表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/80

056 進歩! 闘技場のレベル向上中

 少し真面目にクランの今後の方針について話し合わなければならない。

 クルミとアンズは農園(ファーム)湖畔(レイクサイド)にヒャッハーな状態だから、話を聞く必要も無いだろう。


 サカキも鍛冶とか生産系をやりながら、マイペースにできれば良いと言っていたはずだ。


 色々やりたいというなかで、生産よりなのがキキョウとヤナギ。戦闘よりなのがセコイア、ツバキ、ヒイラギの三人。


 そして、強敵と戦いたいのが伊藤さん。


「人が足りていないと思うのよ。木工やる人がいない」

「戦闘チームもあと一人か二人は欲しいな。伊藤さんが別格すぎるだろ? あの人いなかったら、俺たちまだ第三階層突破できてないぞ。あのケルベロスとか無理だろ」

「それ言うなら、伊藤さんに稽古つけてもらってなかったら、あのクマだって怪しいだろ」


 そりゃそうだ。私たちが最速で進むことができているのは、九割以上、伊藤さんの力のお陰だ。一日、たった二時間でそれができる伊藤さんって本当に何者なんだろう?


「いや、名前的に伊藤芳香(バケモノ)の血縁関係じゃないのか?」

「普通に考えればそこだよな。ありえねえってあの強さは」


 ツバキとヒイラギは何か知っているらしい。本人に確認したわけではないが、有名な血筋である可能性が高いと言う。


「伊藤芳香(よしか)って誰だっけ?」

「知らねえのか? 百メートル五秒の人だよ」

「フルマラソン二十分とも言うな」


 百メートルを五秒で走ったという伝説のアスリートは聞いたことあるけれど、時速百二十キロで走り続けるって、完全に人外じゃねえか。


「でも、あの伊藤さんもなんか人間踏み外してるように感じないか?」

「百メートル走八秒は余裕で切りそうだよね」


 そう言われたらそんな気がしなくもない。だが、今は人のプライベートを詮索している場合ではない。


「とにかく、戦力増強と、木工担当だね。戦力は何人くらいだろう?」

「今、基本が四人だろ? 一気に増やしすぎても喧嘩になりそうだし、一人か二人だろうな」

「バラバラに動くんじゃ意味ないからな。二、三人で第四階層進むとか無理だし」


 たぶん、この先ずっとそんな感じだとは思う。第四階層を二、三人で進めるようになっている頃には、第五階層の探索が始まっているだろう。


「生産組は工房ごとに別々に動くので良いけれど、戦闘班はそうはいかないからね。それとも二班、三班って分かれられるくらい大きくする?」

「それって全部で何人よ? 五十人とか、わたし、まとめられないよ?」


 だいたい、人数を増やしていくと、真性のヤバい人がやってきかねない。自分の理想を他人に押し付けて、従わないとブチ切れるような奴は今までに何度も見た。


 そういう奴の対処がとにかく面倒なのだ。今はそこまで大きくすることは考えなくても良いと思う。


「じゃあ、少数精鋭ってことでいいのかな?」

「精鋭かはともかく、気の合う人ってのは大事だよ」

「強いとか弱いとかはなあ……。試験でもするか?」

「試験とは言わなくても、闘技場で戦ってみるってのは手かもね」


 なるほど。わたしたちが直接戦う必要もないか。闘技場を覗いて優秀そうな人には声を掛けてみるのは良いかもしれない。


「そういえば、闘技場と言えばイベントやってなかったっけ? わたし、全然進めてないな」

「ああ、あのイベント、ギリギリまで控えた方が良いぞ」

「なんで?」

「あまり実力の差を見せつけると、弱い奴が参加しなくなっちまう。すると、本戦が俺らだけになっちまう」


 ああ、なるほど。他の参加者としてそんなツマラナイものはない。誰が勝つのか、最初から決まっていると思われたら、わたしたちが批判の的になってしまう。


「でも、優勝するのは伊藤さんでしょ?」

「まず間違いなくな。だからこそ、状況次第では俺らは参加しない方が良いかもしれない。」


 四位までがぜんぶ『雑木林』で占められたら、その時点で萎える。わたしたち五人か本戦に出るならば、最低で他に五人は本選出場者がいないと色々と問題になるわけだ。


「じゃあ、現状がどうなっているのか見に行ってみるか」

「十人勝ち抜きだっけ? 何人が終わっているかだな」



 闘技場に行ってみると、結構盛況だった。一番から十番までのモニタは全て対戦を表示している。


「うおお! 今、六番の奴、スゲエ動きしたぞ?」

「え? どんな?」


 ヒイラギに言われ見ていると、構えた剣が光りだし、そこから一気に踏み込んでの横薙ぎの攻撃が繰り出される。相手は何とか盾で防御しようとするが、防ぎ切れていないようでHPは減っている。


「あれってもしかして剣のスキル?」

「そうかも。どうやって取るんだアレ?」

「さあ? 槍とか斧もスキルあるのかな?」


 どうやって取るのかは謎だが、剣のスキルがあることは間違いなさそうだ。二メートルくらい突きが飛んでいくとか、魔法ではなさそうだ。


「あれできる人が他にもいるなら、わたしたちが圧勝ってことも無いんじゃない?」

「戦ってみないと分からんな。おれだったら防げるかは、やってみないと分からないからな」


 他のモニタでの戦いを見ると、剣と魔法を併用する人はかなり多くなっているようだ。以前にいた魔法のみで戦う人はいないようだ。剣を持つ人が魔法を併用するようになったら、魔法使いの勝ち目は完全に無くなるから当然だろう。


「あれ、ノーダメージで勝てるかな?」

「一回はできると思うけど、やり方を見せたら対策されるよね」


 観戦者は何十人かいるし、彼らもただ楽しんで見ているだけというわけでもないだろう。強敵(ライバル)の手の内を見極め、研究するのは大事なことだ。わたしたちもこうして、他の人がどう戦うのかを確認しているくらいである。


「どうする? やっていくか?」

「また今度にする。まだ本戦進出決定した人二人しかいないみたいだし」


 受付のカウンターの上には、イベントの現在の進行状況が表示されたパネルが吊るされている。名前は書かれていないが十勝あげたのは現在二名、九勝が一名、八勝が六名ということらしい。


「じゃあ、そろそろ夕食の時間か?」

「そうだね。十九時にまた」


 クランホームに戻ると、みんなCPを放り込んでログアウトしていく。お店の方にもいれた方が良いのかと見てみたが、ホームと連結しているとCPは共有されるらしい。どちらから入れても同じみたいだった。



 夕食はひき肉を捏ね捏ねしてハンバーグを作る。十枚ほど作って冷凍しておけば、後日、焼くだけで簡単に作れる。

 サラダはポテトとニンジンを一緒に茹でて潰したポテトサラダ、それにブロッコリーでもを添えておけば良いだろう。


 品目数とかゴチャゴチャ言う人っているけどさ、迷信だよあんなの。肝臓や腎臓の病気があるのでなければ、米と肉と野菜をバランスよく食べていれば良い。


 食後は紅茶でも飲んでくつろいでから、こまごまとした家事を済ませていく。

 洗濯ものを取り込んでクローゼットに仕舞い、ゴミを袋に詰める。明日は火曜日、燃えるゴミの日だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ