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060 増強! メンバー二人追加

「じゃあ、ワタシの番で良いかしら? ワタシはポプラ。見ての通り、前衛の戦闘職よ」


 何がどう見ての通りなのかよく分からないが、ポプラは胸を張って言う。

 革と思しき衣装は鎧には見えないし、武器は短剣のようだ。シーフと言われた方が納得だろう。


「レベルはいくつなんだ? どこまで探索してる?」

「レベルは十六、ここのところ第二階層のボスの洞窟を探索しているわ」


 ボスの洞窟って、探索するほど枝分かれしていなかった気がするが……


「ソロだときついのよ! 仲間は欲しいけど、あまり変なのに当たると嫌だし……」


 まあ、その気持ちは分かる。鬱陶しいのに絡まれるくらいなら、ソロで頑張った方が楽しいと思うもの。


「ボクは十五、今朝、ようやく第二階層を突破できたよ」

「他に質問は?」

「いや、特に。っていうか、実力の方が見たいな」


 とは言っても、訓練場はクランメンバー以外は使えない。メンバー加入に反対する人もいないし、とりあえず二人とも登録して訓練場へと案内する。


 まずは、カカオとツバキだ。他のみんなは後ろに下がって観戦する。


「じゃあ、いつでも良いぜ」

「お言葉に甘えて、行きます!」


 カカオは盾を前に構えて、ダッシュで一気に詰め寄る。が、ツバキは横に構えた盾で、カカオの盾を横からブン殴る。それで体勢が崩れたところに剣での攻撃だ。


 だが、カカオは体を捻って斜め下から突き出された剣をなんとか躱す。なかなか良い反応をしている。お互いに盾をガンガンとぶつけ合い、牽制しながら睨み合いとなると、勝負が着くまでに時間がかかりそうだ。


「もう良いんじゃないか? 実力を見たいだけで、別に、決着つけなくても良いだろう」


 長引きそうな戦いに、横から口を出したのはヒイラギだ。ツバキに押されながらも、満足に戦っていられることが分かれば十分だろう。


「合格ですか?」

「ああ、だけどその前に教えてくれ。なんで魔法を使わない?」

「魔法は覚えてないんです」


 ならばまずは、魔法を覚えてもらうところからかな。遠距離から先制の一撃目を叩き込むのは大事だ。最低限として、それくらいはできないと第四階層はキツイ。


「じゃあ、次はワタシの番ね。ユズさんでしたっけ? 全力で来てくださいね。さっきの人みたいに手加減なんて要らないですから」


 ポプラは随分な自信である。

 そう言うならば遠慮なく『無傷の勝利者』を使わせてもらおう。こっちの方が攻撃力が高いというのもあるが、何より重さや間合いに慣れているのが大きい。


「準備オッケー」

「ワタシもいつでも良いわ」

「では、始め!」


 セコイアの合図で、わたしは後ろに下がりながら早口で詠唱する。ポプラの方は短剣を片手に突っ込んでくる。そして、剣の間合いの外、振りかぶるところを見計らって『風の刃』を飛ばし、一気に踏み込んで下から上への斬撃をお見舞いする。攻撃しようとしたところを妨害され、気が逸れたのだろう、わたしの剣は直撃してポプラはHPを大きく減らす。


 続けざまに放った蹴りも見事に決まり、ポプラは吹っ飛びダウンする。

 次の魔法の詠唱は既に開始している。バックステップして距離を稼ぎ『氷霜弾』を放つ。


 飛び起きてダッシュしようとするも、範囲魔法から逃れるには遅かった。ポプラのHPはゼロになった。


「普通、小手調べから入るものでしょう? いきなり全開で来る?」


 訓練場に入り直してきたポプラは、開口一番に負け惜しみを口にする。けど、ダメだ。伊藤流に小手調べなんて概念は無い。と思う。


「そういう負け惜しみは止めてくれ。相手の戦い方が気に入らないなら、自分の戦い方で勝って主張するしかないんだよ」


 ヒイラギにそう言われたら黙るしかない。力が全てで弱い奴に発言権はない、なんてことはないが、戦い方に関しては「勝てない戦い方」を主張されても困る。


「念のために言っておくと、ウチは誇り高い戦いよりも、合理的に勝つ方を優先する方針なの。ノーダメボーナスとかあるしね、たぶん、今後始まるイベントでもノーダメとかノーデスはボーナス対象になる可能性が高いと思うの」

「ノーダメージでボーナス? そんなの聞いたことないんですけど」

「達成してる人、他にいないからじゃない?」


 わたしと伊藤さん、それにキキョウはこれまでずっと無傷だ。ダメージを受けたのは、この訓練場の中だけだ。ツバキたちだって、最近はダメージを受けなくなってきている。ならば、ボーナスは狙っていくに決まっている。


「じゃあ、工房とか案内しましょうか」


 新人二人を農園(ファーム)から順に案内していく。って、わたしも数日ぶりにみたけど、畑が何か凄いことになっている。木材用に植えた杉も結構な大きさになっていた。そろそろきりたおして木材にできるのだろうか?


 さらに湖畔(レイクサイド)、鍛冶工房、木工工房と案内していく。


「この木工工房はまだ稼働してないのよ。さっきの農園(ファーム)に木があったでしょう? あれがそろそろ木材になりそうだし、そろそろ動かせると思うのよ」

「だから木工職人を探してたんですね。で、木工って何作れるんですか?」

「これが作れる物一覧」


 レシピ本を渡してやると、二人で覗きながらページをめくっていく。


「家具と弓矢か」

「最初に欲しいのは梯子だよ!」

「梯子? なんで?」

「けっこう高いところに通路があったりするのよ」


 第一階層の芋虫部屋と第三階層のオオカミ部屋の横穴はかなり怪しい。第一階層の方は今更感があるが、第三階層の方はまだまだ適性レベルを脱していない。


「第三階層ってまだちょっと見ただけなんだよなあ」

「ワタシなんて行ったこともないわ」


 ならば、まずはポプラの第二階層突破からか。


「ここから迷宮に転移できるの」

「どうやって?」

「メニュー出るでしょ? それで選べば良いだけなんだけど」

「出ないよ?」


……あれ? 『転移のエメラルド』って第二階層のクリア報酬だっけ?

 ポプラは転移できないので、迷宮まで歩いて行くしかない。


「あ、どうせ第一階層から行くなら、裏ボスも倒していこうか」

「裏ボス?」

「そう。鎧の数が二倍になるだけ」

「だけって、めっちゃキツそうなんですけど……」


 カカオは困惑したように言うが、まあ、何とかなる。

 第一階層を突き進んでいき、裏ボスの扉の前に着くとパーティーを二つに分ける。


「じゃあ、お先」

「頑張れよー」


 ツバキたちも慣れてきているし、わりと余裕がある。カカオとポプラに必勝法を授け、扉を開けると全速力で突進して鎧を倒していく。


 カカオとポプラの方は鎧を蹴り倒して剣を奪うことからやってもらう。敵の武器を奪うのはとても大事なことだ。戦術というよりも、お金稼ぎとか素材集めとかそっちの方で重要なのだ。


 私の方も魔法を併用しながら鎧をどんどん倒していく。三人で入れば十二しか出ないのだ。まず左側の六体を叩き殺せば、残りは六体。そのうち四体は剣を奪われて丸腰状態だ。


『ヴァセ、エイリエ、オレンソール、ハルファ、ボゴアスト』


 ポプラの放った『地雷』の魔法が鎧たちを吹っ飛ばす。足下が爆発するこの魔法は、比喩ではなく本当に吹っ飛ぶので、牽制や時間稼ぎにはちょうどいいのだ。


 転がる鎧にトドメを刺していけば、二人は残る三体も簡単に倒している。第二階層はソロで戦えているというだけあって、それなりに戦えているようだ。


「で、骸骨は、転ばせれば勝ち」

「知ってる。地雷で吹っ飛ばせばいいんでしょ?」


 おお、そんなこともできるのか。だが、あえて否定する。


「これを使うの」


 わたしは鎧のパーツを拾い、説明する。


「足下に転がしてやれば踏んづけて転ぶから」

「は?」

「そういうこともできるって覚えておいた方が良いよ」


 その後はいつも通りだ。転倒させて武器を奪い、止めを刺す。奥の小部屋で戦利品を回収して第二階層の入口でセコイアたちを待つ。

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