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029 突進! ボス撃破は必達事項です

 第一階層は、何度も通ったボスへの最短路を進みながらチビデブを蹴り飛ばしながら進んでいく。


「コツは恐れずに突っ込むことかな。次、サカキやってみて」

「お、おう」


 通路を歩いていると、奥から二匹のチビデブが現れ、ギャアギャアと騒がしく声を発しながら向かってくる。


「待たないで突っ込んでキック!」

「うっす!」


 なんかタイミングがズレて膝蹴りがチビデブの顔にめりこんだけど、まあ、そこはそれというやつだ。

 もう一匹はわたしが蹴り殺しておく。


「まだ生きてるから注意して! とにかく死ぬまで蹴る!」


 サカキが倒れたチビデブをゴスゴス蹴っていたら、チブデブのHPバーが赤く光る。


「頭を踏みつければ一発だよ」

「なんか抵抗あるんだよなあ。ゲームだって分かってるんだが」


 まあ、その気持ちは分かる。伊藤さんが全く迷わなかったのはわたしも引いたもん。


「そこは慣れだね。芋虫とかなら踏み潰せる?」

「それはそれで何かヤダな」

「芋虫とかいるの?」


 芋虫というワードに、クルミとアンズが食いついてきた。女の子だし、そういうのは苦手だよね。


「害虫は殲滅してやる!」

「ぶっ潰す!」


 予想外なことに、二人は芋虫にやたらと闘志を燃やしはじめた。菜園大好きな二人にとって、害虫は殺すという考えしかないのだろうか。


 第一階層の中程からその芋虫は出てくる。


「いた!」

「死ねええええ!」


 チビデブ相手には腰が引けていたクルミとアンズが殺意を剥き出しに芋虫に襲いかかる。

 芋虫は見た目よりも素早い動きをするが、それでもやっぱり芋虫だ。きちんと動きを見ていれば、その攻撃を(かわ)すのは難しいことではない。

 数匹の芋虫を蹴り飛ばし、踏み潰し、二人はあっさりと勝利する。


「中々頼もしいな……」


 なんか、サカキが引いてるけど気にしない。どんどん奥に向かおう。


「というわけで、ここがボス部屋です。何度も言ってるけど、とにかく先制攻撃すること。第一階層では先制攻撃を決めれば大概勝てるから。ボスも同じ」


 具体的にいうと、動き出す前に蹴り倒せということだ。ビビったら負けだ。


「じゃあ、お先に」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


 扉の前で二人組の男女が何やら話をしているけど、カップルの邪魔をする気はない。

 横を通り過ぎようとしたら呼び止められた。


「一緒に行っていいですか? 何度かやってるんだけど、全然勝てなくて……」

「攻略方法って知ってる?」

「動きが遅いからスピード重視でって」


 うわあ。全然だめだ。どこからそんな情報が出回っているのか不思議でならない。


「えっと、まず、敵の数はこっちの二倍。人数増えたら敵の数も増えるのよ。だから、二、三人で行くのが一番楽。一人だとちょいキツい。二人でやってるなら、そのまま二人でやることをお勧めするよ」


 この仕組みは、戦い慣れていない人が増えれば増えるほどキツくなる。今、こちらは四人、そこに二人足すと、敵の数は十二だ。それをわたし一人でやりたくはない。

 こっちは無傷が掛かってるんだ。


「全速力の先制攻撃で敵を蹴り倒す。右と左に並んでるから、二人で行けば、一人二体蹴り倒すだけ。で、反撃させないように戦えば余裕」

「余裕、ですか」

「起き上がる前に勝負をつけるの。絶対モタモタしないこと。動く鎧(リビングアーマー)を全部倒したら、奥の骸骨が動きだすんだけど、そいつは鎧をバラして足下に転がせば踏んづけて転ぶから。あとはタコ殴りにするだけ。めっちゃ余裕」


 伊藤さんくらいの実力があれば正面切って戦えるんだろうけど、それを望んでも仕方が無い。根本的に、正面から戦う必要はないのだ。勝てる方法で勝てば良い。


「それじゃ、頑張ってね」


 送られてきたパーティーの申請はキャンセルして、わたしは扉を開けると奥へと走る。


「クルミとアンズは右! サカキとわたしは左いくよ! 蹴り倒したら急いで剣を奪う!」


 いつも通りの作戦で動く動く鎧(リビングアーマー)を蹴散らし、剣を奪って『無傷の勝利者』で一気にトドメを刺す。


 そして、床に転がる剣の回収は後回しにして骸骨に対峙する。もとい、横手に回り込んで斧をフルスイングする。立ち上がろうとした骸骨が床に投げ出され、そこをサカキたちが踏みつける。


 剣を奪ってから四人で斧で滅多殴りにすればそれでボス戦は終わりだ。

 あとは『古びた剣』を八本と『骸骨騎士の剣』も回収して終わりだ。『古びた剣』はサカキの鍛冶の練習用にちょうど良いだろう。


「はい、終わりー」

「あんなのに余裕で勝てるのユズさんだけですよ」


 サカキは疲れた声で言うが、正面からの剣技で勝てるわけじゃない。わたしは伊藤さんとは違う、普通の人ですもの。


 いつもの撃破ボーナスを得た後、第二階層に向かいながらボイスメールを送る。


「第一階層の(おもて)ボスクリア完了。これから第二階層行きまーす」


 第二階層のボス戦は、応援として、セコイア、キキョウ、ヤナギにも来てもらう。電撃魔法なしだとサメとの戦いはさすがにキツイだろうからね。メールを送るとすぐに、応援の三人は第二階層の入り口にワープしてきた。


「寄り道しないで真っ直ぐいくよー」


 宣言した通り、カエルも蟻も見境なく叩き切っていく。コイツらは、どうせ大した素材も無いのだ。瞬殺に限る。


 何か、後ろの三人が引いているような気がするけど、これが通用するのも第二階層までなんだよね。第三階層に行くには、プレイヤースキルを磨かないと話にならない。


 何たってわたし、防御力ゼロだし!


 ボスの洞窟はさすがにペースが落ちるが、それでも片っ端から切り伏せていくことはできる。今更この程度では、わたしたちの進撃を止めるには至らない。一気にボスの間まで突っ切っていく。


「ここのボスはサメです。取れる素材はフカヒレ。数はこっちの半分で弱点は雷。この人数だと四匹出てくるけど、三匹はキキョウたちの電撃でスタン入るから、復活する前にボコっといて」

「了解」


 軽く説明すると、扉を開く。

 一気に踏み込んで、電撃が三つ奔る。そして、残りの一匹にわたしが全力で斬りかかる。


 伊藤流その一。基本は下から!


 左下に構えた右手の剣を右上に切り上げる。そしてその勢いのまま左手の剣も右上へと振り抜く。そして左右の剣を同時に振り下ろす。こいつのヒレを狙う余裕はない。この前はたまたま上手くいっただけだ。わたしに狙えるだけの技量はない。


 体全体を振り回すように食いついてこようとするところに剣を突き立てて何とか逃れるも、左手の剣を落としてしまう。


 だが、そこに電撃が奔った。


 ナイスフォロー! めっちゃ助かった!


 剣を拾って、ヒレを落とし、トドメを刺す。振り向き見ると、三匹の気絶中のサメはタコ殴りにされていた。


 ヒレを落としてトドメを刺すこと計四回。第二階層のボス戦も無事に終わった。


「はーい、戦利品をゲットしちゃっといてね」


 まあ、欲しいのは『転移のエメラルド』だ。これが無いと不便なのよね。

 そして、第三階層に入って一歩で帰還する。あのクマと戦って勝てる気がしない。


「今日のところはお開きで良いかな?」

「うお、もうこんな時間か」


 時計はもう、零時を過ぎている。明日は仕事なのだ。さすがに明け方までとかは無理である。


「僕もそろそろ寝ないと仕事に差し支えそうだしね」

「みんなサラリーマンなのか?」

「そだね」

「私は学生だけど……」


 ざっくりと聞いてみると、学生はキキョウとヤナギだけらしい。


「え? みなさん、社会人だったんですか?」


 狼狽え、ヤナギは口調が変わってしまっている。


「学生とか社会人とか、ゲームするのに関係ないだろ」

「無いよね」


 無理して畏まって敬語を使う必要なんてない。

 わたしはこのクランを、堅苦しい上下関係バリバリの軍隊みたいな集団にしたくはない。最低限の礼儀は必要だが、年齢や職業といった現実を持ち込む意味は無い。


 それはみんな当たり前のように頷いてくれた。

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