ツバキが斧を取り出して、岩壁に打ちつける。何度かガンガンと叩いていると、ボロリと岩が崩れ取れてきた。


「へえ、銅鉱石だってよ」

「サカキにメールしておくか」


 それで何か良いものが作れるならば、採掘はして置いた方が良い。ここは敵もいないし、絶好の採掘ポイントだと思う。


 第三階層の横道迷路は『イエロー』と名付けられた。単にマップの色が黄色という理由である。その『イエロー』はかなり広い。たぶん、本体である『ホワイト』とほぼおなじ範囲に広がりを持っているのではないかと思われる。


 出てくる敵は、元の黒いクマの他に、緑色のクマやコウモリ、そして狼だ。個体としては強い奴なのかもしれないが、動きのパターンに差はないようで、大して強いという実感はない。


 零時までマップを塗りつぶしていくも、採掘ポイントを幾つか見つけた以外には成果は無かった。


「これ、探索どうする?」

「するしかないでしょ……」

「いや、情報公開は?」

「しておこうか。そもそも、まだ、第三階層に来れる人って少ないでしょ。競争相手が一気にバカみたいに増えはしないよ」


 お宝があるにしても、そう簡単に見つからないことも分かったのだ。あまり隠す必要もないだろう。というか、穴があること自体は、第三階層に来た人なら誰でも気付いているはずだ。


 ならば、ここに他の誰かが来るのは、結局時間の問題だろう。

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